突如発見した銀座の壁に飛びつく
本日、私は奇怪な病を患っている事を知った。
病と言えど、いわゆる職業病だ。
コリドー通り沿いを歩いていた。
そこは私ほどの年ごろの人間にとっては、
いい身なりをした男女が色めき、湧き立つ世界だ。
もちろん私も、たまに女性と視線を合わせては
目くばせをして会話が開く遊びをする。
そんな折、私が瞳孔を思わず開き飛びついたもの。
それがショールーム越に見えた写真の展示物だ。
2×4mほどの大きさ。岩?石壁?それともアート?
見逃さずにいられない。
魔力に吸い込まれ個展に紛れた。
天然のものにしては大きすぎる。
到底、重すぎて運搬できまい。
しかし30mmほどの平板だ。
はて。これは人工物か?
いやいや、こんなマットな見た目に仕上げられるか?
わからん。
この謎のMF(物質と仕上げ)が気になる。
そして、説明員の目を盗み、私は触れた。
マットな触感。吸い付く質感。
これは皮か?樹脂か?
そして撫でた。
皮膚に引っかかる抵抗。
毛や皮膚のボツボツを感じない。
さては樹脂か。
表面に薄く抑揚をつけて、
マットな塗料が塗布されているよう。
しかしこの20-30mmの厚さはなんだ?
そして叩いた。
トントン。
ある程度の硬さがありながらも
重量があり叩き心地の弱い空虚な音。
この音は叩き覚えがある。
土台は木だ。
最後に叩きながらこすってみた。
樹脂に触れた後に数mm拳を板の奥に進める。
そこには土台の木。
ゆるく土台の木に貼られている。
叩きこすりを進めると、
中心部に行くにつれ緩やかに
樹脂と板の間の隙間は増える。
なるほど。
面では固定せず木の土台の四辺に
樹脂が固定されているだけか。
CMF(色、物質、仕上げ)全てを把握した上で
制作過程を想像し、
製作者の努力や苦労した点を想像した。
そして私は満足し、個展を去っていった。
そしてヒゲ脱毛に遅れた。
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