見出し画像

消費者:個人情報はやすやす渡しません! → 結果...

渡しちゃってますよね…

っていうのはもはや当たり前の話ですよね。何をするにもアカウント登録の時代です。携帯電話買ったけどプライバシーポリシーが嫌で結局使わなかったです、なんてこと聞いたことないです。でも、嫌なのに、何で同意しちゃうのでしょう?というか、そんな矛盾した行動みんな本当にしているの?

 さて今回は「個人情報を渡すのを嫌がる消費者が実際には渡してしまう」という行動(この矛盾した行動を「Privacy Paradox」とします。)が本当に存在するのか、などについて実験した2007年の論文を独断と偏見に基づきできるだけわかりやすくご紹介しようと思います!

何が決め手?

論文元の図に手を加えたもの

 上のような図を作ってみました。ポイントは2つあります。

1.リスクと信頼

  • プライバシー情報を悪用されるリスク→渡したくない!

  • この大手企業なら安心だという信頼→渡す!

 感覚的に納得できますよね。ただ、よく見ていただけると「したい」と「する」は違いますよね、というのがこの論文の趣旨になります。これまでは、信頼が「渡しても良い」という意思に寄与していると考えていたようですが、この論文では「渡す」という行動に直接寄与していると仮定しています。
 なぜか、その理由は次のトピックにあります。

2.意思と行動のズレ

”あの人言ってることとやってること違うよね~” ”うんうん”

 それが統計的にみんなに起きているのではないか?というのがこの論文の仮定になります。意思と行動を分けて考えたので、リスク・信頼が意思と行動のどちらに寄与しているかというのが大事になるわけです!

 意思≠行動。自分の意思で行動しているぞ、という方はちょっと肯定しづらいですよね。実験の結果を見ちゃいましょう。

実験の結果

  • 自分の意思より多くの情報を実際には渡している

  • リスクを認識すると情報を渡さないという意思に傾く

  • 信頼を認識しても情報を渡しやすくなるとはいえない (!)

 理由についてはこの論文の扱うところではないのですが、現実として行動前に思っている以上の情報を渡している(意思≠行動)ことが示されました。また、リスクについても仮定どおりの働きをしました。
 しかし、行動に影響すると仮定していた信頼については、あんまり影響がないという結果に。信頼が極端に高い/低いという実験ではなかったことが理由ではないか等が推測されていました。でも確かに、よっぽど悪評がない限り普通にアプリとか入れちゃいますよね。

 ちょっと古い論文なので「おおっ知らなかった」という衝撃は薄いかもしれませんが、感覚的なことが実験で示されるのは感動ですね!この論文の後継の論文についても皆さんの興味があれば調べてみたいと思います。

なにが言えるだろう

 ここからは感想になりますので、読み飛ばしていただいて大丈夫です!

消費者側のアプローチ

 行動経済学ではもはやよく言われていることかもしれませんが、我々は自然な状態では自分が思っていることと行動にズレが生じていることを認める必要があると思います。そして、そのギャップが少ない方が良いはずです。
 自分のプライバシー情報が知らずに使われないように自分で気を付けることも大事です。これに加えて、友達のことを気にかけるなどのグループ単位での見守りも効果がありそうです。行政からは教育的なアプローチが考えられます。

企業側のアプローチ

 消費者の行動があまり変わらない性質のものだとすると、それを利用する企業側を規制すべきなのでしょうか。

 日本でも規制強化の動きはあるようです。
「プライバシーの哲学」ない日本 ネット利用者情報保護の今後は:朝日新聞デジタル (asahi.com)
 また、アメリカではEUを超えるような大きなプライバシー法案が検討されているようです。
米国連邦データプライバシー法案 の概要

 忘れてはいけないのは、企業は消費者に便利なサービスを提供してくれる存在であり、敵ではないということです。日本は結果的にはEUやアメリカの後追いの形で進んでいくと思うので、世界標準から大きく外れることはないと思いますが、企業と消費者がwin-winとなるような行政が望まれます。

疎い文章をここまで読んでいただきありがとうございました。また、次回もよろしくお願いいたします。

論文元:PATRICIA A. NORBERG, DANIEL R. HORNE, AND DAVID A. HORNE The Privacy Paradox: Personal Information Disclosure Intentions versus Behaviors The Journal of Consumer Affairs, Vol. 41, No. 1, 200
※この論文が引用数が一番ということで第一弾に採用しました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?