たまにはマンガの話でも「月光条例」

今では、月に10冊程度の本(小説、新書、ビジネス書)を読む僕ですが、マンガも大好きです。小さいころは、コロコロコミック、そして週刊少年ジャンプと。大学時代はマンガ喫茶に入り浸り、いろんなジャンルのマンガを読み漁りました。

実家を離れて一人暮らしをするようになってからは、引っ越しも多く、持ち運ぶマンガの数も限られました。そんな中、今も手元に置いてあるマンガの一つに藤田和日郎先生の「月光条例」があります。

あらすじ

青い月の光を浴び、おかしくなってしまった「おとぎばなし」の世界を元に戻すために、「月光条例」を執行する使者となった少年のお話。

大人に読んでほしいおとぎ話

あらすじにも書いたとおり、このマンガは「おとぎ話」のキャラクターがたくさん出てきます。皆さんも必ず一度は読んだことのある有名な話から、少しマイナーなものまで、懐かしさを感じながら読めます。

ですが、内容は自分が子どもの頃に読んだものとはかけ離れています。このマンガでは、作者が「おとぎ話のキャラクターはこんなことを思っていたんじゃないか?」という視点が加わっており、それがこのマンガの面白さにつながっています。

例えば「シンデレラ」の回では、シンデレラの苦悩についてスポットが当てられています。「シンデレラ」と言えば、家族にいじめられていたシンデレラが魔女と出会って舞踏会に行き、そこで出会った王子に一目惚れされ、結婚するという物語です。現代でも「シンデレラストーリー」と呼ばれ、不幸のどん底から華やかな世界へと駆け上がっていく有名なお話です。「王子様と結婚したシンデレラに何の苦悩が?」と思われるかもしれませんが、このマンガでは、こんな風に描かれています。


「あの路上にいる女の人と私は何が違うっていうの?」

「たまたま魔女と出会っただけで」

「私は一人で何一つ成し遂げていない」


偶然出会った魔女のおかげで王子様に見初められて、結婚後も何もしなくていいと言われた自分の人生が、ただ運と他人の力で左右される。「シンデレラ」をこんな風に読む人がいるなんて!と衝撃を覚えました。

この他にも「赤ずきん」や「フランダースの犬」は傑作です。

マンガの面白さの一面に触れた

「月光条例」はもうすでに最終話を迎え、連載は終了しています。その最終巻のあとがきで書かれた言葉がマンガの面白さをまさに表わしていると思います。

「漫画の専門用語ではね、表紙のことを何と言うかご存知ですか?

『トビラ』と言うのですよ。

なにかイイでしょう?」

マンガの表紙をめくると、そこにはいつもと違う世界が広がっています。表紙は、まるで読者をその世界へとつなぐ「どこでもドア」のように思えます。

たくさんの興奮や感動を与えてくれるマンガ。

自分の見たことも無い世界へと連れて行ってくれるマンガ。

まだまだ、卒業できそうにありません。