夢について6
夢は未来よりも、過去につうじている。
とはいえ、未来につうじる夢がないわけではない。
僕にとってイギリス留学は、自分で立てた目標というよりも、ある日から見るようになった夢だった。
デレク・パーフィットが撮ったオックスフォードの冬景色を眺めていた。
オックスフォードでサバティカル中の師を訪れ、夏のイングランドを歩いた。
しかし、オックスフォード大学には合格せず、第二志望のウォーリック大学に入学した。
目標はこちらから向かうものだが、夢は向こうのほうからやってくる。
数年後、オックスフォードへ引っ越すことになった。ヴィクトリア時代の家での下宿生活。ボドリアン図書館のドームの下で博士論文を書く日々がやってきた。
夜にはパブのテーブルを哲学の先生方と囲んだ。
パブで知り合った先生がハイテーブルに招いてくれた。
モードリン・ブリッジから、ドイツ人の先生とテムズ川を眺めた。
それらはいまや過去の夢。
未来につうじる夢は、上からやってきて、過去の夢になる。
つづく
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