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夢について1

子どもの根本的な気分は、驚き悲しみだと思っている。

ここではについて書きたい。

子どもはよく、大人に「夢」を聞かれる。大人は夢を、将来の夢のことだと思っている。要するに大人は、夢が目標のことだと思っている。

夢は目標ではない。僕はそう思っている。子どもにとっての夢は、むしろ夢想のようなもの。

目標は未来に置かれるけれども、夢は未来にはない。

言ってみれば、夢は上のほうにある。

子どもの頃からの僕の夢。異国の街の郊外のアパート。そのレンガの建物に据え付けられた、黒い螺旋階段。雨が降っている。

この夢を叶えたいと思ったことはない。つまり、この夢は目標ではない。子どもの頃からふと心をよぎる、夢想のようなもの。

それでも、夢が心をよぎるとき、それが叶うかもしれないと感じている。どう叶うのかはわからない。ある景色を見ているとき、ある人を見たとき、夢が上のほうから降りてくる。そのとき、叶うかもしれないと感じている。あるいは、叶っているような気がしている。

「夢をもつことは大切だ。」そのとおりだと思うが、それは目標をもつことが大切だからではない。現実の上のほうには夢がある、それを知っていることが大切だからだ。

それを知っていることが、現実に何を与えてくれるのか。

夢を与えてくれるのである。

つづく

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