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“量化子”により世界を記述できるのか考えている.肝は“条件”.


数学は自然科学を記述する言語と言われる.自然科学とは,自然界を研究する学問である.
言い換えると,世界は数学で記述できるということではないだろうか.

また,数学における命題はすべて“量化子”を用いて記述できることが知られている.

ということは,量化子により世界を記述できるのではないか,ということが考えられる.


そもそも“量化子”って何

さて,いい加減「量化子ってなんだよ」という人のために…

量化(りょうか、英: Quantification)とは、言語や論理学において、論理式が適用される(または満足される)議論領域の個体の「量」を指定すること。
量化を伴う言語要素を量化子(quantifier)と呼ぶ。

Wikipedia『量化』

(厳密には不完全だが)少し噛み砕いた例を挙げると,「日本人は礼儀正しい」というときに,「礼儀正しいか否か」という議論対象の日本人の量を指定する,例えば「全ての」「ほとんどの」などの語をつけることを量化という.
このとき,「全ての」や「ほとんどの」が量化子である.


数学における量化子は僅か二つ

上の例から分かるように,量化子には様々なものがある.しかし,数学においては僅か二つの量化子しかない
要するに,この記事で主張したいことは「僅か二つの量化子により世界を記述できるのではないか」ということである.

数学における二つの量化子とは,「全ての」を意味する$${\forall}$$と,「存在する」を意味する$${\exists}$$である.
それぞれ,全称記号存在記号と呼ばれる.



どのように使うのか,例を挙げる。

まず全称記号.
例えば,「全ての$${x}$$に対して$${x^2\ge0}$$が成り立つ」と言うとき,

$$
\forall x(x^2\ge0)
$$

と書く.

次に存在記号.
例えば「$${x^2\le0}$$となる$${x}$$が存在する」と言うとき,

$$
\exists x(x^2\le0)
$$

と書く.

応用として,両方同時に使う例を挙げておく.

「全ての$${x}$$に対して$${xy=yx=0}$$となる$${y}$$が存在する」と言うとき,

$$
\forall x \exists y(xy=yx=0)
$$

と書く.


量化子と条件

数学における量化子の使用例を見てもらえば解るように,量化子を用いて記述する場合,括弧内に数式などが入る.この括弧内の数式は,量化子に条件を与える.
例えば,$${\forall x(x^2\ge0)}$$は,$${x^2\ge0}$$という条件を全ての$${x}$$が満たすと主張しているのである.また,$${\exists x(x^2\le0)}$$は$${x^2\le0}$$という条件を満たす$${x}$$が存在すると主張している.

ここで,“量化”の説明を思い出してほしい.Wikipediaから引用すると,「論理式が適用される量を指定する」ということであった.
言い換えると,「論理式により指定される条件を満たす量を指定する」ということである.

実は$${x^2\ge0}$$がまさに論理式であり,この論理式により指定される条件を満たす$${x}$$の量は“全て”である,ということを主張するのが$${\forall x(x^2\ge0)}$$なのである.


このように,量化子を用いて記述する場合,量化されるものの条件が必ず指定される.
「僅か二つの量化子により世界を記述できるのではないか」というテーマについてまだ考察途中ではあるが,適切に条件を与えることが肝なのではないかと思っている.

ちなみに,適切に条件を与えるには適切な論理式を用いることが当然必要であるが,論理学においては“論理式”は厳密に定義されている.
詳細な定義はここでは割愛するが,一つ重要なのは「真偽が一意に判定可能」ということである.

「日本人は礼儀正しい」という例が厳密には不完全だと述べたのは,単に「礼儀正しい」と言っても真偽を一意に判定することは不可能だからである.

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