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セオリーと例外 〜最速で初段になる将棋戦術〜

今回も将棋の学習について考察していきます。
前回に引き続き、少し抽象的な話になってしまい申し訳ありませんが、「何を学習するか」の前に「どうやって学習するか」について考えることが効率よく学習するために重要になってきますので、ぜひご一読いただければと思います。

将棋と麻雀

少し話が脱線しますが、ここで少し将棋と麻雀について考えてみます。

2019年、棋士の鈴木大介九段が麻雀最強戦という大会で優勝し、タイトルを獲得しました。
プロも含めた大会でアマチュア選手が優勝するという快挙で、麻雀界では非常に話題になりました。

将棋と麻雀は、ゲーム性が異なるところもありますが、戦術には通じる部分があり、将棋指しは麻雀好きが多く、プロ雀士も将棋好きの方が多いです。

麻雀界にも雀力向上の学習コンテンツがたくさんあり、戦術書や戦術動画などが、初心者向けから上級者向けまで様々あります。

そんな中、麻雀の初級者が中級者になるための学習コンテンツを発信している、麻雀クリエイターの平澤元気さんという有名な方がいらっしゃいます。

平澤さんの著書の中で「雀力を上げるには」というテーマで書かれた文章があります。
ここでその一部を引用します。

雀力を上げるには2つのステップが必要だと私は思っています。
1つは「セオリー(基本)」を覚えること。
2つ目は、そのセオリー以外の選択が正解となる「例外」。
これを覚えることです。

引用元: 「絶対にラスを引かない麻雀 ~ラス回避35の技術~」平澤元気 著

これが将棋にも通じる非常に重要な考え方だと筆者は考えています。

将棋のセオリーと例外

将棋のセオリーというと例えば、

歩がぶつかったら取る
駒得をすると形勢有利
金はトドメに残す

など様々あります。

まずはこういったセオリーをきちんと理解すること。その後、たまにこのセオリーが当てはまらない例外に遭遇するので、その例外のパターンを一つ一つ覚えていく、というのが学習の順番になります。

セオリーの具体例 〜 歩がぶつかったら取る 〜

ではここで、セオリーの具体例を見てみましょう。

ここで紹介するのは「歩がぶつかったら取る」の例です。

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これは取らないと次に△8七歩成と自陣を突破されてしまうので、当然取る一手です。

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端を攻められた局面ですが、これも次に△9六歩から△8五桂と端を香桂で狙われると潰されてしまいます。
細かいことは考えなくてもいいので、これも取りましょう。

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相手の桂と銀が2つ効いているところに歩をぶつけたところ。自分は銀しか効いていないので、効きの数は自分の方が少ないです。
これもまずは取る手を考えましょう。もちろん取らない手もあるのですが、取って具体的に自分が悪くなる手が見えなければ、取る手を選択した方が良いことが多いです。

例外の具体例 〜 歩がぶつかったら取る 〜

では次に例外の具体例を見ていきましょう。

角の頭を銀で攻めてきた局面です。

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この△7五歩を▲同歩と取ると、△同銀と取り返してきて、▲7六歩と追い返そうとしても、銀取りを無視して△8六歩と攻める手があります。

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これは、棒銀戦法の有名な手筋で、以下は先手がどう受けても自陣を破られてしまいます。

戻って△7五歩と仕掛けられた局面。
この局面は▲7八飛と攻められている筋に飛車を回るのが良い手。

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これが例外的に歩がぶつかっても取ってはいけない局面になります。

また、この△3六歩も取ってはいけない歩です。

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▲同歩と取ると△8八角成▲同銀△5五角で飛車銀両取りをかけられてしまいます。

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ここは▲3六同歩とは取らずに▲3八金と37の地点を補強する手で大丈夫でしょう。

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このように、ぶつかった歩を取ると具体的に自分が悪くなる順があれば、取らないという選択も考える必要がでてきます。

しかしあくまでも最初考えるべきは取る手であり、もしそれがダメならそれ以外の手を考える、という順番で読むのが大事です。

プロの好手を真似するな!

プロの将棋を見ていると思いもよらない手が指されて、カッコイイ!自分もやってみたい!と思うことがあるかもしれません。

プロの妙技を真似したく気持ちはわかります。相手が思いつかないような好手を指して勝つと気持ちいいですよね。

しかし、この考えは危険です。プロの手を理解せずなんとなく真似をすると怪我をします

例えば、藤井聡太二冠の▲4一銀という手が話題になりました。

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飛車がただで取れる局面で、詰みがあるわけでもないのに銀をタダで捨てるのですから、セオリーをガン無視した一手です。

実はこの手を深く理解すると「玉は包むように寄せよ」「終盤は駒の損得より速度」というセオリーを守った一手になっている部分もあるのですが、それでも飛車を取る一手に見える局面で銀のタダ捨てはかなり「例外」の一手と言えます。

この手の意味を深く理解せずに、自分の実戦で表面的に真似をして、なんとなく捨て駒をしたら痛い目に合います。

このようなプロが一目で見えない手は大抵「例外」に該当します

例外は、セオリーが十分理解できていて初めて学ぶ段階になります。

級位者の方は、まだセオリーの学習が足りていないので、セオリーを学ぶことに注力した方が効率的な棋力向上に繋がります

プロ対局の解説をご覧になる方は、解説の中で当たり前に扱われているけどなぜその手を指すのか理解できない、という手に注目してみるのがいいです。

その手はきっと、プロにとっては当たり前でも自分にとっては理解できていないセオリーである可能性が高いからです。

派手な手ではなく、地味で当たり前の手に関心を持つことが大切です

セオリーの学び方

では、セオリーはどうやったら学べるのでしょう?

それは前回の記事で紹介した手筋学習が最適だと筆者は考えます。
まずは手筋をひたすらインプット+アプトプットしていきましょう。

また、将棋の格言というのも実は大事です。

玉は下段に落とせ
歩のない将棋は負け将棋
桂馬の高跳び歩のえじき

などです。

AIが発達したこの時代で古臭いと思われるかもしれませんが、初段前後で知っておくべき将棋のセオリーは昔からほとんど変わりません。
格言は山ほどある将棋のセオリーの中で、数少ない言語化されたセオリーです。
この格言を知ることで、セオリーを効率的に学ぶことができます。

まずはセオリーを学び、セオリー通りに忠実に指すこと。
それから少しずつ例外を学んでいく。
この順番を意識して学習していきましょう。

悪い手を指したと思ったら、それはセオリーに忠実だったかを振り返りましょう。
もしセオリーを守っていなかったら、次はセオリー通り指すように反省しましょう。
セオリー通り指したのに悪くなってしまったら、それは例外の場面です。例外であることを理解した上で、正しい手を学びましょう。

まとめ

「セオリー」と「例外」という考え方がある

まずはセオリーを学ぶ。その後例外を学ぶ。

プロの好手は例外なので真似しない

手筋学習がオススメ。格言も重要。

参考

絶対にラスを引かない麻雀 ~ラス回避35の技術~
平澤元気 著


将棋ウォーズ運営チーム ハル

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