見出し画像

ある問いかけへの回答。候補手の比較がとても難しいケース。

 こんにちは、ゆに@将棋戦略です。

 今回は、とあるXユーザー様から投げかけられた、ある問いかけについて考えてみたいと思います。テーマ図は以下です。なお、今回は人間が実際に指す際にどう考えるかをテーマにしたいので、なるべく評価値は出さないようにします。


テーマ図。ここで▲5八飛から攻めるか、▲9九玉と固めるのがいいか。

 さて、問いかけの内容としては、
・ここから▲5八飛が第一感だが、△5五歩▲同角△同銀▲同飛の局面よりも、▲9九玉の局面の方が評価が高い。なぜなのか?
といったものでした。

前提

 まず、いくつか押さえておきたい点をまとめておきたいと思います。
(主観も含みます。必ずしも全て解析はしていません。)
①現局面は後手の飛車角が働いておらず、かつ陣形差が大きいので先手有利~優勢であろうこと。
②前述した▲5五同飛の局面も先手優勢であろうこと。また、この方針は後手の飛車角が遊んでいるうちに局面を収束しようとするもので、全く以て正しい考え方である。ただし、後手の飛車角が遊んでいるということは、この局面は未だ「潜在的」である可能性があるということである。すなわち、もう少し探索を行い、より「実在的」な局面へ移行して後手の飛車角が働くかどうかチェックしていく必要がある。
③その一方で、▲9九玉~▲8八金~▲7八金右の価値もとてつもなく大きいこと。言語化は中々難しいが、玉と金銀が遠ざかる(1三角の利きからも外れる)のはとても大きいと見る。ただしこの場合、これらの3手が無事指せるか、つまりある「事象」によって他に手を回さざるを得ない状況になる、あるいはこの3手よりも価値の高い手を指されると良くないので、これもチェックする必要がある。

 ※「潜在的」とか「実在的」とか「事象」についてはこちらの記事にて。

 それともう一つ。テーマ図で単に▲5八飛だと△4五歩と突かれ、意外と後続がありません。後続がないのであれば、明らかに▲9九玉に劣りますので、単に▲5八飛は選択肢から外れます。

 ではどうするのかというと、▲1五歩△同歩▲同香△1四歩を入れてから▲5八飛と回ります。そうすれば、△4五歩には▲1四香で良いので、△5五歩の一手となり、▲5五同飛の局面が実現します。後手は遊んでいる飛車角を働かせるのが急務なので、香車が取られる可能性はあまり先手にとって問題ないと見ます。

 さて、まずは②のチェックをしてみたいと思います。テーマ図から少し駒を動かしていきます。

 テーマ図から
▲1五歩 △同 歩 ▲同 香 △1四歩 ▲5八飛 △5五歩
▲同 角 △同 銀 ▲同 飛 △2五桂 ▲5一飛成 △3六歩
▲9四歩 △同 歩 ▲9二歩 △同 銀 ▲9三歩 △8三銀
▲8一銀 △7一金 ▲9二銀成 △同 香 ▲9四香(結果図①)

結果図①。先手が勝ちに近づいていると見る。

[▲5五同飛の変化]飛車角は働かない

 結果図①までの手順はあくまで参考ですが、ここまで進めば先手が勝ちに近づいていると思われますし、こうなると後手の飛車角は遊んでいると言っていいです。△3六歩のところで△4五歩と角を2二に使う構想もあるところですが、▲2一竜とされて飛車角がいじめられるので、これも先手が優勢になります。

 というわけで、▲5五同飛の変化はかなり有力と思われます。実戦でこのあたりまで読めたとしたら(かなり時間かかるでしょうが)、自分なら▲9九玉は検討すらしない気がします。

 これが結論でもいいと言えばいいんですが、実戦では▲1五歩に気づかず、単に▲5八飛に△4五歩に大変だなーと思って、▲9九玉を読み始めるような気もします。なので予定通り、③も検討してみます。とにかく後手がポイントを挙げる何らかの動きをしてくるかどうか、が重要となります。

 テーマ図から
▲9九玉 △4五歩 ▲8八金(途中図)

途中図。△4五歩は無視でOK。問題はここから。

[▲9九玉の変化]角が働いてくるなら損な指し方

 ▲9九玉には後手は△4五歩としてきますが、これは無視でOKです。△4六歩には▲同銀でむしろ先手の駒がさばけるからです。問題はここからで、後手の角が働いてくるかどうか、です。もし後手の角が働いてくるなら、先手は玉の安全度を高めたプラスがあっても、総合的には損なやり取りと見ます。

 例えば途中図から△3一角▲7八金右△6四角となってしまった場合は、元々のテーマ図から損をしたと判断します(実際に評価値は結構下がります)。ただし、複雑なのは△3一角には一旦▲5五歩と押さえる手があって、△4三銀▲7八金右と進むなら、テーマ図から先手が優勢を拡大したと判断します。

 そこで後手はちょっと工夫しないといけません。

 途中図から
△8五歩 ▲同 歩 △3一角▲7八金右 △6四角(結果図②)

結果図②。先手が相当陣形勝ちしているが、後手の角も働いてきている。

個人的には結果図①を支持

 一旦△8五歩の突き捨てを入れれば、▲5五歩に対して△6五銀と出られます(▲6六歩には△8六歩)。そして△6四角と出て結果図②。8五の位も含め、先手が相当陣形勝ちしていて、有利だとは思いますが、結果図①より良いと果たして言えるかどうか。

 個人的には、テーマ図では後手の飛車角が働く前にケリをつけに行くのが正しい感覚であると思いますし、結果図①を支持したいと思います。皆さまはどちらを支持されますか?よろしければコメント頂ければ幸いです。

 なお、そもそもの話ですが、▲5五同飛の局面より▲9九玉の方がAIの評価が高いという話、Xの画像を見る限りでは、おそらくノード数が足りないのではないかと思いました。自分がいつも使っている「Hao」で数億ノード読ませると、▲1五歩と▲9九玉でかなり拮抗します。

 最後に、実戦ではどうなのかというと、上述した内容を全て読もうとしたら、ゆにの場合たぶん20~30分くらいかかる気がします。なので、実戦的には▲1五歩がすぐ見えれば決行しますが、そうでなければ▲9九玉で陣形勝ちする方針を選びそうな気がします。

 以上となります。読んで頂き有難うございました。引き続きよろしくお願いいたします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?