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[級位者向け将棋戦略論]駒を働かせるために⑥。射線管理を意識しよう。

 こんにちは、ゆに@将棋戦略です。

 今回は射線管理を意識しよう、をテーマに書いていきます。射線管理というのはFPSの言葉らしいのですが、将棋においても大事なことなのです。


 シリーズ初回に、駒を働かせる指針⑥として、以下のように書きました。

「守りの目的で配置されている自陣の駒は、相手の攻め駒と自玉の間に入るように配置することを意識する。逆に攻めの目的で駒を配置する時は、相手の王様を直接攻めることができればより効果的なので、なるべく相手の守り駒に働き掛けないよう意識する。」

 とあるXのユーザー様がこれを見て、「射線管理ってこと?」とポストされていて、初めて射線管理という言葉を知りました。そこで、射線管理の意味を調べてみると(以下、ttps://media.2play.game/apex/firing-line/から引用させて頂きました)

「遮蔽物を使って相手の弾に当たらないように空間や敵の位置を意識すること」

とのこと。確かにぴったりの言葉だと思いましたので、今回はこの言葉を使わせて頂きます。

相手の攻め駒との間に遮蔽物を置く

 それでは具体例を見ていきましょう。図①はとある級位者の方の実戦図です。今▲4六歩と突いたところなのですが、この指し方はよくありません😣

図①。▲4六歩は射線管理の観点で、よくありません。

なぜよくない指し方なのか、射線管理の観点で考えてみましょう。この場合、遮蔽物とは守り駒の金銀だと考えて頂いてOKです。つまり、7七銀、7八金、6七金が遮蔽物です。王様がこれらの遮蔽物の影に隠れて安全を確保しようとする時、どこからの攻めに対して安全で、どこからの攻めに対して危険であると言えるでしょうか?カンタンな問題ですよね。以下の図②に相手の攻め駒が侵入しても安全なスペース(安全スペース)と、侵入されると危険なスペース(危険スペース)を色分けしておきました。

図②。青色が安全スペースで、赤色が危険スペース。つまり、上部からの攻めや端攻めに対して強く、右辺からの攻めに弱い陣形と言えます。

図②では青色を安全スペース、赤色を危険スペースとして示しています。要するに、先手の陣形は上部からの攻めや端攻めに対して強くて、右辺からの攻めにとても弱い陣形と言えます。そのような陣形で、相手の攻め駒が待ち構えている右辺から▲4六歩と動くのは、果たして得策と言えるでしょうか?言えないですよね。危険スペースから攻められてしまった場合、先手陣の金銀はうまく機能しない、つまり働きの悪い駒になってしまいます。

 ▲4六歩とするところでは、▲6八角とした方がいいでしょう。以下、仮に△5四歩▲7九玉△7四歩▲8八玉(参考図①)となったとします。そうして安全スペースと危険スペースを図②と同じように書いてみます。

参考図①。相手の攻め駒がいる右辺が安全スペースに。また、玉が境界に近づいたことで危険スペースが縮小しています。

玉を8八まで持っていったことの効果として、着目して頂きたいのは以下の2点です。
・相手の飛車角銀が配置されている右辺が安全スペースになったこと。
・玉が境界に近づいたために、危険スペースが縮小したこと。
(さらに玉を9九に持ってくれば危険スペースはほぼなくなる。)

 1点目の、右辺が安全スペースになったことの効果は、要するに右辺からの攻めに対して自陣の金銀がフルに活用できるようになった、ということです。これは駒の働きの観点で、とても大きな効果です。このように、王様の位置は盤上の駒の働きにとても大きな影響を及ぼします。

 また2点目はこれこそまさに、以前紹介しました「境界効果」の恩恵によるものです(説明している記事はこちら)。これも駒の働きの観点でとても大きな効果を持っているのですが、それについては次の例で改めて触れます。

遮蔽物の裏側から攻める

 攻める側の立ち場としては、なるべく遮蔽物を相手にせず、出来ることなら裏側から攻めるのがとても効率的です。別記事で使用済みですが、例えば以下の図③。後手番です。この局面は元々急戦(先手)VS四間飛車(後手)の将棋で、後手の飛車角銀は右辺に設置されていたため、先手陣は右辺に安全スペースを作って戦っています。でも、将棋は持ち駒を使えるゲームですので、持ち駒を使っていきなり危険スペースから攻めてくる場合もあります。

図③。後手の盤上の攻め駒は右辺の安全スペースに設置されていますが、持ち駒はいつでも危険スペースに入り込んでくる可能性があります。

図③では△8四香と危険スペースに攻め駒を設置するのが良さそうです。次に△8七香成▲同玉△6九飛成があるので、▲5九銀と受けますが、以下△5三金▲3三角成△3七桂成(参考図②)と進めば後手がかなり有利。後手はこの後、△1九竜~△8五香打とすれば、4枚の金銀を無視して先手玉を攻めることができます。このような場合、先手の金銀は十分に働いているとは言えないのです。

参考図②。後手はこの後、左辺の危険スペースから攻めてきます。このような場合、先手の金銀4枚の働きはイマイチと見ます。

 先手陣のような「舟囲い」と後手陣のような「美濃囲い」を比較する時、よく「一路の差が大きい」と言われます。このことは、単に相手の攻め駒との距離の違いとして捉えられがちですが、上述した通りそれだけではありません。玉や金銀が境界に近づくことで、危険スペースが縮小するのがとても大きいのです。

 以上、射線管理を意識しましょう、というお話でした。
・相手の攻め駒との間に遮蔽物を置く
・遮蔽物の裏側から攻める
次回は「弱いマス」のお話をしようと思います。

 それでは読んで下さり有難うございました。引き続きよろしくお願いいたします。


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