俺だって強くなりたくて…~加古川振り返り~

帰りの新幹線でこの文章を書いている。
この時間帯で新幹線に乗るつもりはさらさら無かった。当然だ。俺は個人戦に出ると決めたら毎度泣きの1回のつもりで出ることにしている。ノー勉で個人戦に出るようになった時が「将棋指し」として俺が死ぬ時だ。

加古川には2年前に出て、去年はパスした。自分の中で将棋に納得がいかなかったからだ。2年前出場した時もそれ相応の準備をしたし、1局目で倒したい相手に勝てた。準備したからだ。
今回の準備は自分の中ではそれを上回るほど自分を鍛えたつもりだ。なんせ俺のセコンドは「マジモンのプロ筋」。ブランクのある俺を徹底的に(一番将棋指しにとって傷付く方法でw)鍛えてくれた。最序盤の工夫1つで必殺になる変化もたくさん教わった。
対アマチュアに限っては最善が来ることの方が少ない。それは理解している。その上で4番手5番手の指し手が来た場合の「仕込み」にもキッチリ詰めておく。もちろん序盤だけでなく詰む詰まないや、粘る「力」をつけるための詰将棋と棋譜並べ、実戦も、みっちりこなす。2年前は準備期間で2100題詰将棋を解いたが、今回は4000を超えた。

1局目。相手には申し訳ないが、話にならない。「将棋の会話」が成立していない。勝ち。

2局目。強い。名前も聞いたことがある。
仕込み通りに進み、案の定「2番手」の指し手が来る。
さてどうするか。必殺を出したくなる性分だが、多分Hao先生ならオリなんだろうなぁと対局中もこの文章を書いている今も思う。
必殺を出すとこちらにもリスクは伴うからだ。Hao先生は先にこちらが必殺を出すと向こうがオリの選択をする。それを知っているからこそ、意を決して必殺の変化で勝負。
相手はオリを選択せず突っ張る。いかにも人間らしい。相手が知らない将棋なのは出だしの時間の使い方で既に見抜いていた。やっぱりね、こういうとこなのよ、なんて思っていた。ただ、そこから相手の地力が出る。強い。仕込みから外れてから、恐らくこっちが先に間違えた(後で検証の必要性大。)。局面が悪くなる。どんどん勝てない将棋になるが、幸い、切れ負け寸前のところで相手が力尽き、九死に一生。耐えた…

次の相手を見る。約一年前、個人戦の引退を決意した、あの朝日アマでチャンプになった人。ノーマル三間飛車使いなのは知っている。もちろん、「仕込み」も準備してあった。
予想通りの三間飛車に、仕込み通りに進む。いや、「仕込み」じゃないな、あれは「研究」だ。俺を鍛えてくれたアイツらが作り上げた定跡に進む。あっという間に形勢が良くなる。綺麗な定跡だなぁ。問題なのはそこからなのも20年将棋やってるから分かってるけどね。

動かす駒が無い相手が暴れてくる。自然に進めて更にリードが広がる。仕方のない37歩で体を預けて来た。ここが分岐点だ。
全駒にするくらいのつもりで面倒を見続けるか、見切って勝負するか。自分の棋風は見切り。38歩成に飛車取りを手抜いて端を詰めて、謝るしかないようでは挟撃体制が完成するという読み筋で進めると、一番最後に自分の読みと違う手が飛んできた。
読めば読むほどそれが良い手だと分かる。焦る。時間が減る。感想戦で相手はその手で難しくなったと手応えを感じていたという。本譜に替えて面倒を見続ける方なら全く自信がない様子だった。

形勢としてはまだ難しかったとは思うが、そこから時間が減り続ける中、恐らく自滅してしまった。勝ちを焦ったが故の逆転負け。恐らく一番点差が離れていた局面は体感800から1000点くらいはあったろう(後で検証しますけど違ってたらすいません、アツくなってるだけかも笑)。

「弱すぎる。」
今も昔も同じ台詞を吐いているが、昔の自分と今の自分では、同じ台詞でも意味が違う。
俺だってアイツらみたいに強くなりたくて…ハングリーな気持ちで将棋に取り組めたのは、俺が辞めてからの5年間、ずっと気持ちを保ち、ひたすら自らを鍛え続けてきた彼らのおかげだ。

彼らに追い付くことは決してないが、追い付くつもりで努力しなければ何の意味もない。その気持ちで仕込みを入れたし、準備した。
燃え尽きたかどうかは今後の自分次第だが…個人的には自分の将棋のことより気になっていることがある。文章にしていいのか分からないので、何のことを気にしているのかは当事者間の秘密ってことにしておくけど笑

今後個人戦に復帰するかどうかは、今の段階では明言出来ないが、1つ断言するならば、「ノー勉の段階では絶対出てこない」ってところくらいか。どこか大きな大会で私を見かけたら「そういうこと」だと思っていただいて結構だ。仲良しこよしで将棋を指す連中とは俺は仲良くしないタイプなんでね。

最後に。応援してくれた全ての人達と、鍛えてくれた方々へ。
結果出せなくてごめんなさい。もう何回自分に負けてるのか分かんないけど、こんな俺でも愛してくれ。すまねえ!!

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