毎年この季節になると

あっという間に今年も残り一月半になってしまった。思えば、この一年まるっきり何も進歩していないし、何か新しいことを始めるどころか始めようとすらしていない。空白に近い一年だったと思う。

丁度今から三年と少し前、12月の中頃。実質的に私は奨励会を退会した。実質的にと言ったのは、一応その年度の3月まで在籍だけしていたからだ。今にしてみれば、辞めるに辞めきれなくなってしまっていたのだろう。毎年冬が近くなるにつれ、あの頃のことを思い出す。


今まで出来ていたことが少しずつ、まるで自分の中からフェードアウトするように出来なくなっていった。焦りはもちろん感じていたし、普段通り毎回の例会は準備して臨んでいた。それでもどうしても勝てず、とうとう「最後の夜」を迎えた。

その日は前日にも関わらず、御茶ノ水にある勉強部屋で研究をし、同じ場所で別の研究会をしていた若手プロと、現在は退会した三段の先輩と一緒の帰り道だった。

「麻雀しよう」

多分三段の先輩の誘いだったと思うが、流れで三麻を打つことになった。明日は例会ということで手短に打ってさっと帰ったが、もし直帰していたら…などと今でもふと思ってしまう。楽しい夜だったのは間違いないが。まあ、打っていても帰っていても、どちらにしろ私が四段になることはなかっただろう。

次の日の1局目、作戦勝ちからおかしくなり、そのままいいところなく負けた。初段から1級に降級した。1局目で負けたら退会するつもりだった。


その後のことはあまり覚えていないが、次の2局目はふらふら指してすぐに負けて、連盟を飛び出した後、下北沢に向かった。バンドをしている友達のライブがあるのを思い出したからだ。たくさん泣いて、浴びるように酒を飲んだ。


あれからもう三年。去年も一昨年も同じようなことを思ったものだが、奨励会を辞めてから時が過ぎるのがとても早くなったように感じる。それだけ濃密な時間だったといえば聞こえはいいが、下らないこともたくさんしてきた。そんな私にも、師匠は「辞めます」と伝えた時には人目も憚らず涙を流してくれた。初めてお会いしてから13年の付き合いで、きっと息子同然に気に掛けていただいたのだろうと思うと、今でも胸が苦しくなる。感謝しかない。

三年前のあの頃より、今の方が人間的には成長していると自負しているが、今の自分ではまだ師匠や支えてくれた父に会わせる顔がない。来年からは何か形に残る結果を出して、恩返ししていきたい。

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