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時代を創る|大橋貴洸六段

私は今まで、将棋からたくさんのものをもらった。
小学生の時、人前で話すのが苦手だったが、将棋では自分を表現できた。好きな指し方を見つけることで個性に気付き、形勢が悪くても諦めず粘り続けることで精神力が鍛えられた。勉強や工夫を重ねて勝てるようになり、成長する喜びを知った。考えることが大好きになり、支え応援してくれるたくさんの方々に出会うことができた。小学四年生の時に、将来人生を賭けようと思う存在に出会えたことは、心から幸せだと思う。

私は将棋を指す面白さに魅了され棋士になったが、きっと他にも、将棋という存在を通じて前向きになれたり、喜びや悔しさという感情を知ったり、素敵な出会いに恵まれる方も多くいるのではないかと思う。将棋にはまだまだ魅力がたくさんあり、更に多くの方々を幸せにできる可能性を秘めていると信じている。そういった機会をより多くの人に届けていきたい。

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2019年3月の所司一門祝賀会の際、バッグデザインのお話をいただいた。
デザインは初めての経験だったが、面白いと感じ挑戦した。ロゴはイニシャルから取り、OOは愛用しているメガネをモチーフに。素材やカラーを変更しながら、色々な種類のトートバッグも作成した。モノをデザインする過程は、将棋の構想を練る過程に近いと思う。
表現への関心は以前からあり、対局時に着用するカラースーツや、升田幸三賞をいただいた耀龍四間飛車戦法の開発もその一つだ。AIが発達する中、人間だからこそできる指し方を追求していきたい。

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そして最近、新たなプロジェクトが始まった。うれしいご縁があり、オリジナルのチョコレートを作ることができた。立ち上げから何度もやりとりを繰り返し1年半。途中で諦めかけたこともあったが、遂に、ようやく、実現することができました!皆様にお披露目できることに、ワクワクがとまりません!
みんなから愛されているチョコレートのように、将棋もよりたくさんの人の身近な存在になれば。他の業界とのコラボレーションを通じて、より多くの方に知っていただき、色々な方の背中を押すきっかけになれば。そんな私の思いは、商品に同梱したメッセージにしたためていますので、そちらもぜひご覧ください!(笑)

今回、食品の商品化は個人製作だとかなり難しいということが良く分かったが(実は赤字なんです…!!)、関係者の方には大変ご尽力いただいて、感謝してもしきれません。最高級のカカオとミルクをセレクトし、最高に美味しい可愛いチョコです。ここまで形にしてくださった皆様、本当にありがとうございます。

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微力ですが、将来も将棋を指し続けることができ、多くの人が将棋を通じて幸せを感じている世界を作っていきたい。応援いただけるとうれしいです。

棋士になった当時、四段昇段の記より、
「将棋界は、いま、人工知能や国際的な広がりなど、いろいろな意味で境界がなくなり、より広い領域を取り込んで、新しい形に成長していこうとしていると感じています。このような変動の中で自分に何ができるのか、どういった形で将棋や社会の役に立てるのかを常に考え、行動していきます。」(将棋世界2016年11月号)

自分なりに、これからも、新しい時代を創る挑戦を続けていこうと思う。