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「観る将」が観た第4回ABEMAトーナメント予選Eリーグ第三試合

7月17日にABEMAトーナメント予選Eリーグ第三試合が放映されました。顔合わせは、チーム渡辺「ホームラン」対エントリーチーム「わっしょい」となっています。第二試合を5勝2敗で勝ったチーム渡辺は、この試合で3勝すれば予選の1位通過が決まります。

■一局目 戸部七段vs小林(裕)七段
エントリーチームは一局目からリーダー投入です。先手の戸部七段は初手▲5六歩から中飛車を選択します。戸部七段は5筋の歩を交換してから穴熊に囲います。小林七段は中央に金銀を集結し、飛車も5筋に振って対抗します。戸部七段は▲5五銀とぶつけますが、小林七段は△6八銀と飛車角両取りから角を取り、△5七銀で飛車も押さえ込みます。戸部七段が5筋から反撃すると小林七段は中段に玉を逃がして入玉を目指しましたが、戸部七段はこれを許さず即詰みに討ち取りました。

■二局目 近藤七段vs藤森五段
先手の藤森五段は、四間飛車穴熊を採用します。近藤七段も穴熊に囲い、相穴熊の将棋となりました。近藤七段は△5六歩と角道を開けて角を交換し、更に飛車で金を食いちぎって"と金"を作ります。藤森五段は自陣に飛車を打って粘りますが、近藤七段は駒得しながら敵陣に飛車を打ち込み完勝となりました。

■三局目 渡辺名人vs梶浦六段
予選突破に向け後がないエントリーチームは、エース格の梶浦六段を投入します。先手の渡辺名人が矢倉に誘導し、脇システムの将棋となりました。渡辺名人が1筋の位を取り、角交換してから敵陣に角を打ち込みます。両者時間を増やしており、梶浦六段は6分を越えました。梶浦六段も敵陣に角を打ち、お互いに馬を作ります。渡辺名人は2枚の"と金"を作りますが、梶浦六段は馬を捕獲しすぐに敵陣に打ち込みます。渡辺名人が▲4二金と飛車取りに打ちましたが、梶浦六段は手抜いて△6七銀と踏み込み王手ラッシュを掛けます。先手玉が詰むか詰まないかという激闘になりましたが、渡辺名人が辛くも逃げきりました。

■四局目 戸部七段vs藤森五段
ドラフト会議で実況席にいた両者の対決が実現しました。先手の藤森五段は今大会で初めて居飛車を採用し、戸部七段は中飛車に構えます。戸部七段が先に穴熊の意思表示をすると、藤森五段も穴熊に囲います。お互いに固め合った後、藤森五段が先に猛攻を仕掛けます。手に汗握る激闘となりましたが、戸部七段は懸命に凌ぎ切って反撃に転じ即詰みに討ち取りました。

■五局目 近藤七段vs梶浦六段
若手実力者同士の対決となりました。先手の近藤七段が相掛かりに誘導し、梶浦六段も受けて立ち、先に飛先の歩を交換して7筋の横歩も取りました。近藤七段も飛先の歩を交換し、五段目に引きます。近藤七段は飛車を8筋に回して猛攻を仕掛けますが、梶浦六段も△7五角と急所に打って凌ぎます。お互いに相手の狙いを消す戦いになりましたが、梶浦六段は8筋を突破し△3六桂で挟撃体制を作って寄せ切りました。

■六局目 渡辺名人vs梶浦六段
エントリーチームは勝った勢いで梶浦六段の連投です。先手の梶浦六段は角換わりに誘導し、相腰掛け銀の将棋となりました。お互いに早指しで、持ち時間を6分以上に増やしています。渡辺名人は少し時間を使ってから、3筋と7筋の歩を突いて仕掛けます。梶浦六段は飛車取りを放置して、3枚の桂で玉頭から攻め掛かり詰めろを掛けます。渡辺名人が絶体絶命に見えましたが、相手の歩頭に△3四銀と打って凌ぎます。両陣営から「ぎょえー」という声が響きましたが、この手が決め手となり渡辺名人が逃げ切りました。

【チーム渡辺 5勝 vs エントリーチーム 1勝】
チーム渡辺は3人がともに安定感を見せ、危なげなく1位通過を果たしました。特に初出場の戸部七段が、この試合でも一局目と四局目に勝ってチームに勢いを呼び込みました。渡辺名人も梶浦六段を相手に2局とも激闘となりましたが、勝って貫録を示しました。近藤七段も渡辺名人からのお墨付きを得た落ち着いた指し回しを見せ、本戦でもポイントゲッターとしての活躍が期待できそうです。
エントリーチームは、エントリートーナメントを勝ち上がってきた勢いを見せることができませんでした。その中で梶浦六段は、敗れた将棋もあと一歩という内容が多く、来年はドラフトされる候補になった気がします。序盤研究を活かして持ち時間を6分以上に増やす戦い方も、フィッシャールールに対する適性を感じさせました。小林(裕)七段と藤森五段は結果を残すことはできませんでしたが、堂々たる戦いを見せてくれたと思います。

予選Eリーグは、チーム渡辺「ホームラン」が1位通過、チーム斎藤「ここ一番」が2位通過となりました。チームワークが良くバランスの取れた両チームが、本戦でも力を発揮し上位進出することを期待したいと思います。

※梶浦七段は5月に昇段していますが、収録時の段位(六段)で記述しています。

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