見出し画像

第2回女流ABEMAトーナメント予選Aリーグ第三試合

10月23日、第2回女流ABEMAトーナメント予選Aリーグ第三試合が放映されました。この日は第二試合で白星を挙げたチーム伊藤「ネバギバ」と、第一試合で敗れたチーム山根「ひよっこ」の顔合わせとなっています。チーム伊藤は4勝を挙げた時点で予選突破が決まります。

■一局目 伊藤沙恵女流三段 〇 vs ● 和田あき女流初段
チーム伊藤はまたも初戦からリーダー登場です。先手の伊藤女流三段が雁木に囲うと、和田女流初段も左美濃から雁木に組み替えます。伊藤女流三段が4筋の歩を交換し、飛車を3筋に寄せて3筋の歩も交換します。和田女流初段は飛車を5筋に回して中央突破を狙い、伊藤女流三段も後手の玉頭から攻め掛かります。和田女流初段は8筋の歩を突き捨て、△8八歩と先手陣に嫌味を付けます。お互いに激しく玉頭から寄せ合いますが、和田女流初段は時間に追われて寄せ切れず、伊藤女流三段が的確に後手の攻め駒を削ぎ即詰みに討ち取りました。

■二局目 室谷由紀女流三段 〇 vs ● 塚田恵梨花女流初段
先勝したチーム伊藤は、室谷女流三段で連勝を目指します。後手の室谷女流三段が中飛車に振ると、塚田女流初段は超速3七銀で対抗します。室谷女流三段は飛先の歩を交換し、じっくりした駒組みを進めます。塚田女流初段が5筋の位を取りましたが、▲7九角と引いたのを見た室谷女流三段が機敏に動いて奪還します。塚田女流初段は▲5二歩と飛頭を叩いて、銀を取り合った後▲4一銀と割り打ちします。室谷女流三段も"と金"を作り、飛車を取らせる間に金を取って攻め合います。塚田女流初段は時間に追われながらも粘りましたが、室谷女流三段が激しく攻め込み寄せ切りました。

■三局目 石本さくら女流二段 ● vs 〇 山根ことみ女流二段
連敗スタートとなったチーム山根は、満を持してリーダーが登場します。先手の石本女流二段が三間飛車に振ると、山根女流二段も向かい飛車に振って相振り飛車の将棋となりました。両者とも飛先の歩を交換し、石本女流二段は六段目、山根女流二段は五段目に飛車を引きます。石本女流二段は美濃囲い、山根女流二段は金無双に構え、お互いに指し慣れた形なのか6分前後まで時間を増やしています。石本女流二段は5筋の歩を突き捨て、後手の玉頭から攻め掛かります。山根女流二段は△8三角と自陣に打って凌ぐと、△4四桂から反撃します。最後は時計を叩き合う激戦となりましたが、山根女流二段が即詰みに討ち取りました。

■四局目 伊藤沙恵女流三段 ● vs 〇 和田あき女流初段
両チームとも順番通り、一局目と同じ顔合わせとなりました。チーム山根がタイムアウトを要求し、和田女流初段は積極的に攻めていくようアドバイスを受けます。先手の和田女流初段は左美濃、伊藤女流三段は雁木と、一局目と似た出だしとなりました。伊藤女流三段が棒銀を見せると、和田女流初段は角を▲3七角と転回し飛車を睨みます。続いて角交換し、▲2四歩から▲7一角と打ち込んで十字飛車を狙います。伊藤女流三段は構わず先手の玉頭から攻め掛かりましたが、和田女流初段は▲8二角成から飛車と交換し、▲7一飛と王手で打ち込みます。時間に余裕があった和田女流初段は一手一手落ち着いて後手玉に迫り、最後は自玉に迫る後手の金を取って王手で打ち込み即詰みに討ち取りました。

■五局目 石本さくら女流二段 ● vs 〇 山根ことみ女流二段
チーム伊藤は山根女流二段との再戦を避けたい石本女流二段が順番を変えて出陣しますが、チーム山根も順番を変え三局目と同じ顔合わせとなりました。戦型も前局と同じ石本女流二段の三間飛車対山根女流二段の向かい飛車で、両者とも時間を6分以上に増やします。山根女流二段が4筋の歩を伸ばして△4六歩と取り込むと、石本女流二段は7筋の歩を突き捨て飛車角銀桂で後手玉に迫ります。山根女流二段が△8四歩と催促すると、石本女流二段は▲9三桂成と飛び込み香交換して▲7四香と打ちます。山根女流二段は△8三桂と打って飛車を追い返しますが、石本女流二段は飛車をいったん9筋に回してから8筋を突破します。両者時間に追われながらの激しい攻防となりましたが、山根女流二段は玉を中段から逃がして△3六桂打から反撃し、挟撃態勢を作ると即詰みに討ち取りました。

■六局目 室谷由紀女流三段 〇 vs ● 和田あき女流初段
チーム伊藤は連敗に責任を感じる石本女流二段に「全然平気」と声を掛け、室谷女流三段が出陣します。後手の室谷女流三段が中飛車に振り、和田女流初段は超速3七銀で対抗して、二局目と似たような駒組みが進みます。室谷女流三段が5筋から仕掛けると、和田女流初段は角交換してから▲5五歩と蓋をして後手の飛車を帰しません。和田女流初段は金を前進して飛車の捕獲を目指しますが、室谷女流三段は4筋の位を確保して飛車の可動域を拡げます。一瞬千日手に成り掛けましたが室谷女流三段が打開し、和田女流初段は角を飛車と交換して▲4一飛と打ち込みます。室谷女流三段はこの飛車を金で捕獲し△4九飛と敵陣に打ち込みます。更にもう1枚の飛車を△7九飛と打ち込み先手玉に迫ります。和田女流初段は桂で後手玉に迫りましたが、室谷女流三段は自玉を安全にしてから再度攻勢に転じ即詰みに討ち取りました。

■七局目 伊藤沙恵女流三段 〇 vs ● 塚田恵梨花女流初段
予選突破に王手を掛けたチーム伊藤はリーダーが出陣し、2連勝が必要なチーム山根は塚田女流初段に託します。チーム伊藤がタイムアウトを要求し、伊藤女流三段が作戦に迷いがあるようでしたが「好きなように指して大丈夫」と送り出します。先手の伊藤女流三段が雁木、塚田女流初段は矢倉に構えます。伊藤女流三段が▲3七角と転回すると、塚田女流初段は飛先の歩を交換して下段飛車に引き6筋の位も確保し好形を築きます。伊藤女流三段は4-5筋の歩を突いて戦場を拡大し、塚田女流初段に時間を使わせます。伊藤女流三段は後手の玉頭から攻め掛かり、塚田女流初段は△3九角と先手陣に打ち込み馬を作ります。両者時間に追われて時計の叩き合いになりましたが、最後は伊藤女流三段が▲1一角成と馬を作り、塚田女流初段の反撃をかわして寄せ切りました。

■八局目 室谷由紀女流三段 〇 vs ● 山根ことみ女流二段
予選敗退が決まったチーム山根は、この試合の勝利を目指してリーダー登場です。後手の室谷女流三段が先に三間飛車に振り、山根女流二段は向かい飛車に振って相振り飛車の将棋となりました。室谷女流三段が3-2筋の歩を交換して手持ちにすると、山根女流二段は5-9筋の歩を五段目に進め、▲8六飛の横利きで玉頭を守ります。山根女流二段は角を交換した後、9-7筋の歩を突き捨て飛車で取り返して手持ちにします。押され気味の山根女流二段は歩で香を吊り上げ▲9一角~▲9二角成で後手玉を8筋に引っ張り出しますが、室谷女流三段も先手の玉頭から反撃し、香を吊り上げてから△1八角と痛打を浴びせます。山根女流二段は玉を左辺に逃がしつつ、▲9三香成から後手玉に迫ります。最後はギリギリで凌いだ室谷女流三段が即詰みに討ち取りました。

【チーム伊藤 5勝 vs チーム山根 3勝】
チーム伊藤はリーダーが先陣を切り、苦しい将棋を制して流れを掴みました。室谷女流三段は後手番で3連勝し、特にチームが2勝3敗の劣勢に追い込まれた六局目に勝って大きく貢献しました。3局とも終盤まで時間を残す安定感のある戦いぶりで、本戦でも大いに活躍することが期待されます。石本女流二段は、この日は白星に恵まれませんでしたが、本来の実力を発揮すれば貢献できることは間違いありません。予選の1位通過を果たしたこのチームが優勝候補の一角であることは疑う余地がなく、本戦での戦いぶりに注目していきたいと思います。
チーム山根はリーダーが2勝して意地を見せ、チームとしての3勝目を先に挙げてリードするなど健闘しました。和田女流初段も相手のリーダーを破る殊勲の星を挙げ、実力の片鱗を魅せました。これからの女流棋界を担う若手3人のチームでしたが、全体的に終盤になると時間に追われて決めきれず、経験値の差を見せつけられたように思います。惜しくも予選敗退となりましたが、3人が今後の公式戦で飛躍することを楽しみにしたいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?