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第1回ABEMA師弟トーナメント予選Aリーグ2位決定1回戦

1月1日、ABEMA師弟トーナメント予選Aリーグ2位決定1回戦が放映されました。チーム井上「加古川の太陽」とチーム木村「ドラの穴」の顔合わせとなっています。この試合の勝者が1位決定戦に敗れたチーム深浦と対戦し、勝者がAリーグ2位として本戦に進みます。両チームとも1回戦をストレート負けしており、早く1勝して波に乗りたいところです。

■一局目 稲葉陽八段 〇 vs ● 木村一基九段
両チームとも早く1勝したいという思惑があり、一局目から実力者同士の対決となりました。振り駒で先手となった木村九段が相掛かりに誘導し、稲葉八段が先に飛先の歩を交換します。木村九段も飛先の歩を交換すると、稲葉八段は右玉に構えます。木村九段が▲2五銀と出て2筋突破を狙うと、稲葉八段は角を交換して牽制します。木村九段は9筋の端攻めで香を吊り上げ▲5六角と打って角成を目指しますが、稲葉八段は△7四角と打ち返します。木村九段は角を交換して▲9二角と飛銀両取りに打ちますが、稲葉八段は飛車を浮いて受けます。少し苦しくなってきた木村九段は更に▲8六飛とぶつけ、角で銀を食いちぎってから桂交換します。稲葉八段は△6六桂と王手金取りに打ち、金を剥がして先手玉に迫ります。木村九段は▲8二飛成と王手で竜を作ってから▲8五竜と引きますが、稲葉八段は角の連打で先手玉を下段に落として寄せ切る快勝となりました。

■二局目 井上慶太九段 ● vs 〇 高野智史六段
初戦を落としたチーム木村は、弟子が力強く「勝ちたい」と宣言して出陣します。先手の井上九段が矢倉に誘導し、高野六段は最近の主流となりつつある急戦調の駒組みを進めます。高野六段が5筋から仕掛けて銀交換し、△4五銀と打って中央の制圧を目指します。井上九段は歩で銀を追い返しますが、高野六段は△8五桂から銀桂交換を果たします。井上九段は角も追い返して銀取りに▲5五桂と打ちますが、高野六段は6筋の歩を突き捨ててから△6四銀とかわします。井上九段は残り4秒まで考え、▲3三銀と打って角道を遮断してから▲6五歩で銀を追い返します。井上九段は後手の角を追い、高野六段が飛車取りに△3九銀と打ったのを手抜いて角と飛車を取り合います。高野六段が△3九飛と打ち込んで攻め掛かると、井上九段も▲3三桂から後手玉に攻め掛かり▲6三桂成と勝負手を放ちます。高野六段は金を取って△5八金と打ってから△6三銀と成桂を取りますが、井上九段は飛車の両取りに狙いの▲2八角と打ちます。高野六段が△9九飛成と竜を作ると、井上九段は自玉の詰みがあって飛車を取れずに退路を作ります。高野六段は△8一飛と逃げてから先手玉を攻め、最後は即詰みに討ち取りました。

■三局目 稲葉陽八段 ● vs 〇 木村一基九段
タイスコアとなり、一局目と同じ顔合わせになりました。先手の木村九段が相掛かりを選択し、前局と似たような出だしとなりました。稲葉八段が飛先の歩を交換してから7筋の横歩も取ると、木村九段は飛先の歩を交換し8筋に回って▲8三飛と引きます。木村九段が後手の飛車を追いながら盤面中央を制圧すると、稲葉八段は飛車の退路を作って自陣を固めて辛抱します。稲葉八段が△1三角と覗いて角交換すると、木村九段は▲3一角と打ち込みます。稲葉八段も攻防に△5四角と打ち△3二金と角を捕獲しますが、木村九段は角を取らせる間に"と金"で後手玉に迫ります。稲葉八段は自陣の守りに利かせつつ遠く先手陣の金取りに△9二角と打ちますが、木村九段は▲8四歩と詰めろを掛けてから歩で角道を遮断します。稲葉八段は△6六歩から角を切って先手玉に迫りますが、木村九段は慎重に少考して即詰みに討ち取る快勝となりました。

■四局目 井上慶太九段 ● vs 〇 高野智史六段
四局目までに1人2回対局を行うというルールになっており、必然的に二局目と同じ顔合わせになりました。先手の井上九段が前局とは戦型を変え、相掛かりの将棋となりました。高野六段が飛先の歩を交換すると、井上九段は▲5六歩~▲5七銀という趣向を見せます。井上九段が3-2筋の歩を突き捨ててから▲3五銀と出ると、高野六段は△4五銀と出て受けます。井上九段が自陣を整備すると、高野六段は△3四歩と打って相手の攻めを催促します。井上九段は▲2四銀と出ますが、高野六段は△2七歩~△3六銀と飛車取りに出ます。高野六段は△4七銀成と突進して銀交換し、井上九段が▲2二歩成と"と金"を作ると、飛車取りに△5三角と飛び出します。高野六段は飛車を追い、角を取らせる間に飛車を取って△4九飛と王手金取りに打ち込みます。井上九段が▲5八玉と顔面受けし▲5四歩と取り込むと、師弟会議室の稲葉八段は「ウォー、マジか」と呻きます。井上九段は馬を作りますが、その瞬間に高野六段も△3五桂から反撃し、△8九飛成と作った竜で金を食いちぎり、力強い手つきで△8七飛成ともう1枚の飛車を成り込みます。井上九段は自陣に馬を引き付けて粘りましたが、最後は高野六段が即詰みに討ち取りました。

【チーム木村 3勝 vs チーム井上 1勝】
チーム木村は初戦に師匠が敗れて暗雲漂う中、弟子の高野六段が二局目を制して流れを掴みました。ここまで勝ち星のなかった木村九段もようやく1勝目を挙げ、次戦以降の活躍が期待できそうです。次の2位決定戦は、チーム深浦とのリベンジマッチとなりますので、どのような戦いとなるのか楽しみです。
チーム井上は弟子の稲葉八段が幸先良く1勝を挙げましたが、師匠が勝ち星に恵まれず残念ながら予選敗退となりました。奨励会も含めて数多くの弟子を抱える井上九段の人柄の良さが感じられ、素晴らしい師弟関係を見せてくれたように思います。

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