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「観る将」が観た第11期女流王座戦第一局

10月28日、第11期リコー杯女流王座戦五番勝負がホテル椿山荘東京で開幕しました。西山朋佳女流王座は初代白玲の座に就いて自身最多の女流四冠となり、女流王将戦と同様に里見香奈女流四冠を挑戦者に迎えてのダブルタイトル戦となりました。里見香奈女流四冠は更に清麗戦と倉敷藤花戦で加藤桃子女流三段を挑戦者に迎えての防衛戦が行われており、4つのタイトル戦を同時進行で戦っています。

両者による女流王座戦は3期連続となり、第9期に奪取した西山女流王座が前期は里見女流四冠を降して防衛しています。2年続けて女流名局賞を受賞(第9期第四局、第10期第五局)する好勝負を繰り広げており、今期もどのような名局が生み出されるのか非常に楽しみです。

里見女流四冠は濃い桃色の着物で、西山女流王座は藤色の着物で登場します。振り駒で先手となった里見女流四冠が初手▲5六歩から得意の中飛車に振ると、西山女流王座も4手目△3二飛と三間飛車に振り、相振り飛車の将棋となりました。西山女流王座が△3四飛と浮いて石田流の駒組みを目指すと、里見女流四冠は飛車を8筋に振り直し、高美濃囲いに入城してから飛先の歩を交換します。西山女流王座も美濃囲いに構え、△4五歩と仕掛けたところで昼休となりました。残り時間は西山女流王座が2時間17分、里見女流四冠が2時間5分と拮抗しています。

昼休明け、里見女流四冠は4筋を手抜いて9筋から端攻めを決行します。西山女流王座が4筋を押さえ込んでから3筋の歩も突くと、里見女流四冠は角交換してから▲8五桂と跳ねて後手の守りの桂を剥がします。西山女流王座は3筋の歩を取り込み先手の玉頭から反撃しますが、里見女流四冠も▲9四歩~▲8六桂と後手の玉頭から攻め掛かります。西山女流王座が飛車銀両取りに△3三桂と打つと、里見女流四冠も飛車桂香両取りに▲2二角と打ち込み、お互いに飛車を取り合う激しい戦いとなりました。

先に西山女流王座が△6九飛と金取りに打ちますが、里見女流四冠は▲9三飛と王手で打ち返します。西山女流王座は持ち駒の銀を温存し、盤上の駒で△8三銀と受けます。里見女流四冠は金を取らせる間に▲5七桂~▲6五桂打と王手で寄せに入ります。西山女流王座は玉を引いてかわしますが、里見女流四冠は何か誤算があったのか残り26分から17分考えて▲3六玉と自陣に手を戻します。西山女流王座にチャンスが訪れたようで、残り55分から16分考えて△1五金と先手玉の退路を狭めます。

西山女流王座は△6五銀と桂を補充しますが、▲6五同桂と取られたところで後手玉には詰めろが掛かったようです。西山女流王座は先手玉に詰みがあると考えていたようで、△4四桂から7連続王手で先手玉を詰ませにいきます。実際に受け間違えれば詰まされる順がいくつもありましたが、里見女流四冠は正確に指し続けて逃げ切りました。

本局は里見女流四冠が後手陣を端から切り崩して攻め込みましたが、西山女流王座も先手の玉頭から攻め掛かり、どちらが先に寄せ切るかという際どい攻防となりました。両対局者も解説陣もすべてを読み切れない難解な終盤戦となり、迫力ある攻めと粘り強い受けの応酬が見応えのある好局だったと思います。

第二局は11月15日に予定されていますが、その前に両者は11月4日に女流王将戦三番勝負の第三局を戦うことになっています。本局に勝った勢いで里見女流四冠が女流王将位を奪還するのか、西山女流王将がうまく切り替えて防衛を果たすのか、その結果が女流王座戦五番勝負の行方に大きく影響しそうな気がします。女流タイトルを4つずつ分け合う両者のダブルタイトル戦に、これからも注目していきたいと思います。

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