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「観る将」が観た第34期女流王位戦五番勝負第二局

5月16日に北海道の京王プラザホテル札幌で女流王位戦第二局が行われました。初戦を落とした里見香奈女流王位が巻き前すのか、伊藤沙恵女流四段が連勝して奪取に王手を掛けるのか、注目の一局となっています。

前日の夕食会で、里見女流王位は「明日は自分の力を精一杯出しきれるように一生懸命頑張りたい」、伊藤女流四段は「精一杯自分の力を出しきれるように、いい将棋を指したい」と挨拶しています。

相振り飛車から対抗形

挑戦者の伊藤女流四段が紺色のワンピースで入室し、里見女流王位はベージュのスーツ姿で入室します。先手の里見女流王位が初手に5筋の歩を突き中飛車に振ると、伊藤女流四段は14手目に向かい飛車に振ります。里見女流王位は玉を左側に囲い、伊藤女流四段が飛先の歩を伸ばすと、飛車を2筋に戻して対抗形の将棋となります。

前例を離れる

伊藤女流四段が美濃囲いに構えると、里見女流王位は天守閣美濃に囲います。前期女流名人戦で決着局となった第四局と同じ局面となりましたが、勝った伊藤女流四段が手を変えて△8四歩と玉頭の歩を突くと、里見女流王位は初めて手を止め、18分の考慮で▲6六角と出て牽制してから▲3七桂と跳ねます。

開戦準備

伊藤女流四段は32分の熟考で△7二金と締まって銀冠を完成させ、里見女流王位が▲7七桂と跳ねると、△7三桂と備えます。里見女流王位が▲8八玉と引くと、伊藤女流四段は△2三飛~△2二角と大駒の位置を変えて間合いを測ります。次の47手目を里見女流王位が考慮中に昼休となりました。各4時間の持ち時間の内、残り時間は里見女流王位が2時間35分、伊藤女流四段が2時間45分となっています。

里見女流王位の仕掛け

里見女流王位は昼休を挟む36分の長考で、4筋の歩を突き捨ててから飛車を4筋に回し、伊藤女流四段が3筋の歩をぶつけると、構わず▲4五飛と走ります。伊藤女流四段は25分考えて△4四歩と辛抱し、里見女流王位が飛車で3筋の歩を取ると、△3三桂と跳ねて先手の飛成を防ぎます。形勢はわずかに里見女流王位に傾き始めたようです。

伊藤女流四段の長考

里見女流王位が5筋の歩を突き捨て▲4五歩と合わせると、伊藤女流四段は△2四飛と浮いて4筋の歩を支えます。里見女流王位が27分の熟考で▲2六歩とぶつけると、伊藤女流四段は55分の長考で残り39分となり、△7五歩と桂頭を狙って攻め合います。里見女流王位は▲2五歩から飛車をぶつけて交換し桂得の利を得ますが、伊藤女流四段も7筋の歩を取り込み桂に当てます。

里見女流王位の玉頭攻め

里見女流王位が▲2一飛と角取りに打ち込むと、伊藤女流四段は△7七歩成と王手で桂を取り返してから、△2四飛と打って角に紐を付けます。まだ1時間程度残している里見女流王位は、慎重に少考を重ねて7筋の桂頭を歩で叩き、銀で取らせて更に銀頭を叩いて上ずらせ、空いたスペースに▲7四桂と王手で打ちます。伊藤女流四段が玉を9筋に寄せてかわすと、里見女流王位は▲2三歩と角頭を叩きます。形勢は里見女流王位に大きく傾いてきたようです。

竜切りの寄せ

この歩を取ると桂に成られて飛車か角を取られる形になるので、伊藤女流四段は角を諦めて△2五飛と桂を取り、角取りに△6五桂打と継ぎ桂で攻めます。里見女流王位は構わず▲6一飛成と竜を作って金に当て、伊藤女流四段が底歩を打つと、▲7二竜と金を食いちぎり▲8二金~▲8三角と詰めろを掛けます。伊藤女流四段は玉の退路を作って逃れますが、里見女流王位は冷静に▲7二角成と馬を作って追い詰めます。伊藤女流四段は△7七桂成と王手しますが続かず、里見女流王位が寄せ切りました。

まとめ

本局は里見女流王位がいったん中飛車に振ってから居飛車に戻す作戦を採用し、積極的に動いて飛車をさばきました。伊藤女流四段は辛抱して傾きかけた流れを食い止めましたが、角を守るために打った飛車が働かず、里見女流王位の攻めを呼び込む形になってしまいました。最後は出雲のイナズマが炸裂し、里見女流王位が竜を切って鮮やかに寄せ切りました。
両者1勝1敗のタイスコアとなり、次局に向け里見女流王位は「集中して頑張りたいと思います」、伊藤女流四段は「自分の精一杯を頑張りたいと思います」と話しています。次局以降も熱戦が続くことを期待したいと思います。

女流王位戦は新聞三社連合が主催しています。
棋譜は下記サイトをご確認ください。


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