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第2回女流ABEMAトーナメント予選Aリーグ第二試合

10月16日、第2回女流ABEMAトーナメント予選Aリーグ第二試合が放映されました。この日は第一試合を勝利で飾ったチーム里見「不動」と、前回大会優勝のリーダーが率いるチーム伊藤「ネバギバ」の顔合わせとなっています。

■一局目 清水市代女流七段 ● vs 〇 伊藤沙恵女流三段
チーム初戦となるチーム伊藤は、リーダーが自ら主導権を取りに出陣します。振り駒で先手となった伊藤女流三段が矢倉に誘導し、力戦調の駒組みが進みます。清水女流七段が△5一角と右辺への展開を図ると、伊藤女流三段は▲3五歩と歩を交換します。清水女流七段が△8四角と好位置に据えると、伊藤女流三段は5筋の位を取って対抗します。清水女流七段が△6五歩と仕掛けて飛車を6筋に回すと、伊藤女流三段は▲4五歩と反発します。清水女流七段は金銀4枚を3-4筋に集めて先手の飛車を追い返し、時間に追われながらも角交換から△3九角と敵陣に打ち込みます。伊藤女流三段は▲2五桂から歩で後手陣を乱し、▲5一角と打ち込み後手の飛車を追って寄せに入ります。お互いに角を取り合いますが、最後は伊藤女流三段が寄せ切りました。

■二局目 里見咲紀女流初段 〇 vs ● 石本さくら女流二段
二局目は若手同士の対決となりました。先手の里見女流初段は三間飛車、石本女流二段は向かい飛車と相振り飛車の将棋となりました。石本女流二段が1筋から端攻めし、里見女流初段は手抜いて▲1八歩としゃがんで受けます。石本女流二段は△6四角と覗いて先手陣を睨み、△3五歩と先手の桂頭を狙います。里見女流初段は飛車を3筋に回して受けますが、石本女流二段は強く△2五桂と跳ねて攻めをつなぎます。里見女流初段は攻防に▲2四桂と打ち、竜を作って反撃します。両者時間に追われながらの寄せ合いとなり、どちらが勝っているのかわからない激戦となりましたが、最後は里見女流初段が即詰みに討ち取りました。

■三局目 里見香奈女流四冠 〇 vs ● 室谷由紀女流三段
チーム里見はリーダーが勝ち越しを目指します。先手の室谷女流三段は三間飛車に振りますが、里見女流四冠は態度を保留して指し進め5筋の位を取ります。室谷女流三段が向かい飛車に振り直すと、里見女流四冠は飛車を下段に引いて右玉に囲います。室谷女流三段が▲8六角と出ると、里見女流四冠はすかさず△8四歩と仕掛けます。室谷女流三段は9筋の端攻めを絡め桂交換の後、香も交換します。室谷女流三段が桂を犠牲に8筋を突破すると、里見女流四冠は手順に飛車を2筋に回し△3五桂と先手の玉頭から攻め掛かります。室谷女流三段は時間に追われながら竜を作って後手玉に迫りますが、時間に余裕のある里見女流四冠も竜を作って寄せに入ります。最後は△7九銀と挟撃態勢を作った里見女流四冠が寄せ切りました。

■四局目 里見香奈女流四冠 〇 vs ● 伊藤沙恵女流三段
チーム里見は中村太地監督が相手のオーダーを読み切り、リーダー対決を実現しました。先手の里見女流四冠が中飛車に振り穴熊を目指すと、伊藤女流三段は中央に手厚い陣形を築いて待ちます。里見女流四冠は▲5四歩から仕掛けて銀交換し、更に▲6五銀と打って中央突破を図ります。伊藤女流三段が飛車を5筋に回して受けてから銀を捕獲すると、里見女流四冠は角を交換して敵陣に打ち込み▲8一角成と桂を取って馬を作ります。伊藤女流三段は先手の玉頭から攻め掛かり、穴熊が崩壊した里見女流四冠は左辺に玉を逃がします。里見女流四冠も後手の玉頭から反撃し、どちらが勝ってもおかしくない激戦となりました。最後は伊藤女流三段の攻めをかわした里見女流四冠が寄せ切りました。

■五局目 清水市代女流七段 ● vs 〇 石本さくら女流二段
チーム里見がタイムアウトを要求し、両チームとも時間に気を付けることを再確認して出陣します。先手の石本女流二段が初手▲7八飛と三間飛車に振り穴熊を目指すと、清水女流七段は銀冠に構えます。石本女流二段は飛車を5筋に振り直して▲5五歩と仕掛けます。清水女流七段が銀を前進して先手の角頭を狙うと、石本女流二段は▲4四銀とタダ捨てして竜を作ります。清水女流七段は1筋から端攻めし、金を前進させて先手玉に迫ります。石本女流二段は馬も作って後手陣を崩し、▲1四桂と玉頭から反撃します。清水女流七段は時間に追われながらも粘りますが、時間に余裕があった石本女流二段が落ち着いて即詰みに討ち取りました。

■六局目 里見香奈女流四冠 〇 vs ● 室谷由紀女流三段
チーム里見は重要な一局ということで、中村監督がリーダーを指名します。両者角道を開けた後、お互いに端の位を取り合う珍しい出だしとなり、先手の里見女流四冠が居飛車、室谷女流三段が中飛車を選択します。里見女流四冠は▲4五銀と出て銀交換し▲4五同桂で後手の角を追います。更に▲5三銀と打ち込むと、室谷女流三段は飛車を1筋に回して凌ぎます。里見女流四冠は▲6四銀引成から再度銀交換しますが、いったん両者ともに自陣の整備に戻ります。お互いに時間がなくなり時計の叩き合いとなりましたが、最後は里見女流四冠の寄せが速く、即詰みに討ち取りました。

■七局目 里見咲紀女流初段 ● vs 〇 伊藤沙恵女流三段
カド番となったチーム伊藤はリーダー登場です。後手の里見女流初段が三間飛車に振ると、伊藤女流三段も向かい飛車に振り、相振り飛車の将棋となりました。里見女流初段は美濃囲い、伊藤女流三段は矢倉風に構えます。里見女流初段が4筋の歩を突き捨て6筋から仕掛けると、伊藤女流三段は▲5八金と上がって受けます。伊藤女流三段が▲7五銀と上がって玉頭からの攻めを見せると、里見女流初段は角交換して△3三桂から攻め合いを目指します。伊藤女流三段は敵陣に角を打ち込み馬を作り、▲5六馬~▲8三歩と攻め掛かります。里見女流初段は頭を抱えつつ△8三同銀と取りますが、伊藤女流三段は着実に後手玉を追い詰めます。里見女流初段も連続王手で先手玉に迫りましたが、伊藤女流三段はチームメイトが立ち上がってモニタを見つめる中、逃げ切って即詰みに討ち取りました。

■八局目 清水市代女流七段 ● vs 〇 室谷由紀女流三段
チーム伊藤がタイムアウトを要求し、室谷女流三段は相手の意表を突く作戦で臨むことを確認して出陣します。後手の室谷女流三段は宣言通り角道を止めた三間飛車に構えます。清水女流七段が落ち着いて9筋の位を取ると、室谷女流三段は穴熊に囲います。清水女流七段は銀冠に囲い、▲8六角と覗いて後手の銀の動きを牽制します。清水女流七段が飛車を浮いて攻撃の糸口を探ると、室谷女流三段は△1三桂と跳ねて飛車を押し戻します。清水女流七段が先に馬を作って攻め込みますが、室谷女流三段は"と金"攻めで後手陣に迫ります。清水女流七段は時間に追われながら小駒で穴熊を崩しに掛かり、室谷女流三段も自陣に駒を埋めて粘ります。最後は室谷女流三段が反撃に転じ、自玉の硬さを活かして寄せ切りました。

■九局目 里見咲紀女流初段 ● vs 〇 石本さくら女流二段
両チーム4勝4敗となり、勝負の行方は若手同士の最終局に委ねられます。里見女流初段がタイムアウトを要求し、緊張感をほぐされて出陣します。あらためて振り駒が行われて里見女流初段が先手となり、二局目と先後も同じ顔合わせとなりました。戦型も前局と同じ、里見女流初段が三間飛車、石本女流二段が向かい飛車の相振り飛車の将棋となりました。石本女流二段が1筋から端攻めを決行し、里見女流初段は角銀交換の駒得を果たします。苦しくなった石本女流二段は飛車をぶつけて飛車交換し、里見女流初段が▲8二飛と打ち込んできたところを△7二銀から捕獲します。次に石本女流二段は△6九飛~△3九飛打と2枚の飛車を打ち込んで逆襲します。大きく駒得となった石本女流二段は焦らずに先手玉を追い詰め、最後は即詰みに討ち取りました。

【チーム伊藤 5勝 vs チーム里見 4勝】
チーム伊藤は初戦のためか、前半は終盤早々に時間に追われる将棋が目立ちましたが、対局を重ねるに連れ時間の使い方にも慣れ逆転勝利を収めました。伊藤女流三段は自ら2勝するとともに、初出場の石本女流二段が不安気に応援していると「大丈夫」と声を掛けて落ち着かせる等、頼もしいリーダーぶりを発揮していました。室谷女流三段は相手のリーダーに2敗しましたが、勝負所の第八局で苦しい将棋を逆転勝ちし存在感を見せました。石本女流二段も最終局、押さえ込まれそうな状況から攻め合いに持ち込み逆転勝ちでチームの勝利をもたらし、次戦以降自信をもって対局に臨めそうです。
チーム里見は、里見(香)女流四冠が第一試合に続いて3戦全勝と貫録を示しました。中村太地監督は相手のオーダーをほぼ完璧に読み切り、六局目までに4勝を挙げて予選突破を決める好采配を見せました。里見(咲)女流初段は一局目を落とした後の二局目に勝って、チームに流れを呼び戻す貴重な白星が光ります。清水女流七段はこの日は白星に恵まれませんでしたが、レジェンドに相応しい美しい所作を本戦でも観られるのが楽しみです。

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