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「観る将」が観た第35期女流王位戦五番勝負第一局

4月25日に徳島県板野郡の樫野倶楽部樫野邸で女流王位戦が開幕しました。女流王位を通算9期獲得して既にクイーン王位の称号を持つ福間香奈女流王位に挑戦するのは、第31期以来2度目の女流王位挑戦となる加藤桃子女流四段です。

福間女流王位は前期、伊藤(沙)女流四段の挑戦を3勝1敗で退け、5連覇を達成しています。加藤女流四段は今期、5戦全勝で白組優勝し、挑戦者決定戦で紅組優勝の伊藤(沙)女流四段を降して挑戦権を獲得しました。

これまでの2人の対戦成績は、福間女流王位が39勝、加藤女流四段が13勝です。タイトル戦で顔を合わせるの13回目で、福間女流王位が10回、加藤女流四段が2回シリーズを制しています。

前日の検分後に行われたインタビューでは、福間女流王位は「明日は先後がわからないので、一手一手しっかり考えて自分の力を出しきれるように精一杯頑張りたいと思っています」、加藤女流四段は「徳島対局と五番勝負を一生懸命戦いたいと思いますので、応援していただけたら幸いです」と話しています。

福間女流王位は中飛車

福間女流王位が白いスーツ姿で入室し、加藤女流四段はグレーのワンピースに白いジャケットを羽織って入室します。振り駒で先手となった福間女流王位が初手に5筋の歩を突いて中飛車に振ると、加藤女流四段は銀を繰り出し、銀対向の形になります。福間女流王位が美濃囲いから銀冠に組み替えると、加藤女流四段は左高美濃に構えます。

角の位置の駆け引き

加藤女流四段は△2四角と覗いてぶつけ、福間女流王位が▲5九角と交換を避けると、△4二角と引きます。福間女流王位は▲3七桂と跳ね、加藤女流四段が△2四歩と突いて備えると、▲6八角と戻します。加藤女流四段は銀冠に組み替え、福間女流王位が▲5八金と左金を玉側に近づけると、飛車を5筋に回します。

加藤女流四段の仕掛け

福間女流王位は▲4八金左と寄って飛車の利きを通し、加藤女流四段が30分の熟考で飛車を下段に引くと、49分の長考で▲4九金と引きます。加藤女流四段は5筋の歩をぶつけて仕掛け、福間女流王位が次の53手目を考慮中に昼休となりました。各4時間の持ち時間の内、残り時間は福間女流王位が2時間26分、加藤女流四段が2時間54分となっています。

福間女流王位は陣形を強化

福間女流王位は昼休を挟む22分の熟考で同歩と応じ、加藤女流四段が金で取り返すと、更に22分考えて▲3九金寄と陣形を引き締めます。加藤女流王位は5筋の位を確保し、福間女流王位が▲2九玉と引いて玉を戦場から遠ざけると、3筋に桂を跳ねて攻撃態勢を整えます。

飛金両取りの桂打ち

加藤女流四段は△6五銀とぶつけて銀交換し、福間女流王位が▲7七桂とぶつけると、取ったばかりの銀を△5六銀と打って先手の大駒に圧力を掛けます。福間女流王位は桂交換してから3筋の歩をぶつけて反発し、加藤女流四段が飛金両取りに△4七桂と打つと、構わず3筋の歩を取り込んで桂に当てます。

加藤女流四段が大きく駒得

加藤女流四段は取れる飛車を取らずに△6七銀成と飛び込んで角に当て、福間女流王位が▲3三歩成と桂を取ってから2筋の歩もぶつけると、成銀で角を取ります。福間女流王位は飛車を4筋にかわし、加藤女流四段が金桂交換してから△5六角と打って間接的に先手玉を睨むと、▲4七銀と打って角を追います。駒割りは角金と桂2枚の交換となり、後手の攻めが好調のようです。

駒柱

加藤女流四段が△6七角成と馬を作ると、福間女流王位は銀取りに▲3五桂と打って反撃します。加藤女流四段は桂先の銀でかわし、福間女流王位が▲3六銀左と上がって桂を支えると、△3一玉と引いて5-6筋方面への脱出を図ります。3筋に珍しい駒柱が立ち、玉頭戦ならではの緊迫感が漂います。

福間女流王位が反撃

福間女流王位が銀取りに▲2六桂と打つと、加藤女流四段は玉を4筋に上がり、銀桂交換を甘受して馬で取ります。福間女流王位は4筋の歩をぶつけて後手の馬の利きを遮断し、加藤女流四段が玉を5筋に上がると、馬取りに▲4六桂と打ちます。加藤女流四段は馬を6筋に引き、福間女流王位が角取りに▲4四歩と打つと、角を2筋に引きます。後手の攻め駒が抑え込まれ、形勢は混沌としてきたようです。

福間女流王位が角を捕獲

残り1時間を切った福間女流王位が4筋の歩を取り込み、角を呼び戻してから3筋の歩を成り捨てると、角で取ると王手角取りがあるので加藤女流四段は金で取ります。福間女流四段は▲4四歩と打って角を捕獲し、加藤女流四段がやむなく角桂交換してから銀取りに△2四桂と打つと、▲4四銀とかわしつつ王手します。後手陣は切り崩され、駒損を回復した先手がかなり指し易くなってきたようです。

王手飛車取り

加藤女流四段が金銀交換してから玉を6筋に引くと、福間女流王位は馬金両取りに▲4四角と打ちます。加藤女流四段が銀取りに△3五桂と跳ねて攻め合うと、福間女流王位は角を馬と交換してから▲5四桂と王手し、更に王手飛車取りに▲6二銀と打って畳み掛けます。

万全を期しての寄せ

加藤女流四段は飛銀交換に応じてから△7六金と上部を開拓して入玉を狙いますが、福間女流王位は慎重に16分考え、▲6三成桂と捨ててから▲3三飛と王手桂取りに打ち込み、竜を作りつつ自陣に迫る桂を取って万全を期します。加藤女流四段が△6四玉と上がると、福間女流王位は▲5四金から連続王手し、金取りに▲8八桂と打ちます。

懸命の粘り

加藤女流四段は△6七角と打って金を取らせる代わりに馬を作り、福間女流王位が竜で馬を取る間に金で先手の角と金を取ります。福間女流王位が詰めろ金取りに▲7二角と打ち込み、金を取って馬を作ると、加藤女流四段は攻防に△5七角と打って粘ります。福間女流王位が8筋の歩を伸ばして後手玉を追い、9筋の歩をぶつけて詰めろを掛けると、加藤女流四段は3分程考えてから投了を告げました。

まとめ

本局は加藤女流四段が積極的に仕掛け、駒得を果たしてわずかに優勢となりました。福間女流王位は駒柱ができた辺りを境に押し返し、歩と桂の小技で角を捕獲して形勢を入れ替えました。加藤女流四段は馬を消され飛車を取られながらも入玉を目指して粘りましたが、福間女流王位は自陣に迫る後手の攻め駒を取り除いてから、入玉を阻止して寄せ切りました。
先勝した福間女流王位は次局に向け、「先後が決まっているのでしっかり対策して挑みたいと思います」と話しました。加藤女流四段は「体調に気をつけて頑張りたいと思います」と話しており、次局以降の巻き返しを期待したいと思います。

女流王位戦は新聞三社連合、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会が主催しています。
棋譜は下記サイトをご確認ください。


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