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第2回女流ABEMAトーナメント本戦準決勝第二試合

11月27日、第2回女流ABEMAトーナメント本戦準決勝第二試合が配信されました。この日はAリーグ1位のチーム伊藤「ネバギバ」と、Bリーグ2位のチーム加藤「野生の桃」の顔合わせとなっています。実力者揃いの両チームで、どちらが決勝に進むことができるのか注目されます。

■一局目 石本さくら女流二段 ● vs 〇 加藤桃子女流三段
チーム加藤は、初戦からリーダーの登場です。後手の石本女流二段が四間飛車に振り美濃囲いに構えると、加藤女流三段は▲3七桂と跳ねて急戦調の駒組みを進めます。石本女流二段は飛車を3筋に振り直しますが、加藤女流三段は構わず▲3五歩と仕掛けます。石本女流二段が△3四銀とぶつて銀交換すると、加藤女流三段は飛車取りに▲2二角成と馬を作ります。石本女流二段が飛車を逃げずに△5三角と飛車取りに上がると、加藤女流三段は▲3五銀と打ってしっかり受けます。石本女流二段は△3七角成~△3八銀で先手の飛車を追い、△5九馬と飛車と交換してすぐに△2九飛と打ち込みます。加藤女流三段は9筋から端攻めしてから馬を飛車と交換し▲1一飛と打ち込みますが、石本女流二段は△4一歩と金底の歩を打って凌ぎます。形勢不明のまま白熱の終盤戦となり、石本女流二段が馬を作って先手玉に迫りますが、加藤女流三段も▲4四角と打って詰めろを掛け、▲4八香とタダで取れる場所に打ちます。この香を馬で取ると自陣の守りが利かなくなるので、石本女流二段は馬を引いて辛抱しますが、加藤女流三段は馬を切って後手陣に攻め込み▲9三銀と王手します。石本女流二段が△9三同桂と取った瞬間、渡辺監督が「頓死した!」と叫んだ通り、加藤女流三段が鮮やかな即詰みに討ち取りました。

■二局目 伊藤沙恵女流三段 ● vs 〇 香川愛生女流四段
初戦を落としたチーム伊藤は、リーダーの登場です。後手の香川女流四段が三間飛車に振り飛先の交換をすると、伊藤女流三段も向かい飛車に振り相振り飛車の将棋となりました。香川女流四段が△4五歩~△5五銀と仕掛けると、伊藤女流三段は銀交換に応じて▲4四銀と打ち角の捕獲を目指します。香川女流四段が角で銀を食いちぎり先手の玉頭に攻め掛かると、伊藤女流三段も▲8四歩~▲8三歩と後手の玉頭に嫌味を付け▲8二角と王手し攻め合います。香川女流四段は2筋を突破し竜を作りますが、伊藤女流四段はしっかり受けて決め手を与えません。香川女流四段は自玉に迫る馬を捕獲し、△4四角と飛馬両取りに打って馬のタダ取りに成功します。時間に追われた伊藤女流三段は▲3二銀と詰めろを掛けますが、香川女流四段は指をしならせて△5五角と打ち即詰みに討ち取りました。

■三局目 室谷由紀女流三段 〇 vs ● 野原未蘭女流初段
連敗のチーム伊藤は、野原女流初段が操る英春流対策を検討して来たと言う室谷女流三段が出陣します。先手の野原女流初段は初手▲9六歩と英春流の出だしを見せ、室谷女流三段は△9四歩と応じてから中飛車に振ります。野原女流初段が袖飛車にして3筋から仕掛けると、室谷女流三段は左銀を繰り出して対応します。銀を捕獲された野原女流初段は2筋に成り捨てて後手の金を戦場から遠ざけ、9筋の端歩攻めで勝負します。室谷女流三段は得した銀を守りに投入し、△3四金から飛車を2筋に回して竜を作ります。野原女流初段も▲8六桂~▲5五角と後手玉に攻め掛かりますが、室谷女流三段も△9八飛と打ち込んで反撃し、両者時間のない中ギリギリの寄せ合いになりました。最後は猛攻をかわした室谷女流三段が、落ち着いて寄せ切りました。

■四局目 石本さくら女流二段 ● vs 〇 加藤桃子女流三段
両チームとも順番を変えず、一局目と同じ顔合わせになりました。先手の石本女流二段が中飛車に振り、お互いに穴熊に囲います。石本女流二段が飛車を浮き1筋の位も取ると、加藤女流三段も△7三桂と跳ねて攻撃態勢を整えます。石本女流二段が▲3六銀と前進させると、加藤女流三段は飛車を5筋に回して仕掛けます。加藤女流三段が5筋を制圧したかに見えましたが、石本女流二段は角を交換して▲6二角と打ち込んで切り返します。加藤女流三段は桂に紐を付けて飛車取りに△9五角と打ち、馬を作らせる間に△6五桂と跳ねて5筋突破を図ります。石本女流二段は▲4九金寄と辛抱しますが、加藤女流三段はいったん浮いた飛車を△7六飛と回して△7七角成と馬を作って先手陣になだれ込みます。石本女流二段は時間に追われながら▲5五角と反撃しますが、金銀4枚に守られた後手の穴熊は固く、加藤女流三段が着実に寄せ切りました。

■五局目 室谷由紀女流三段 〇 vs ● 野原未蘭女流初段
両チームとも順番を変え、三局目と同じ顔合わせになりました。先後も同じで前局と同じ出だしになりましたが、野原女流初段が3筋から仕掛ける手順を変えます。室谷女流三段が少考して5筋の歩を伸ばすと、野原女流初段は駒音高く▲3七桂と跳ねて好形を築きます。室谷女流三段が△5四飛と浮いて受けますが、野原女流初段は構わず▲3四歩と銀取りに打ちます。室谷女流三段は銀を引き、穏やかな駒組みを目指します。野原女流初段が銀交換の後、再度▲3五銀と打って2筋の突破を目指すと、室谷女流三段は△1三角と覗いて受け飛車取りに△2七銀と打って捌きます。先手の金と後手の角の交換となりましたが、形勢のバランスはとれているようです。室谷女流三段は△5八飛成と竜を作り△6六桂と寄せに入りますが、野原女流初段はギリギリで凌いで▲4二飛から反撃し際どい終盤戦となりました。最後は室谷女流三段が攻防に△8四飛と打ち、即詰みに討ち取りました。

■六局目 伊藤沙恵女流三段 〇 vs ● 香川愛生女流四段
両チームとも全員2局目の登場で、またしても二局目と同じ顔合わせとなりました。チーム伊藤がタイムアウトを要求し、渡辺明監督は盤に駒を並べて香川女流四段と具体的な作戦を検討し、屋敷伸之監督は伊藤女流三段に中盤の指し手をアドバイスして送り出します。前局と同様、後手の香川女流四段が三間飛車に振り、伊藤女流三段が向かい飛車に振る相振り飛車となりました。香川女流四段が△4五銀と浮くと、伊藤女流三段も銀取りに▲8五飛と浮きます。香川女流四段は桂で銀を支えて、△1三角~△2四角と前線に繰り出します。伊藤女流三段が金無双を完成させると、香川女流四段は端攻めして1筋を押さえ込みます。伊藤女流三段も9筋を詰めますが、香川女流四段は角桂香の利きを1筋に集めて△1七歩成から△3七桂成と先手の玉頭に殺到します。伊藤女流三段が▲2六桂と角道を遮断しつつ飛車取りに打つと、香川女流四段は手抜いて△2五桂と香取りに打ち、お互いに技を掛け合う応酬となりました。伊藤女流三段は▲1五香とかわしてから▲3六香と飛角を田楽刺しにして角を取り、香川女流四段も入手した香を△8四香と飛車取りに打ちます。伊藤女流三段が冷静に飛車をかわすと、大きく駒損している香川女流四段は攻めが続かず無念の投了となりました。

■七局目 石本さくら女流二段 ● vs 〇 野原未蘭女流初段
両チーム3勝3敗となり、この日はまだ白星のない若手同士の顔合わせとなりました。チーム加藤がタイムアウトを要求し、渡辺監督は野原女流初段に「前2局とも内容は良かった」、屋敷監督も石本女流二段に「攻めていけば大丈夫」と励まして送り出します。先手の野原女流初段が初手▲9六歩と英春流の出だしを見せると、石本女流二段は予定通り三間飛車に振ります。石本女流二段は飛車を2筋に振り直してから美濃囲いに構え、急戦を警戒しながらじっくりした駒組みを進めます。野原女流初段が6筋の位を取り▲5五歩と仕掛けると、石本女流二段は飛車を5筋に振り直して受けます。野原女流初段が▲5六銀と援軍を送ると、石本女流二段は手薄になった先手の3筋を攻めます。5筋で金銀交換の後、野原女流初段が▲3四金と角取りに打つと、石本女流二段は手抜いて△4六歩と垂らします。野原女流初段が更に▲4五桂と援軍を送ると、石本女流二段は△4七歩成と成り捨て△5八銀の割り打ちで先手の金を1枚剥がします。石本女流二段が先手の角の利きを止めてから飛車を金と交換すると、野原女流初段は▲4一飛と角取りで打ち込み竜を作ります。最後は野原女流初段が▲5三桂打から駒得を拡大し、石本女流二段の反撃に丁寧に対応して押し切りました。

■八局目 室谷由紀女流三段 ● vs 〇 香川愛生女流四段
チーム加藤がリーチを掛け、中堅のライバル同士の対局が実現しました。チーム伊藤がタイムアウトを要求し、渡辺監督は香川女流四段に「気合で何とかしてください」と余裕を見せ、屋敷監督は「チーム里見戦でも室谷さんは八戦目に勝っている」と験を担いで送り出します。先手の室谷女流三段が7筋の位を取って三間飛車に振ると、香川女流四段は1筋の位を取って右四間飛車に構えます。お互いに囲いが完成する前に、香川女流四段が△6五歩と仕掛けて1歩を手にすると、室谷女流三段は美濃囲いに構えます。香川女流四段がエルモ囲いに構えて△5五銀とぶつけると、室谷女流三段は銀交換の後、角道を開けてぶつけます。香川女流四段は角交換の後すぐに桂取りに△3三角と打ち、△6六銀と痛打を放ちます。室谷女流三段は桂を逃がして△5七銀成に▲6九飛と引いて辛抱しますが、香川女流四段は△6六歩と垂らして攻め続けます。室谷女流三段は▲3九角と成銀取りに自陣角を打ち、後手の成銀を追いながら金銀を前進します。香川女流四段が成銀を先手の玉頭に進めると、室谷女流三段は▲3四金と角取りに打って後手の玉頭を攻めます。両者時間に追われて際どい終盤戦になりましたが、最後は香川女流四段が△7八飛成と竜を作って先手陣に攻め込み、鮮やかな即詰みに討ち取りました。

【チーム加藤 5勝 vs チーム伊藤 3勝】
チーム加藤は、リーダーが2連勝してチームに勢いを付けました。香川女流四段も2勝を挙げ、チームの勝利に大きく貢献しました。野原女流初段は2連敗して悔し涙を零しましたが、チームが3勝3敗の五分に追いつかれた七局目に自ら志願して出場し、見事に勝ち星を挙げチームの士気を高めました。3人がそれぞれ異なる棋風で着実に白星を重ね、総合力で決勝に進出することとなり、どんな戦いを魅せてくれるのかとても楽しみです。
チーム伊藤はここまで接戦をものにして勝ち上がってきましたが、この日も連敗スタートで常に先行される苦しい展開となってしまいました。ネバギバの精神でリーダーと室谷女流三段が踏ん張り、3勝3敗まで追い上げましたが最後は惜しくも力尽きました。若い石本女流二段がこの日は白星に恵まれませんでしたが、内容は充実しており今後各棋戦での活躍を期待したいと思います。最後に総括を求められたリーダーの、共に戦った仲間への感謝の気持ちが溢れて浮かべた涙が印象的でした。

※加藤女流三段は清麗を獲得していますが、収録時の肩書である女流三段のまま記述しました。

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