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「観る将」が観た第15期マイナビ女子オープン五番勝負第一局

4月5日、2022年度タイトル戦の幕開けとなるマイナビ女子オープンの第一局が、桜が咲く神奈川県の「元湯 陣屋」で行われました。女流棋界の二強とも言われる西山朋佳女王と里見香奈女流四冠の激突となっています。前日の夕食会で、西山女王は「明日から自分なりに精一杯やっていきたい」、里見女流四冠は「明日は自分の力を精一杯出し切れるように頑張っていきたい」と意気込みを語っています。

2人のプロフィール

西山女王は第11期にタイトル奪取しており、今期は5連覇に挑む防衛戦となります。達成すれば自身初のクイーン称号が得られる重要なシリーズとなりました。前期は伊藤沙恵女流三段(当時)の挑戦をフルセットで退けています。女流棋士に転向した昨年度は、30勝8敗(勝率0.789)で優秀女流棋士賞に輝きました。

里見香奈女流四冠は女流タイトル獲得通算47期の第一人者ですが、本棋戦は少し相性が悪く、これまで獲得1期に留まっています。昨年度は40勝10敗(勝率0.800)で7年連続12回目の最優秀女流棋士賞を獲得しています。4月1日には棋王戦で強豪の池永天志五段を破って4回戦に進むなど、好調を維持しています。

両者の対戦成績は西山女王が14勝13敗とわずかにリードしていますが、昨年度1年間では里見女流四冠が5勝2敗と巻き返しています。

相振り飛車から対抗形に

対局室に挑戦者の里見女流四冠が桜色の華やかな着物に紺色の袴で入室し、続いて西山女王が爽やかな薄紫色の着物にベージュの袴で入室します。振り駒で先手となった里見女流四冠は初手に5筋の歩を突いて中飛車に振り、西山女王も12手目に飛車を2筋に振って相振り飛車の将棋となりました。里見女流四冠が玉を左辺に移動すると、西山女王は美濃囲いに構えます。西山女王が飛先の歩を交換すると、里見女流四冠は飛車を追い返してから飛車を2筋に戻し、対抗形のような将棋となりました。

里見女流四冠の仕掛け

里見女流四冠がエルモ囲いに組むと、西山女王は高美濃に組み替えます。里見女流四冠が2筋の歩を伸ばすと、西山女王は△1三桂と端に跳ねて備えます。ここで里見女流四冠が▲4五歩と仕掛けると、西山女王は10分の熟考で△4五同歩と応じます。里見女流四冠が銀を上がって4五の地点に利きを足すと、西山女王は飛車を一段目まで引いて香を支えます。里見女流四冠が11分考えたところで昼休となりました。形勢はほぼ互角、各3時間の持ち時間の内、残り時間は西山女王が2時間6分、里見女流四冠が1時間56分と拮抗しています。

激しい鍔ぜり合い

里見女流四冠が昼休を挟む12分の考慮で▲4五桂と角取りに跳ねると、西山女王も12分考えて△5一角と引きます。里見女流四冠が▲4二歩と打って角道を遮断すると、西山女王は銀を上がって桂成を防ぎます。里見女流四冠が銀取りに▲5四歩と突いて角道を開けると、西山女王は銀で桂を食いちぎり、3八の金取りと5八への桂成の両狙いで△4六桂と打ちます。里見女流四冠は金取りに構わず▲5九飛と回り、中央突破を目指します。西山女王は△5四歩と自陣に手を戻しますが、里見女流四冠は▲4七金と逆に桂取りに上がります。お互いの読みと読みが真っ向からぶつかる戦いとなり、形勢は里見女流四冠に傾いてきたようです。

形勢傾く

西山女王は桂を取られる間に△2八飛成と竜を作りますが、里見女流四冠も▲1一角成と香を取って馬を作ります。西山女王は△4八角成と馬を作って飛車に当てますが、駒得の里見女流四冠は▲5六飛とかわしてから▲5四銀と攻め掛かります。西山女王は金銀交換の後△5二香と打ち、△5八香成と後手陣に攻め込みますが、里見女流四冠は△6一馬と切ってから△6三竜と2枚替えで後手陣を崩します。西山女王は△6八成香と銀を剥がし、△6二銀と自陣に投入して粘ります。里見女流四冠は▲5四竜とかわしますが、駒台には金銀桂香歩が2枚ずつ豪勢に並び、後は落ち着いて着地を決めるだけのようです。

一気の寄せ

西山女王は竜をぶつけて交換しますが、里見女流四冠の▲6六桂が早くも詰めろになっているようです。西山女王は△7三銀と受けますが、里見女流四冠は▲8五桂ともう1枚の桂を打って追撃します。受けの利かなくなった西山女王が△5七角と打って下駄を預けると、里見女流四冠は▲7三桂成から寄せにいきます。玉で取ると王手角取りに飛車を打たれるので西山女王は桂で取るしかありませんが、後手玉には詰みが生じたようで、里見女流四冠は▲7四桂から王手を続けます。西山女王は数手指し続けましたが、▲7五香の王手を見て投了を告げました。

先勝したのは

本局は里見女流四冠が積極的に仕掛け、西山女王も強気の応酬を見せました。中盤、西山女王が金取りに打った桂に対して、里見女流四冠が飛車を5筋に回してから桂を取りに行ったのが好手順だったようで、駒得を拡大した里見女流四冠は西山女王の反撃をかわして一気に勝負を決めました。
対局後に第二局に向けた抱負を聞かれ、先勝した里見女流四冠は「先後が決まっているのでコンディションを整えて頑張りたい」、西山女王は「少し日が空くので調整して挑みたい」と話しました。両者はマイナビ女子オープンと並行して女流王位戦五番勝負を戦うことが決まっており、合わせて十番勝負は始まったばかりです。第二局以降の熱戦を期待したいと思います。

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