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「観る将」が観た第41回将棋日本シリーズ決勝

11月22日に行われた将棋日本シリーズJTプロ公式戦決勝の感想です。今期叡王戦七番勝負で第九局までの死闘を演じ、王将戦挑戦者決定リーグでもプレーオフを戦うことになった豊島竜王と永瀬王座が、本棋戦でも決勝で顔を合わせることとなりました。

振り駒で後手となった永瀬王座は、四間飛車を採用しました。王将リーグで藤井二冠戦に採用して意表を突きましたが、その時以来今期2局目となります。これを見た豊島竜王は穴熊に、永瀬王座は王座戦五番勝負でたびたび久保九段が採用した△8一玉型で、お互いに自玉を固めて間合いを図ります。機が熟したところで永瀬王座が△5五歩と仕掛けると、豊島竜王は2筋と3筋の歩を突き捨て▲3五角と飛び出します。更に▲7五歩と桂頭を狙うと永瀬王座は△9六歩~△8五桂と端攻めを決行します。豊島竜王は、▲5五飛と自玉を睨んでいた角を飛車と交換してから▲8六銀と端を補強し、更に馬を自陣に利かせて鉄壁の陣形を築きます。永瀬王座も△5八飛成~△2九飛成と、2枚の飛車を成って攻め込みますが、豊島竜王は▲5九歩~▲5八香と安い駒で受け止めてしまいます。最後は、2枚の馬を攻撃参加させた豊島竜王が、永瀬陣の守備駒を一枚ずつはがしていき、受けなしとなった永瀬王座の投了となりました。

本局は、解説の谷川九段が「豊島竜王の、会心の緩急自在の一局だった」と総評したように、序中盤からまったく隙のない完勝だったと思います。永瀬王座としては、振り飛車は事前に決めていたようでしたが、今回は残念な結果となりました。本棋戦初出場での初優勝はなりませんでしたが、来期以降も優勝候補の一角として活躍することを期待したいと思います。

豊島竜王は、これで4年ぶり2回目の優勝となりました。表彰式では「非常に活躍している3人(渡辺名人、藤井二冠、永瀬王座)に勝てて自信になった」と語りましたが、確かにこの3人に勝っての優勝は価値の高いものだと思います。羽生九段と七番勝負を争っている竜王戦や、永瀬王座とのプレーオフに進んだ王将戦など、他の棋戦でも充実した戦いを続けて欲しいと思います。

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