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「観る将」が観た第4回ABEMAトーナメント予選Dリーグ第一試合

6月12日にABEMAトーナメント予選Dリーグ第一試合が放映されました。チーム天彦「にゃんぱす~」対チーム広瀬「早稲田」の顔合わせとなっています。ABEMAで公開されているチーム映像を見ると、両チームとも既に和気あいあいとしており、チームワークの面では絶好調と見受けられます。

■一局目 鈴木九段vs丸山九段
鈴木九段が「私に負けているようでは厳しいですよ」と軽いジャブを放って始まりました。先手の鈴木九段は作戦会議で古賀四段が希望した三間飛車ではなく、初手▲6八飛と四間飛車を選択します。丸山九段は8筋の歩を交換し、相手の飛車を9筋に追いやります。角交換後、鈴木九段は▲9六角、丸山九段は△5四角と打ち合います。早指しで知られる鈴木九段が序盤から小刻みに時間を使っています。難しい中盤戦となりましたが、丸山九段は1筋から端攻めを決行します。鈴木九段は飛車の横利きを通して1筋を守りつつ、▲3八香から反撃に出ます。更に自陣角を敵陣に直射した鈴木九段は大きく駒得を果たし、丸山九段の投了となりました。

■二局目 佐藤(天)九段vs広瀬八段
二局目で早くもリーダー対決が実現しました。先手の広瀬八段が角換わりに誘導し、佐藤九段は早繰り銀に構えます。佐藤九段は△5五角から馬を作り相手の飛車を攻めますが、広瀬八段は▲2八角から切り返し飛車を取り合います。佐藤九段は敵陣に飛車を打って自陣に引き成って守りを固め、相手の金の利きに馬が飛び込む妙手を魅せ勝勢を築きます。広瀬八段は入玉も視野に上部脱出を図りつつ、じわじわと敵陣に迫ります。最後は竜で桂を奪った広瀬八段が即詰みに討ち取り激闘を制しました。

■三局目 古賀四段vs北浜八段
三局目はABEMAトーナメント初登場同士の対決となりました。古賀四段にとっては、奨励会時代に幹事を務めていた北浜八段に、恩返しの対局ともなります。先手の古賀四段が居飛車、北浜八段は四間飛車に構えます。古賀四段が穴熊を見せると、北浜八段は飛車を2筋に振り直します。古賀四段が自陣に角を打って局面を落ち着かせると、北浜八段は銀冠に固めます。じりじりした駒組みが続きましたが、古賀四段は▲5五銀から開戦し両者とも角と銀を持ち駒にします。お互いに成駒を作って相手の堅陣に迫り、北浜八段の攻めが千日手含みの手順になりましたが、古賀四段は積極的に打開します。最後は北浜八段の攻撃の方が早く、相手の穴熊を攻略し寄せ切りました。

■四局目 鈴木九段vs広瀬八段
チーム広瀬はリーダーの投入です。後手の鈴木九段は宣言通り四間飛車穴熊を採用します。これを見た広瀬八段は銀冠から、銀冠穴熊に組み替えます。広瀬八段は玉頭に戦力を集めてから、右桂の活用を図ります。鈴木九段は先に竜を作って攻め掛かり、相手陣を切り崩したかに見えましたが、広瀬八段は攻防に▲4六角と打ってわずかにかわします。最後は鈴木九段が詰めろを掛けて下駄を預けましたが、広瀬八段は長手数の即詰みに討ち取りました。

■五局目 佐藤(天)九段vs丸山九段
苦しくなってきたチーム天彦はリーダーの投入です。後手の丸山九段は、伝家の宝刀一手損角換わりを選択します。丸山九段はスペシャリストらしい流れるような手順で相手の玉頭から攻め掛かります。佐藤九段は▲2二角とタダ捨てに打ちますが、時間を5分以上残していた丸山九段は熟考の上、タダの角を取らずに攻めを継続します。丸山九段は大きく駒損して攻めが続くかどうかという勝負になりましたが、△4五香から相手の飛車を奪って攻めを繋ぎ、最後は即詰みに討ち取る完勝となりました。

■六局目 佐藤(天)九段vs丸山九段
後がなくなったチーム天彦は、オーダー会議で悩んだ末にリーダーの連投です。チーム広瀬も丸山九段の連投で、珍しく2局続けて同じ顔合わせとなりました。横歩取りの将棋となり、後手の佐藤九段は左右の桂を跳ねて攻めの姿勢を見せますが、丸山九段は丁寧に相手の狙いを潰していきます。いったん落ち着いた駒組みに戻りましたが、佐藤九段が4筋から仕掛けると丸山九段も1筋から反発し、激しい終盤戦に突入します。最後は佐藤九段が歩で相手陣を崩し、交換した飛車を打ち込んで寄せ切りました。

■七局目 古賀四段vs北浜八段
チーム天彦は兄弟子が嫌な流れを断った勢いを背負って、弟弟子の古賀四段の登場です。チーム広瀬は北浜八段の投入で三局目と同じ顔合わせになりました。後手の北浜八段は、9筋の位を取ってから角交換し向かい飛車に構えます。古賀四段が8筋の位を取ると、北浜八段は△5四角と自陣にうち、3筋から仕掛けます。古賀四段も▲6六角と自陣に打って相手の攻めを牽制し、先に竜を作ります。北浜八段は自陣の金を攻撃に参加させて寄せに入りますが、古賀四段はうまくかわして必勝の局面を築きます。北浜八段は持ち駒がなくなり万策尽きたかに思われましたが、じっと△4五飛と走った手が好手となり大逆転勝利を掴みました。

【チーム広瀬 5勝 vs チーム天彦 2勝】
チーム広瀬は、二局目のリーダー対決で広瀬八段が逆転勝利を収めたことで流れを掴み、そのまま押し切りました。フィッシャールールに強い広瀬八段の2勝は想定通りですが、丸山九段の一手損角換わりが破壊力を発揮し、北浜八段も粘り強い終盤力を見せたのは、今後の試合に向けた収穫だったかと思います。
チーム天彦は、リーダーの佐藤(天)九段が1勝2敗と苦しみ、チームも波に乗れませんでした。予選突破に向け数字の上では苦しくなりましたが、BリーグもCリーグも初戦に2勝5敗だったチームが予選突破を果たしており、まだまだ可能性は充分あります。チームの雰囲気も良く、次戦では全員が開き直っての快進撃に期待します。

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