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「観る将」が観た第50期女流名人戦第二局

1月21日、岡田美術館杯第50期女流名人戦五番勝負第二局が、島根県出雲市の出雲文化伝承館で行われました。第一局を落とした西山朋佳女流名人が巻き返すのか、地元開催で勢いに乗る福間香奈女流四冠が奪取まであと1勝と迫るのか、注目の一局となりました。

前日に行われた開幕式で、西山女流名人は「明日は皆さまに楽しんでいただけるような将棋を指せるように頑張りたいと思います」、福間女流四冠は「この出雲にまた、対局者として帰ってこられて幸せに思っております。明日は自分の力をすべて出しきれるように、頑張りたいと思います」と挨拶しています。


中飛車対向かい飛車

大きな窓のある明るい対局室に、西山女流名人がベージュのパンツに白いカーディガン姿で入室すると、福間女流四冠は白いシャツに紺のスーツ姿で入室します。先手の福間女流四冠が中飛車に振ると、西山女流名人は向かい飛車に振ります。福間女流四冠は玉を左側に移動し、西山女流名人が三間飛車に振り直すと、飛車を3筋に回して対抗します。

福間女流四冠の仕掛け

まだ両者とも囲いは完成していませんが、福間女流四冠が3筋の歩を突き捨ててから▲4六銀と出ると、西山女流名人は取られそうな3筋の歩を伸ばします。福間女流四冠は▲4五銀と歩を取りに立ち、西山女流名人が5筋の歩を突くと、3筋の歩を取って歩損を解消します。西山女流名人は5筋の歩をぶつけ、福間女流四冠が▲5七銀と受けると、△5三銀と上がります。

西山女流名人の角

福間女流名人は28分の熟考で5筋の歩交換に応じ、西山女流名人が角で取ると、▲4六銀と上がって1筋の香取りを防ぎます。西山女流名人が角を6筋に引くと、福間女流四冠は▲3五銀直と前進して圧力を掛けます。西山女流名人が次の36手目を考慮中に昼休となりました。各3時間の持ち時間の内、残り時間は西山女流名人が2時間1分、福間女流四冠が1時間47分となっています。

福間女流四冠の角

昼休が明け、西山女流名人が△5四銀と立って4筋の歩に紐を付けると、福間女流四冠はようやく7筋の歩を突いて角の利きを香に当てます。西山女流名人が4筋の歩を突いて角の利きを止めると、この歩を角で取ると銀が抑え込まれそうなので、福間女流四冠は▲3三歩と飛頭を叩きます。西山女流名人は31分長考して桂で取り、福間女流四冠が▲4四銀と歩を取ると、△4五桂と跳ねて飛車をぶつけます。

福間女流四冠が攻勢

先手陣には飛車打ちの隙があるので、福間女流四冠は飛交換を避けて▲3三銀不成とぶつけ、西山女流名人が△3七歩と飛頭を叩いて桂交換してから△7二飛と逃がすと、▲4四銀成と銀に当てつつ飛車先を通します。西山女流名人は△6五銀とかわしますが、福間女流四冠は▲3五飛と浮いて銀を追います。形勢は福間女流四冠に傾き始めたようです。

西山女流名人の勝負手

西山女流名人は△5六銀と前進してかわし、福間女流四冠が▲5四成銀と角に当てると、△3四歩と飛頭を叩きます。福間女流四冠が飛車を8筋にかわすと、西山女流名人は△4六角と銀を食いちぎり、成銀取りに△6五銀打と勝負手を放ちます。

西山女流名人が飛車を捕獲

福間女流四冠が構わず21分の熟考で▲1一角成と香を取って馬を作ると、西山女流名人は飛車取りに△9三桂と跳ね、更に△7四桂と打って飛車を捕獲します。福間女流四冠が▲5五成銀と引くと、西山女流名人は飛桂交換してから、△4二飛と自陣で眠っていた飛車の活用を図ります。

西山女流名人の竜

福間女流四冠は▲4五香と打って後手の飛車を5筋に追い、更に歩の連打で押さえ込み、▲6五桂打と銀に当てます。西山女流名人は△5七飛と打ち込み、福間女流四冠が桂で銀を取ると、△6七飛成と竜を作って王手します。福間女流四冠は玉を引いてかわし、西山女流名人が銀で自陣に迫る桂を取ると、▲7八銀と打って竜を追ってから成銀と銀を交換します。形勢は再び混沌としてきたようです。

福間女流四冠が堅陣を構築

福間女流四冠は▲6六銀と打って竜を追い、▲4一香成と金を取り、竜飛両取りに▲3二角と打ちます。西山女流名人は竜と角の交換に応じ、福間女流四冠が▲2一馬と寄って飛車に当てると、△7四飛とかわして先手玉を睨みます。福間女流四冠が手堅く▲6七金~▲5八金右と自陣を固めると、西山女流名人も△7二金と自陣を引き締めてから、金取りに△5四香と打って馬の利きを止めます。

福間女流四冠が飛車を捕獲

福間女流四冠は歩で香の利きを止め、西山女流名人が王手香取りに△8七桂と打って香を取ると、▲7七桂とかわします。西山女流名人が銀取りに△6四香と打つと、福間女流四冠は桂で合い駒し、桂香交換の後▲5四馬と香を取ります。西山女流名人は△6三銀と埋めて馬に当てますが、福間女流四冠は飛車取りに▲7七香と打ち、銀交換の後に再度▲7七香と打って飛車を捕獲します。

盤石の寄せ

西山女流名人は飛車で香を食いちぎり、再度△6三銀と打って馬に当てますが、福間女流名人は構わず▲7三歩と金頭を叩きます。西山女流名人は△6二金とかわしますが、福間女流四冠は▲3二飛と打ち込んで詰めろを掛けます。金銀4枚に守られた先手玉への攻撃の糸口はなく、受けも難しくなった西山女流名人はここで投了を告げました。

まとめ

本局は双方とも囲いが完成する前に福間女流四冠が仕掛け、西山女流名人も強く応じて激しい戦いに突入しました。後手の飛車を押さえ込んだ福間女流四冠がペースを掴みかけましたが、西山女流名人は角切りからの勝負手で飛車を捕獲し、形勢を混沌とさせました。福間女流四冠は自陣を補強して堅陣を築き、後手の飛車を捕獲して寄せ切りました。
福間女流四冠は2勝0敗で奪取まであと1勝となり、「次の対局は少し空くので、しっかり修正して挑みたいと思います」と、気負いなく話しています。カド番に追い込まれた西山女流名人は「あまり星取りのことは気にせず、次局も課題を持って挑めればいいかと思っています」と話しており、次局からの巻き返しに期待したいと思います。

岡田美術館杯女流名人戦は、報知新聞社と日本将棋連盟が主催し、株式会社ユニバーサルエンターテインメントが特別協賛しています。棋譜等は下記サイトをご覧ください。


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