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「観る将」が観た第4期清麗戦第一局

7月8日に第4期大成建設杯清麗戦五番勝負第一局が、東京のホテルニューオータニで行われました。前期に久し振りのタイトル奪取を果たした加藤桃子清麗に挑むのは、前期のリベンジに燃える里見香奈女流四冠です。前日に行われた開幕式で、加藤清麗は「私は夏のタイトル戦が初めてなので、楽しみながらやっていきたい」、里見女流四冠は「今年も清麗戦のタイトル戦で指せることに喜びを感じております」と両者ともこの場に立てる喜びを話しています。

挑戦者は四間飛車

黒地に花柄の着物に紫の袴姿の里見女流四冠が入室し、間もなく薄いオレンジ色の着物に黄緑の袴姿の加藤清麗が入室します。振り駒で先手となった加藤清麗は、3手目に▲4八銀と上がる趣向を見せます。里見女流四冠は6手目に飛車を4筋に振り対抗形の将棋となりました。美濃囲いに構えた里見女流四冠は、飛車を3筋に振り直して先手からの仕掛けに備えますが、加藤清麗が▲4六歩と力を溜めると、更に2筋に振り直します。

清麗の研究手順

加藤清麗はわずか6分の考慮で3筋から仕掛け、5筋の歩も突き捨てて▲6六銀と出ます。あまり前例のない仕掛けでしたが、里見女流四冠もあまり時間を使わず△5六歩と伸ばすと、加藤清麗は4筋の歩もぶつけます。里見女流四冠が飛車を4筋に回して受けると、加藤清麗は▲5六飛と歩を払います。里見女流四冠が△6三金と高美濃に構えると、加藤清麗は▲5五銀~▲4四銀とぶつけます。

挑戦者の長考

銀交換してから角も交換し、加藤清麗は▲4五銀と打って飛車を引かせ、更に▲4三歩と飛頭を叩きます。里見女流四冠が△1二飛とかわすと、加藤清麗は2筋の歩を突き捨ててから▲5四銀と攻めをつなぎます。ここで里見女流四冠が長考に沈み、次の60手目を考慮中に昼休となりました。各4時間の持ち時間の内、残り時間は加藤清麗が3時間0分、里見女流四冠が2時間3分と1時間近く差が付いています。

激しい攻め合い

里見女流四冠は昼休を挟んで46分考え、飛車取りに△3八角と打ち込みます。加藤清麗は▲2六飛と回り、銀を取らせる代わりに金取りと飛成の両狙いで▲2四飛と出ます。里見女流四冠がどちらも受けずに△4六歩と垂らすと、加藤清麗は38分熟考し、▲9二歩から香を吊り上げて▲2一飛成と桂を取ります。里見女流四冠は△4七歩成と"と金"を作り、更に歩で先手の金を追います。加藤清麗が香取りに▲8六桂と打って桂香交換し、金取りに▲6三香と打ち込むと、里見女流四冠は△7一金とかわします。

清麗の攻めと挑戦者の受け

加藤清麗が62分の長考で▲6二角と打ち込むと、里見女流四冠も慎重に13分考え△6二同飛と取ります。加藤清麗は▲7一竜と金を食いちぎって後手玉を引っ張り出し、▲6二香成と王手で飛車を取り返します。加藤清麗は▲4二歩成と"と金"を作り、▲9二飛と打ち込んで挟撃体制を作りますが、里見女流四冠は手堅く自陣に銀を投じて守ります。加藤清麗は▲5二金から金銀交換して攻めをつなぎますが、里見女流四冠が△6三玉とかわすと切れ模様となってきました。

挑戦者の反撃

加藤清麗は金取りに▲4五銀と打ちますが、里見女流四冠は構わず△7六銀と反撃に転じます。加藤清麗は▲7七金とぶつけて守りますが、里見女流四冠は冷静に△7五香と攻め駒を足します。加藤清麗は▲9五飛成と竜を作って攻防に利かせますが、里見女流四冠は△7七銀成から清算し、△6五桂と打って先手の竜の横利きを止めつつ詰めろを掛けます。加藤清麗は自陣に銀を打って粘りますが、里見女流四冠は△4五金と先手の銀を取って自玉を安全にしてから、△6六桂と先手の歩頭に打って先手玉に迫り、そのまま即詰みに討ち取りました。

まとめ

本局は加藤清麗が研究と思われる仕掛けを見せましたが、里見女流四冠は適切に対処し決め手を与えませんでした。中盤の難所で加藤清麗が1時間を超える長考に沈みましたが、結果的に最善手を指すことができず、形勢は一気に里見女流四冠に傾いてしまったように思います。
後手番の里見女流四冠が勝って、清麗奪還に向け大きく前進しました。第二局に向け「次は先後が決まっているので、しっかり対策をして挑めたらと思います」と話しており、最近の充実ぶりからくる自信を感じさせます。
加藤清麗は持ち前の思い切りの良い攻撃を魅せましたが、あと一歩届かず無念の敗局となりました。第二局に向け「体調に気をつけながら、次に向かっていきたいと思います」と話していますので、巻き返しに期待したいと思います。

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