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第63期王位戦挑戦者決定リーグ 伊藤匠五段4回戦

4月22日、お~いお茶杯王位戦の挑戦者決定リーグ(王位リーグ)紅組で、伊藤匠五段と黒沢怜生六段との対局がありました。伊藤五段は、初参戦の王位リーグでここまで2勝1敗と紅組優勝の可能性を残しており、注目の一局となりました。


先手中飛車から激しい駒の取り合い

先手の黒沢六段は初手▲5六歩から中飛車に振ると、伊藤五段は2枚の銀を四段目に前進して迎え撃ちます。黒沢五段が▲5四歩~▲5四同飛と仕掛けると、伊藤五段は△5五歩と先手の飛車を閉じ込めます。盤面中央で激しく駒を取り合い、伊藤五段が飛角銀、黒沢六段が金銀銀を駒台に乗せます。黒沢六段は▲7三歩成から後手の飛車を攻め銀との交換に成功し▲7二飛と打ち込みますが、伊藤五段は△5二銀と王手を逃れてから△5七桂成から△8八飛と先手陣に攻め込みます。

伊藤五段の猛攻

黒沢六段は自陣に金銀を投じて守りを固めますが、伊藤五段は成桂を銀と交換すると銀を犠牲に△6八角成と金を取って馬を作ります。黒沢六段が飛馬両取りに▲7七銀と上がると、伊藤五段は馬で銀を食いちぎり△4三銀と自陣を固めます。伊藤五段は金取りに△4七銀と打って金と交換してから△5六角と再び先手陣に攻め掛かります。黒沢六段が攻防に▲6五角と打ってぶつけると、伊藤五段は△6七角成と馬を作ります。

黒沢六段の反撃

今度は黒沢六段が▲5四歩から後手陣に攻め掛かると、伊藤五段も自陣に金を投入して守ります。黒沢六段は銀取りに▲5五桂と打ち、銀を犠牲に▲4三桂成~▲3二成桂と後手陣の金銀を剥がしますが、伊藤五段は更に金で補強し後手陣は容易には崩れません。

ついに形勢傾く

黒沢六段が▲3九金と自陣に手を戻すと、伊藤五段は△4六桂から先手陣の銀を1枚剥がし△5八銀と攻撃を再開します。黒沢六段は馬取りに▲7九桂と打ちますが、伊藤五段は馬を取らせる代わりに先手陣の金2枚を剥がします。ここまで伊藤五段が押し気味ながら黒沢六段も決め手を与えず、形勢は両者の間を揺れていましたが、ここでついに伊藤五段に大きく振れました。

決め手の角

黒沢六段は自陣に角を引き付けて守りますが、伊藤五段は金で角を取ると飛車取りに△8三角と打ち込みます。この角は先手陣を直射しており、飛車を逃げる暇がない黒沢六段は攻防に▲6五角と打って粘りますが、伊藤五段は悠々と飛車をタダ取りします。黒沢六段は飛車取りに▲7九金と打ちますが、伊藤五段が手抜いて角取りに△6四歩と伸ばしたのを見て投了を告げました。

本局を制したのは

本局は若手同士らしく激しい手順に踏み込み、目まぐるしく駒を取り合う激戦となりましたが、伊藤五段が馬を見捨てて先手陣を崩して押し切りました。伊藤五段は3勝1敗となり、次の最終局で豊島九段を破ればプレーオフ以上が確定します。対局後に伊藤五段は「格上の先生に教われることを楽しみにして臨みたいと思います」と気負いなく話しています。もちろん容易に勝てる相手ではありませんが、もし挑戦権を獲得すれば、藤井王位と史上初の10代同士のタイトル戦が実現するため、注目の大一番になると思います。

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