「観る将」が観た第14期マイナビ女子オープン五番勝負第四局
5月25日に東京将棋会館で行われた、マイナビ女子オープン第四局を観た感想です。ここまで西山朋佳女王が2勝1敗と、防衛に王手を掛けた対局となりました。西山朋佳女王は華やかな赤い花をあしらった着物、伊藤沙恵女流三段は春らしい桃色に紫と白の花をあしらった着物で登場です。
本局は先手の伊藤女流三段が居飛車を採用し、西山女王の△5四歩を見ると角交換して11手目に▲5三角と敵陣に打ち込みました。西山女王は△5五角と打ちましたが、伊藤女流三段は桂を跳ねて角成を防ぎ、17手目に▲2六角成と馬を作ります。西山女王は飛車を寄って7筋突破を狙いますが、伊藤女流三段は21手目に少考で▲6五桂と銀取りに跳ねます。この手は相手の角成を誘う思い切った手で、いきなり激しい乱戦模様となりました。
西山女王は銀を避けてから金を上がって守りを固めましたが、伊藤女流三段も銀を上がって角成を防ぎます。少し穏やかな展開になりましたが、馬で盤面中央を制圧されている西山女王は、五段目まで跳ねてきた相手の桂を目標に攻めていきます。伊藤女流三段が自玉周りを整備し中央に厚みを作ると、西山女王は自玉を戦場から遠ざけ3筋に移動します。
伊藤女流三段は右桂も戦線に参加させ、▲3五歩から再び開戦します。桂交換から金を入手し角取りに打つと、防戦一方となった西山女王は飛車を5筋に回して反撃を狙います。しかし伊藤女流三段は金で角を取り桂で金を取り、着実に優勢を拡大します。西山女王は最後まで粘りを見せますが、伊藤女流三段も緩まず最後は敵陣に打った角を切って寄せ切りました。
本局は、カド番の伊藤女流三段が序盤に踏み込んだ▲6五桂を境に、剛腕の西山女王が完全に押さえ込まれる展開となりました。対局後、西山女王は「金を上がったところで素直に香を取って(角を成って)おけば互角以上はあったかなと思う」と悔やみましたが、伊藤女流三段としては、自陣にまったく手を付けられることなく押し切った快勝譜となりました。
この結果、本シリーズは2勝2敗のタイとなり、決着は最終第五局に持ち越しとなりました。西山女王が貫録を示して4連覇を達成するのか、伊藤女流三段が悲願の初タイトルを獲得するのか、6月1日に予定されている最終局が楽しみです。
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