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「観る将」が観た第16期マイナビ女子オープン五番勝負第二局

4月19日、マイナビ女子オープンの第二局が山梨県甲府市の常磐ホテルで行われました。第一局に先勝した西山朋佳女王が一気に防衛に王手を掛けるのか、甲斐智美女流五段が勝ってタイスコアに戻すのか、注目の対局となりました。

両者の対戦成績は西山女王の4勝3敗と拮抗しており、最近では昨年度末に女流王位リーグで甲斐女流五段が勝って紅組優勝を決めた後、本シリーズの第一局と女流順位戦では西山女王が勝っています。

前日の夕食会で、西山女王は「明日はいただいた最高の対局環境に自分の出来る限り応えられるように、気を引き締めて頑張りたいと思います」、甲斐女流五段は「第一局を終えて、西山女王の懐の深さや豪快さ、しなやかさといった、たくさんの魅力を感じました。第二局は自分の力を出しきって、精一杯対局に臨みたいと思います」と意気込みを話しています。

西山女王の三間飛車

甲斐女流五段が白地の着物に新緑の季節らしい深緑の袴で入室すると、すぐに西山女王が濃紺の地に花柄の華やかな着物に紺色の袴で入室します。先手の西山女王が初手に三間飛車に振ると、甲斐女流五段は飛車先の歩を突いて居飛車を宣言します。

西山女王の仕掛け

角道を開けたまま駒組みを進めていた西山女王は、甲斐女流五段が6筋の歩を突くと、6筋の歩を突き返して角道を止めます。甲斐女流五段が△7三桂と跳ねて急戦を匂わせると、西山女王は14分熟考して飛車を8筋に回して受けます。いったん駒組みに戻るかと思われましたが、西山女王は左銀を▲5七銀~▲4六銀と繰り出し、3筋の歩をぶつけて仕掛けます。

左高美濃対美濃囲い

甲斐女流五段が左高美濃を完成させると、西山女王も美濃囲いを完成します。甲斐女流五段が3筋の歩交換に応じると、1歩手にした西山女王は、自玉のコビンを開けたまま飛車を6筋に振り直します。次の42手目を甲斐女流五段が考慮中に昼休となりました。各3時間の持ち時間の内、残り時間は西山女王が2時間0分、甲斐女流五段が2時間1分となっています。

小刻みな飛車の動き

甲斐女流五段が昼休を挟む10分の考慮で△5三銀と上がると、西山女王は▲3七銀と引いて自玉のコビンを固めます。甲斐女流五段が△5一角~△4二銀と右銀を自玉に引き付けると、西山女王は7筋に飛車を寄せ、薄くなった後手の桂頭を狙います。甲斐女流五段が17分の熟考で構わず△3三銀右と上がると、西山女王は▲7五歩とぶつけます。

飛車と角の鍔迫り合い

甲斐女流五段は飛車を浮いて桂頭を守ってから歩交換に応じ、西山女王は角を引いて飛車で歩を取ってから六段目に引きます。甲斐女流五段が△4二角と上がって陣形を引き締めると、西山女王は▲7二歩と手裏剣を放って"と金"攻めを目指します。甲斐女流五段は6筋の歩を突き捨てて角道を通し、8筋の歩を交換してから△6五桂と跳ねて攻め合います。

甲斐女流五段の勝負手

西山女王が17分の熟考で▲6六飛と寄って催促すると、甲斐女流五段は5筋に桂を成り捨ててから飛車取りに△7五角と飛び出します。西山女王は▲6七飛と金に紐を付けながらかわし、甲斐女流五段が△8六角とぶつけると、▲7七桂と跳ねて角交換を拒否します。押さえ込まれそうな甲斐女流五段は、飛頭を歩で叩き金で取らせて重くしてから△7七角成と桂を食いちぎる勝負手を放ちます。

甲斐女流五段の竜

西山女王が慎重に10分考えて▲7七同角と取ると、甲斐女流五段は△8七飛成と竜を作ります。西山女王が飛車を4筋に回し、▲6七金と引いて角の利きを後手陣に通すと、甲斐女流五段は△8九竜と潜ってから△8六歩と垂らして"と金"攻めを図ります。

西山女王の反発

西山女王が4筋の歩を突き捨てて飛車を走ると、甲斐女流五段は△5五歩と突いて角の利きを止めつつ、飛車の8筋への転回を防ぎます。西山女王が▲4二歩と焦点の歩を放ち、金で取らせて後手陣に隙を作ってから▲5五飛と取ると、甲斐女流五段は角取りに△5四桂と打って飛成を防ぎます。西山女王が▲5七角とかわすと、甲斐女流五段は△4六歩と攻撃の拠点を作ってから△9九竜と香を取ります。

甲斐女流五段の"と金"攻め

駒割りは角と香の交換で先手の駒得ですが、甲斐女流五段が先手陣にも嫌味を付けて差を詰めているようです。西山女王が飛車を6筋に寄せて▲6一飛成と竜を作ると、甲斐女流五段は△4一香と受けたところで残り時間が10分を切り、△7八"と"~△6七歩と2枚目の"と金"作りを目指します。

西山女王の端攻め

西山女王は1筋から端攻めし、香を吊り上げて銀香両取りに▲2五桂と打ち、桂香交換して▲1八香と二段ロケットを設置します。甲斐女流五段は△6八歩成と2枚目の"と金"を作って金に当てますが、西山女王は構わず▲1五香と走ります。1分将棋に突入した甲斐女流五段は銀香交換を甘受しますが、西山女王は2枚目の香も発射して後手陣の桂を剥がし、▲2五桂と打って後手玉の上部を押さえます。

西山女王の猛攻

甲斐女流五段が△2一桂と合わせて粘ると、西山女王は▲3三歩と叩いて銀を吊り上げ、残り時間が10分を切ったところで▲5二角と打ち側面からも攻め掛かります。甲斐女流五段が△5八"と"と金を取って下駄を預けると、西山女王は▲4三角成と金を剥がし、慎重に4分程考えて▲1三金から寄せに入ります。甲斐女流五段は淡々と数手指し続けましたが、西山女王が▲3三馬と銀を食いちぎり、▲4五桂と金取りに打ったところで静かに投了を告げました。

まとめ

本局は3筋と7筋から揺さぶりをかけた西山女王が後手の飛車角を押さえ込みにいきましたが、甲斐女流五段は角を切って竜を作る勝負手を放って攻め込みました。4筋から反発した西山女王は1筋からの端攻めで突破し、ひたひたと迫る"と金"に美濃囲いを崩される前に寄せ切る快勝となりました。
次局は5月28日と1か月以上先に予定されており、連勝して6連覇まであと1勝となった西山女王は「ここまで期間が空くのは珍しいので、その間にできることはしっかりやって挑みたいです」、カド番となった甲斐女流五段は「しばらく時間が空くので、しっかり準備して臨みたいです」と話しています。両者とも気持ちを新たにして、熱戦を期待したいと思います。

マイナビ女子オープンは、株式会社マイナビと日本将棋連盟が主催しています。棋譜は下記公式サイトをご確認ください。


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