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「観る将」が観た第33期女流王位戦五番勝負第二局

5月11日に札幌市の京王プラザホテル札幌で、女流王位戦第二局が行われました。第一局を落とした里見香奈女流王位が巻き返すのか、西山朋佳女流二冠がタイトル奪取に王手を掛けるのか、注目の一局となりました。前日のインタビューで、里見女流王位は「女流王位戦は持ち時間が最長なので、ゆっくり落ち着いて自分の力を出し切りたい」、西山女流二冠は「早くも佳境かなと思っていますが、いつも通り指せるよう心掛けたい」と抱負を語っています。

戦型は相振り飛車

西山女流二冠が黒いワンピースに袖の短い白いジャケットで入室すると、すぐに里見女流王位が藤色のシャツに薄いグレーのスーツで入室します。
先手の里見女流王位が3手目に中飛車に振り、西山女流王位も4手目に三間飛車に振ります。西山女流二冠が2筋の位を取り向かい飛車に振り直すと、里見女流王位は5筋と8筋の位を取ります。西山女流二冠が飛先の歩を交換すると、里見女流王位も向かい飛車に振り直します。

主導権争い

西山女流二冠が再度飛先の歩を合わせ銀取りに△2六飛と出ると、里見女流王位は力強く▲6五銀と前進します。西山女流二冠は飛車を四段目に引き、3,4筋の位を取って飛車の横利きを遠く8筋まで通します。里見女流王位は15分考えて一度出た銀を▲5六銀と引き、西山女流二冠が6筋の歩を突くと8筋の飛先の歩を交換して五段目に引きます。西山女流二冠が、次の54手目を13分考えたところで昼休となりました。各4時間の持ち時間の内、残り時間は里見女流王位が3時間1分、西山女流二冠が2時間27分となっています。

女流王位の仕掛け

西山女流二冠は、昼休を挟み15分の考慮で△7四歩と玉頭の歩を突きます。里見女流王位が22分考えて▲7五歩と反発すると、西山女流二冠は金を上がって歩を支えます。里見女流王位はここで29分の熟考し、▲9五歩と仕掛けます。西山女流二冠が△9五同歩と応じると、里見女流王位は飛車を1つ引いて桂の跳ね場所を作ってから▲4五銀と右辺に戦火を拡げます。西山女流二冠は△4六歩と打って先手の角を引かせると、桂取りに△5五角と飛び出します。里見女流王位が歩で桂を支えてから4筋の歩を取ると、西山女流二冠もいったん△3三角と引いて矛を収めます。

挑戦者の反発

里見女流王位が▲4七銀と引いて自陣を固めると、西山女流二冠はわずか2分の考慮で飛車を5筋に回します。里見女流王位が▲7五角と飛び出して歩を取ると、西山女流二冠は強く△7四金と出て追い返し、△4二角と引いて歩を隔てて先手の飛車を睨みます。里見女流王位は▲4五歩と伸ばして飛車を2筋に転回しますが、西山女流二冠は△3四銀~△2五歩と追い返します。お互いに突破口を探りますが、両者とも隙を見せずにバランスを保ちます。

双方の持ち時間が1時間を切る

西山女流二冠が△6五歩と突いて飛車の横利きで金に紐を付けると、互いに飛頭を歩で叩き合います。里見女流王位の残り時間が1時間を切り▲3六歩と玉頭から反撃を見せると、西山女流二冠も14分考えて残り時間が1時間を切り△2四角と応じます。里見女流王位が4筋の歩を成り捨てて6筋の歩を伸ばすと、西山女流二冠は△8三玉と上がって先手の飛車に圧力を掛けます。100手を超えましたがまだ本格的な戦いは始まらず、第一局に続いて大根戦となりそうな雰囲気が漂います。

大駒を取り合い開戦

里見女流王位が▲3七銀と上がって自陣を引き締めると、西山女流二冠も左銀を前進させて先手の玉頭で小競り合いとなります。里見女流王位は▲4六銀とぶつけますが、西山女流二冠は銀交換を避け△4四銀と引きます。里見女流王位が6筋の歩を伸ばしてからもう1枚の銀を▲4五銀とぶつけますが、西山女流二冠はここでも銀交換を拒否して△5三銀と引きます。西山女流二冠が形よく引いた銀で6筋の歩を払うと、里見女流王位は更に銀を前進して角をぶつけます。西山女流二冠は構わず飛車取りに△8五歩と伸ばし、里見女流王位が角を取って馬を作る間に飛車を取ります。

怒涛の寄せ

駒割りは飛車角交換で互角ですが、馬を作った里見女流王位が手番を握り、▲6四歩と垂らして攻め掛かります。西山女流二冠は駒損を辞さず、"と金"を作って入玉を目指します。里見女流王位が歩で後手陣を崩して飛車取りに▲4二角と打ち込むと、西山女流二冠は馬取りに自陣飛車を打って飛車と馬を取り合います。里見女流王位は▲8一飛と好所に打ち込み、竜を作って銀桂を奪うと金を食いちぎって決めにいきます。後手玉には即詰みが生じており、里見女流王位が▲4二馬から連続王手で迫ると、161手目の王手を見た西山女流二冠は投了を告げました。

第二局の結果

本局はお互いに相手の狙いを消して隙を作らず、ジリジリした中盤戦が長く続く戦いとなりました。里見女流王位は自陣の2枚銀を積極的に前進させ、飛車取りに構わず角を取り馬を作って手番を握ると、まさに出雲のイナズマ一閃という鮮やかな寄せを魅せました。
これで本シリーズは1勝1敗となり、並行して行われているマイナビ女子オープンと同様タイスコアとなりました。女流棋界を代表する2人による春の十番勝負は、両者ともに一歩も引かない好勝負になっています。次局以降も熱戦になることを楽しみにしたいと思います。

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