「観る将」が観た第4回ABEMAトーナメント予選Cリーグ第一試合
5月22日にABEMAトーナメント予選Cリーグ第一試合が放映されました。チーム豊島「スリースタービクトリーズ」対チーム木村「エンジェル」の顔合わせとなっています。ABEMAで公開されているチーム映像によると、チーム豊島は大橋六段発案のチーム名、チーム木村は池永四段にちなんだチーム名のようです。
■一局目 大橋六段vs木村九段
チーム木村は、初戦からリーダーの登場です。赤いスーツを身にまとった大橋六段は、先手番で角換わりに誘導し、いきなり相手に馬を作らせる激しい手順を選択します。お互いに居玉のまま5筋で目まぐるしい攻防となり、木村九段が飛車を奪って優勢となりました。簡単には負けられない大橋六段も驚異的な粘りを魅せましたが、最後は木村九段が即詰みに討ち取りました。
■二局目 豊島竜王vs池永四段
初戦を落としたチーム豊島は、流れを取り戻しにリーダー登場です。初登場の池永四段は先手番で矢倉に誘導し、豊島竜王も受けて立ち飛車を7筋に寄せて歩を交換します。豊島竜王が攻め込み優勢になったかと見えましたが、池永四段は丁寧な受けで決め手を与えません。池永四段は相手の桂を奪って▲1五桂から反撃し、豊島竜王を受けなしに追い込みます。豊島竜王は竜を作って反撃しますが、池永四段が落ち着いて逃げ切り殊勲の勝ち星を挙げました。
■三局目 佐々木(大)五段vs木村九段
2連勝のチーム木村は佐々木(勇)七段を先手番で使うため、後手番の本局はリーダーが2回目の登場です。先手の佐々木(大)五段は得意の相掛かりに誘導します。木村九段は9筋から仕掛けて馬を作り、更に馬を切って竜を作り攻め込みます。佐々木(大)五段も1筋から反撃し、▲2六銀とタダ捨ての勝負手を放ちましたが、木村九段は腰を落ち着けて入玉を果たし逃げ切りました。
■四局目 大橋六段vs佐々木(勇)七段
3連勝のチーム木村は、満を持して佐々木(勇)七段が初登場です。後手の大橋六段は中飛車に振り、美濃囲いに構えます。大橋六段が先に中央から仕掛けましたが、佐々木(勇)七段は2筋から反撃し銀桂交換で駒得します。更に飛車を奪って竜を作り、優勢の局面の作ります。大橋六段も△6七桂から反撃し、あと1歩のところまで攻め込みますが、佐々木(勇)七段が正確に受け切り、最後は即詰みに討ち取りました。
■五局目 佐々木(大)五段vs池永四段
早くもチーム木村が王手を掛けたところで、若手同士の対決が実現しました。先手の佐々木(大)五段が角換わりに誘導し、早繰り銀から銀交換に成功します。お互いに研究範囲か持ち時間を6分以上に増やしています。池永四段は自陣に銀を打って手堅く守り、△4五角から攻勢を掛けます。佐々木(大)五段は▲4六金と強気の受けから、思い切りよく▲3四桂~▲2四桂と相手陣に迫ります。池永四段も粘りを見せましたが、時間を残していた佐々木(大)五段が腰を落ち着けて寄せ切りました。
■六局目 豊島竜王vs佐々木(勇)七段
前回「GOOD BOYS」でチームメイトだった両者の対決が実現しました。先手の佐々木(勇)七段は角換わりに誘導し腰掛け銀に構えます。豊島竜王は4筋に飛車を回しましたが、佐々木(勇)七段は構わず4筋から仕掛けます。難しい中盤戦になり、一進一退の攻防となりましたが、豊島竜王が辛抱の粘りから△3六歩~△2五桂で反撃に転じ、相手の攻撃を封じて勝利を掴みました。
■七局目 佐々木(大)五段vs木村九段
チーム豊島は、反撃ののろしを上げた佐々木(大)五段が三局目のリベンジを狙います。先手の佐々木(大)五段は五局目と同じ角換わりを選択し、早繰り銀から銀交換に成功します。木村九段は△4三角と自陣に打ち、8七の地点を攻めます。佐々木(大)五段は自陣に銀を打って凌ぐと、▲3三桂成の妙手を放ってリードを奪います。負けられない両者の執念を感じる大熱戦となりましたが、木村九段は持ち前の粘り強い受けを魅せ、入玉を果たして逃げ切りました。
【チーム木村 5勝 vs チーム豊島 2勝】
チーム木村が、リーダー自ら一局目と三局目に勝って流れを引き寄せ、2敗して嫌な空気になりそうだった七局目でもチームの勝利を決める白星を挙げました。初出場で注目された池永四段も豊島竜王を破る金星を挙げ、期待以上の活躍だったと思います。
チーム豊島は、やはり二局目にリーダーが敗れたのが痛く、遠山六段が解説していたとおりチームメンバーの指し手に余裕がなくなってしまったのかもしれません。しかし佐々木(大)五段が五局目に積極的な指し手で一矢報いた将棋は、予選突破に望みをつなぐ貴重な白星だったと思います。
※池永五段は4月に昇段していますが、収録時の段位(四段)で記述しています。