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「観る将」が観た第4回ABEMAトーナメント予選Dリーグ第二試合

6月19日にABEMAトーナメント予選Dリーグ第二試合が放映されました。チーム永瀬「川崎家」対チーム天彦「にゃんぱす~」の顔合わせとなっています。チーム天彦は第一試合で敗れており、予選突破に向けこの試合での勝利が絶対条件となっています。

■一局目 永瀬王座vs鈴木九段
チーム永瀬は初戦からリーダー投入です。先手の鈴木九段は四間飛車に振りました。永瀬王座が穴熊に囲うのを見て鈴木九段は高美濃に構えます。鈴木九段が銀冠に組み替えようとして金銀の連結が切れた瞬間、永瀬王座は6筋から仕掛けます。永瀬王座が優勢になったかと思われましたが、鈴木九段も熟考の上▲5二銀と打ち激しく駒を取り合う中盤戦となりました。お互いに竜を作り合いましたが、鈴木九段は攻め駒が足りず攻め切れません。永瀬王座はじっくり受けてから端攻めを決行し寄せ切りました。

■二局目 屋敷九段vs古賀四段
チーム永瀬は注目の屋敷九段が初登場です。後手の古賀四段がいきなり9筋の位を取り、両者ともに雁木に組みます。お互いに飛車先の歩を交換し、じっくりした駒組みが続きます。
古賀四段は△8四角と覗いてから6筋の歩を伸ばし金桂交換の駒得に成功します。屋敷九段は敵陣に▲2二歩と手裏剣を飛ばし"と金"を作ります。古賀四段は飛車取りを放置して角を取り、敵陣に打ち込んで馬を作ります。最後は△5七桂成が決め手となり、古賀四段が嬉しい初勝利を挙げました。

■三局目 増田六段vs古賀四段
チーム天彦は大人の事情(?)で古賀四段の連投です。先手の古賀四段が矢倉に誘導し早囲いから土居矢倉に組み、増田六段は銀矢倉に組みます。古賀四段が4筋から仕掛け、桂を跳ねてから飛車先の歩を交換すると、増田六段は△2三金と上がって飛車を追い返します。古賀四段は6-7筋から仕掛けて▲6六金と力強い受けを見せます。増田六段は9筋から反発し、飛車を切って守りの金を剥がします。古賀四段も竜を切って▲5三金と打った手から詰めろを掛けましたが、増田六段が△8八角から鮮やかに即詰みに討ち取りました。

■四局目 永瀬王座vs佐藤(天)九段
チーム天彦が満を持してリーダーを投入し、リーダー同士の対決となりました。後手の佐藤九段は9筋の位を取り、少し考えてから三間飛車に構えます。永瀬王座が穴熊に囲うのを見て、佐藤九段も穴熊に囲います。佐藤九段が先に攻め込みますが、永瀬王座は手堅く受けに回ります。佐藤九段が攻めあぐねると、永瀬王座は駒得を活かして反撃に転じます。佐藤九段は堪らず竜を引いて粘りますが、永瀬王座は落ち着いて相手の竜を封印し、自陣を固めて逃げ切りました。

■五局目 屋敷九段vs鈴木九段
先手の鈴木九段は意表を突いて居飛車を採用し雁木に組みます。屋敷九段は片矢倉に組み、飛先の歩を交換します。鈴木九段が4筋から仕掛けますが、屋敷九段は3筋から反発します。難しい中盤戦となり、屋敷九段が9筋から仕掛けると鈴木九段は2筋から反発し、▲7四歩から角銀交換に成功します。屋敷九段は△6五桂から歩で相手陣を攻略し、鈴木九段は上部に脱出して入玉を目指します。お互いの玉が一路隔てて向かい合う形となりましたが、屋敷九段が仕留めて初勝利を挙げました。

■六局目 増田六段vs佐藤(天)九段
後がなくなったチーム天彦はリーダーの登場で、前回3局戦った因縁の対決が実現です。増田六段の誘導で相掛かりの将棋となりました。佐藤九段が先に飛先の歩を交換し四段目に引くと、増田六段はひねり飛車風の陣形を築きます。佐藤九段が9筋から仕掛けると、増田六段は中央から圧力を掛け次第に主導権を握ります。増田六段の勝勢かと思われましたが、佐藤九段は竜を作って相手玉の逃げ道を封鎖し、どちらが勝つかわからない熱戦になりました。お互いに残り時間がわずかとなり、時計を叩き合う見応えのある将棋となりましたが、最後は増田六段が即詰みに討ち取りました。

【チーム永瀬 5勝 vs チーム天彦 1勝】
前回の優勝メンバー2人を擁するチーム永瀬が、危なげなく勝ち星を重ねました。初参加の屋敷九段もフィッシャールールに慌てることなく1勝し、このチームが間違いなく優勝候補の一角であることを感じさせました。6局目が決着した瞬間、屋敷九段が「凄い将棋でしたね」とつぶやいた時、永瀬王座は冷静に「勝つことが大事ですから」と言い放ち、勝負に徹する執念を印象付けました。
チーム天彦は、残念ながら予選敗退が決まってしまいました。リーダーの佐藤(天)九段は、5局登場していずれも熱戦を演じましたが、1勝4敗と結果を残せなかったことでチームを波に乗せることができませんでした。鈴木九段がチームの明るい雰囲気作りに努め、新鋭の古賀四段も伸び伸びした将棋を指している姿が印象的でした。

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