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「観る将」が観た第18回白瀧あゆみ杯決勝~16歳同士の決戦~

白瀧あゆみ杯争奪新人登竜門戦は、多くの棋士・女流棋士に着物を提供している白瀧呉服店が後援する、若手女流棋士を中心とするトーナメント戦です。非公式戦ですが、優勝者には着物一式が贈られる、女流棋士にとっては憧れの大会でもあります。過去の優勝者には、奨励会時代の西山朋佳女流三冠や伊藤沙恵女流四段も名前を連ねています。

今回の決勝は、ともに2022年プロ入りの16歳、木村朱里女流初段と鎌田美礼女流2級というフレッシュな顔合わせとなり、7月22日にYouTubeで配信されました。木村女流初段は濃紺の着物、鎌田女流2級は藤色の着物に身を包み対局に臨んでいます。決勝の持ち時間は各60分、使い切ったら一手60秒未満となっています。


木村女流初段の四間飛車

振り駒で先手となった木村女流初段が四間飛車に振り美濃囲いに構えると、鎌田女流2級は6筋の歩をぶつけます。両者とも歩がぶつかったまま間合いを測った後、鎌田女流2級が8筋の歩を突き捨ててから6筋の歩を交換し、更に△6五歩と銀頭を叩くと、木村女流初段は銀桂交換に応じて飛車を走ります。

鎌田女流2級の好所の角

鎌田女流2級は角を交換して7筋の桂取りと1筋を睨む好所に△4四角と打ち直し、木村女流初段が5筋の歩をぶつけて桂を守ると、1筋の歩を突き捨ててから8筋の飛車を走って歩を補充します。お互いに竜を作り、木村女流初段が5筋の歩を取り込むと、鎌田女流2級は銀を6筋に引いてかわします。木村女流初段が更に▲6三歩と銀頭を叩くと、鎌田女流2級は構わず△1七歩と垂らします。

木村女流初段は玉を上部に脱出

木村女流初段は角取りに▲5六桂と打ち、鎌田女流2級が△7七角成と桂を取って馬を作ると、6筋の銀を取って"と金"を作ります。鎌田女流2級は△1六桂~△2八銀と連続王手し、木村女流初段が▲1六玉と上部に脱出すると、△3三馬と引き付けます。木村女流初段は▲2六玉と寄って香の利きを通し、鎌田女流2級が△1九銀不成と根元の香を取ると、▲1六銀と打って玉頭を補強します。

木村女流初段の反撃

鎌田女流2級は△2四香と王手し、木村女流初段が桂で合い駒すると、△2八銀不成と引いて先手玉の退路を狭めます。木村女流初段は▲3五歩とぶつけて玉の退路を作り、鎌田女流2級が△2五香と桂を取り、△2四馬と上部を押さえると、▲3三香と王手して桂交換し、△5二竜と金を取って王手し、△5三角と打って後手玉を攻めます。

鎌田女流2級が桂馬を3連打

既に両者とも秒読みに追われる中、鎌田女流2級が▲3五馬とぶつけて角と交換すると、木村女流初段は▲4四桂打と王手し、金を斜め上に誘ってから▲4一角と王手し、▲2三角成と馬を作ります。鎌田女流2級は▲2二香と馬と玉を田楽刺しにし、木村女流初段が馬で香を食いちぎると、△3四桂打~△2三桂~△3三桂と珍しい持ち駒の桂3枚を連打して先手玉に迫ります。

木村女流初段の17連続王手

木村女流初段が▲2五香と打って桂で取らせ、空いたスペースに▲3三金と打って王手し、▲2三銀成と後手玉を追い詰めると、鎌田女流2級は△2四歩と打って桂を支えます。後手玉には見つけ辛い即詰みが生じたようですが、木村女流初段は▲2二成銀から17連続王手で迫り、詰めろを掛けて下駄を預けます。豊富な持ち駒を得た鎌田女流2級は詰めろ逃れの詰めろに△7七角と打ち、△1七桂成から即詰みに討ち取りました。

まとめ

本局は鎌田女流2級が仕掛け、左右を睨む角を放って攻め掛かりました。木村女流初段は玉を上部に脱出し、お互いに秒読みに追われる中で形勢が二転三転する大激戦となりましたが、執念の連続王手を凌いだ鎌田女流2級が即詰みに討ち取りました。
優勝した鎌田女流2級は、「白瀧あゆみ杯で一番指したかった相手と指せてすごく楽しかったです」と初々しく話しました。年下の女流棋士も続々とデビューしていますが、西山女流三冠が期待する若手女流3人の内の1人に挙げており、これを機に公式戦でも躍進することを楽しみにしたいと思います。
悔しさをにじませた木村女流初段でしたが、既に2022年度の勝率ランキング1位に輝くなど頭角を現わしており、更なる飛躍を期待したいと思います。

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