見出し画像

電竜戦長時間マッチ「水匠 vs dlshogi」

8月15日に電竜戦長時間マッチ「水匠 vs dlshogi」が行われました。「水匠」はおもにCPUを使って動く従来(NNUE)型の将棋AI、「dlshogi」はおもにGPUを使って動くディープラーニング型の将棋AIで、ともにトップクラスのレーティングを誇る最高峰の将棋AIだそうです。現時点での最強の将棋AIを決めようという戦いです。

一局目は「dlshogi」の先手で、矢倉急戦から横歩取り調の将棋となりましたが、「水匠」の探索部のバグの影響で「dlshogi」が勝ちました。二局目は「水匠」の先手で、角換わりで後手が早繰り銀から仕掛ける将棋となり、中盤まで互角の形勢でしたが終盤一気に抜け出した「水匠」が勝ちました。当初は両者とも先手と後手で1局ずつの予定でしたが、一局目のトラブルに配慮して「dlshogi」の先手で三局目が行われ、角換わり腰掛け銀で中盤から徐々にリードを拡げた「dlshogi」が勝ちました。三局とも先手番が勝ち、痛み分けというところでしょうか。

私はあまりよく知らなかったのですが、ディープラーニング型は序中盤の大局観に優れており、特に先手番の「dlshogi」は相当強いようです。昨年、藤井聡太王位・棋聖がRyzen Threadripper 3990Xという個人で保有できる最高レベルのCPUを購入したことが話題になりましたが、叡王戦第一局で指した▲2四歩が従来型では評価が低くディープラーニング型では評価が高い手で、ネットでは既に導入したディープラーニング型による研究成果ではないかという噂も流れていました。また下記記事によれば、渡辺名人も7月に新しいPCを購入し、「水匠」と「dlshogi」を導入したようです。

ゲストに渡辺明名人、解説に阿部健治郎七段と佐々木勇気七段を迎えて様々な話をしていましたが、どんどん進化する将棋AIをトッププロが研究に取り入れざるを得ない状況を、あらためて感じることができました。将棋AI同士の対局には、プロも気づきにくい妙手がたくさん飛び出しました。将棋AIがプロの序盤戦に大きな影響を与えていることも、驚異的なことと思います。しかし観る将の立場としては、いったんリードしてしまえば滅多に逆転が起こらない将棋AI同士の対局は味気なく感じます。プロ棋士の先生方が、苦労しながら将棋AIと向き合い、人間同士ならではの盤上の物語を紡ぎ続けていることの意味を考えさせられるイベントだったように思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?