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第5回ABEMAトーナメント 本戦1回戦第一試合

7月30日に、ABEMAトーナメントの本戦トーナメントが開幕し、1回戦第一試合が行われました。本戦からは生放送となっています。Cリーグ2位のチーム豊島「TMF」とEリーグ2位のエントリーチーム「下剋上」の顔合わせとなっています。

一局目:丸山忠久九段 vs 冨田誠也四段

エントリーチームは「チームに勢いをもたらす将棋を」と宣言して冨田四段が出陣します。後手の冨田四段が四間飛車に振り9筋の位を取ると、丸山九段は穴熊を目指します。冨田四段が早めに△7三桂と跳ねると、丸山九段は▲8六角と覗いて後手の駒組みを牽制します。丸山九段が飛車を6筋に回すと、冨田四段は△2四歩とぶつけ飛車を2筋に回します。丸山九段は6筋の歩をぶつけて後手の角の利きを止め、銀を前進して▲6三歩成と飛び込みます。丸山九段は銀交換の後、飛桂両取りに▲3二銀と打って桂を取り、銀香両取りに▲8三桂と打って香と交換します。丸山九段は▲6六香と打って後手の金を1枚剥がしますが、冨田四段も△6六桂と打って先手の金を1枚剥がします。丸山九段は角取りに▲5四金と打ちますが、冨田四段は構わず△6六香~△6七銀と先手陣に攻め込みます。丸山九段は時間に追われながら▲5四角と打って攻め合いますが、1分以上残していた冨田四段は少し時間を使って△7七香と詰めろを掛け、そのまま即詰みに討ち取りました。
チーム豊島:0勝 - エントリーチーム:1勝

二局目:深浦康市九段 vs 黒田尭之五段

初戦を落としたチーム豊島ですが、和やかなムードの作戦会議で深浦九段を送り出し、エントリーチームも「大丈夫ですよ黒ちゃんなら、まあでも気楽に」と緊張をほぐして黒田五段を送り出します。先手の黒田五段が三間飛車に振り美濃囲いに構えると、深浦九段は左美濃から銀冠に組み替えます。黒田五段は緊張感からか水を飲むなどして1分程使い飛先の歩を伸ばしますが、深浦九段は飛車を7筋に寄せて受けます。深浦九段は桂取りに△8四歩と突いて得た桂を△8四桂と打ちますが、黒田五段は▲5五角と飛び出し6筋の歩を伸ばして攻め合います。深浦九段が2枚の"と金"を作って先手陣に攻め込むと、時間に追われた黒田五段も▲3二桂成から後手玉に迫ります。1分以上残していた深浦九段は2-3度頬を叩いて気合を入れ、先手からの連続王手を凌ぎます。黒田五段の王手が途切れると、深浦九段は肩を回してから△3六香と王手し、そのまま即詰みに討ち取りました。
チーム豊島:1勝 - エントリーチーム:1勝

三局目:豊島将之九段 vs 折田翔吾四段

チーム豊島は「豊島さんらしく」とリーダーを送り出し、エントリーチームは自ら「めっちゃ楽しみ」と言ってリーダーが出陣します。後手の折田四段が角道を止めて雁木に構えると、豊島九段は左美濃に構えて▲4五歩と仕掛けます。折田四段は△6四角と飛び出して飛車に当てますが、豊島九段はほとんどノータイムで飛車を4筋にかわします。お互いに角で香を取って馬を作る激しい将棋となりましたが、折田四段は6分30秒近くまで持ち時間を増やしています。折田四段が香を犠牲に飛車を吊り上げると、豊島九段は飛車で歩を食いちぎって馬で金を取ります。折田四段が△6四桂と打って先手陣を狙うと、豊島九段は▲8八桂と打って受けます。折田四段が初めて手を止め自陣に手を戻すと、豊島九段は銀取りに▲4八香と打って攻め続けます。折田四段は何度も首をひねって2分程使い△4三香と受けますが、豊島九段は▲4二歩と垂らして"と金"攻めを狙います。折田四段は更に2分程使って銀取りに△2七飛と打ち込みますが、豊島九段は構わず後手陣の金を剥がして馬で香を取ります。豊島九段は8筋から先手の飛車を攻めて挟撃態勢を作ると、折田四段の反撃をかわして即詰みに討ち取りました。
チーム豊島:2勝 - エントリーチーム:1勝

四局目:丸山忠久九段 vs 黒田尭之五段

チーム豊島は連投を打診されたリーダーが「お腹がすいているので」と丸山九段を送り出し、エントリーチームは譲り合いながら黒田五段を送り出します。先手の黒田五段が三間飛車に振り美濃囲いに構えると、丸山九段は穴熊を目指します。黒田五段が向かい飛車に振り直して飛車をぶつけると、丸山九段は1分程使って△8五歩と打って交換を拒否します。お互いに陣形の整備に戻りましたが、黒田五段が▲8五桂とぶつけると、丸山九段は5-6筋の歩を突き捨て△5五銀と前進します。黒田五段が飛車を5筋に回し、桂を交換してから1筋を端攻めし、桂を跳ねさせてから▲2六桂と打つと、丸山九段は落ち着いて△5六歩と先手の飛車を押さえ込みます。黒田五段は金銀両取りに▲3四桂と跳ねますが、丸山九段は構わず△4四桂と打って攻め合います。黒田五段は▲2六歩と突いて玉の退路を作り、再び1筋から殺到します。時間に追われた丸山九段は攻め合いますが、1分以上残していた黒田五段は慎重にいったん馬を引いて飛車と交換し、王手角取りに▲5一飛と打って寄せ切りました。
チーム豊島:2勝 - エントリーチーム:2勝

五局目:豊島将之九段 vs 折田翔吾四段

チーム豊島は順番を変えましたが、三局目と先後も同じ顔合わせとなりました。前局と同様、先手の豊島九段が左美濃、折田四段は雁木に構えます。豊島九段が▲4六銀と出ると、折田四段は2分程手を止め△4二角と引きます。豊島九段が銀を前進させると、折田四段は飛先の歩を交換して△8六歩と垂らします。豊島九段も▲8四歩と垂らしますが、折田四段は強く同飛と取ります。豊島九段は飛車取りに▲6六角と出ますが、折田四段は銀に当てて△8五飛と出ます。豊島九段は▲4四銀とぶつけますが、折田四段は△8七歩成と"と金"を作り、銀と交換して竜を作ります。豊島九段は歩で竜を追い返し▲1一角成と香を取って馬を作り、折田四段が桂をかわすと▲4四銀と追撃します。豊島九段は後手陣の金銀を剥がして駒得となりますが、折田四段は△8三香と打って先手陣の左辺を壁にしてから△3五竜と回って反撃します。豊島九段は丁寧に受けて竜を追い返すと"と金"を作って竜取りに▲4二"と"と進めます。折田四段は竜を見捨てて先手玉に攻め掛かりましたが届かず、無念の投了となりました。
チーム豊島:3勝 - エントリーチーム:2勝

六局目:豊島将之九段 vs 冨田誠也四段

チーム豊島は、深浦九段の「もっと良いところ見たいです」という推しでリーダーが連投し、エントリーチームは「豊島さんとやりたかった」と言う冨田四段が出陣します。先手の冨田四段が中飛車に振り穴熊を目指すと、豊島九段は左美濃に構えてから飛車を7筋に寄せ、飛先の歩を交換します。冨田四段は4筋と3筋の歩を突き捨てて▲4五銀と出ると、豊島九段は角取りに△6五銀と出て飛車の横利きを通します。角交換の後、銀交換となり、冨田四段が飛車取りに▲8三角と打って▲5六角成と馬を引き付けると、豊島九段は△5五銀と打って馬を引かせて△4六歩と垂らします。豊島九段は△4七角~6五角成と馬を作りますが、冨田四段は飛車取りに▲5三銀と打って先手陣の金を剥がして▲4二金と打ちます。豊島九段が△4三銀と打って馬を追い返して△6九飛成と竜を作ると、冨田四段は▲4九飛と引いて竜と交換します。冨田四段が▲8二飛と打ち込み▲7四馬と後手陣を睨むと、豊島九段は構わず△3六桂と打って攻め合います。冨田四段が激しく後手陣を攻め立てますが、豊島九段は金銀を自陣に投じて守りを固めます。両者とも時間に追われながら、どちらが勝つのかわからない大激戦となりましたが、最後は豊島九段が冨田四段の猛攻をかわして即詰みに討ち取りました。
チーム豊島:4勝 - エントリーチーム:2勝

七局目:深浦康市九段 vs 黒田尭之五段

リーダーの連勝で勢いに乗るチーム豊島は「そろそろ私が」と深浦九段が出陣し、二局目と同じ顔合わせになりました。後手の黒田五段が三間飛車に振り、深浦九段は穴熊を目指します。黒田五段も少し考えて穴熊を選択し、両者ともに浮き飛車に構えます。深浦九段が5筋から仕掛けると、黒田五段は飛車の横利きで受けます。深浦九段が▲5五銀とぶつけると、黒田五段は△6五銀とかわします。じっくりした駒組みに戻りましたが、黒田五段は△5八歩と垂らして"と金"作りを狙い、深浦九段が角を引いて受けると、銀をぶつけて交換します。深浦九段が飛車取りに▲4三銀と打つと、黒田五段も飛車取りに△4四角と出て、お互いに飛車を引きます。深浦九段が角取りに▲5四銀成とすると、黒田五段は構わず飛角に当てて△3七歩成と飛び込みます。深浦九段が角で"と金"を取ると、黒田五段は△3五角と覗き、△7九角成と金を食いちぎります。黒田五段は更に△6九銀と打って金を剥がし、△7九金と打って銀も剥がして先手の穴熊を崩壊させます。黒田五段は"と金"を作って先手玉に迫り、そのまま即詰みに討ち取りました。
チーム豊島:4勝 - エントリーチーム:3勝

八局目:丸山忠久九段 vs 冨田誠也四段

エントリーチームはリーダーの歌のエールで冨田四段を送り出し、チーム豊島は余裕を感じさせる雰囲気で丸山九段を送り出し、一局目と同じ顔合わせとなりました。先手の冨田四段が中飛車に振り美濃囲いに構えると、いきなり5筋の歩を交換して飛車で取ります。丸山九段は歩で飛車を追い返すと、エルモ囲いに構えます。丸山九段が飛車を7筋に寄せて飛先の歩を交換すると、冨田四段は歩で受けずに銀を前進します。冨田四段が▲3四銀と後手の玉頭まで前進させると、丸山九段は△4四金と当てます。冨田四段は構わず▲5三歩と垂らし、銀を取らせる代わりに"と金"を作って後手陣の銀を剥がします。丸山九段は3筋の歩を突き捨てて△1三角と覗きますが、冨田四段はもう1枚の"と金"を後手陣に摺り寄せます。お互いの玉頭で激しい戦いとなりましたが、冨田四段が▲5五飛と飛び出すと、丸山九段は△3七銀と打ち込んで勝負しますが届きません。冨田四段は▲4三"と"から後手玉に迫り、そのまま即詰みに討ち取りました。
チーム豊島:4勝 - エントリーチーム:4勝

九局目:深浦康市九段 vs 折田翔吾四段

フルセットとなりましたが、チーム豊島は最後まで和やかな雰囲気を崩さず深浦九段を送り出し、エントリーチームは「ワクワクする」と言うリーダーを気合も込めて送り出します。改めて振り駒が行われ、後手となった折田四段が角道を止め、相雁木の将棋となります。折田四段が飛車先の歩を交換して角も交換すると、お互いに陣形の整備に戻り手待ちが続きます。千日手も考えられましたが、折田四段が7筋の歩を突き捨て6筋の歩もぶつけると、深浦九段は4筋の歩をぶつけて反発します。折田四段は構わず9筋6筋8筋の歩も突き捨て、飛車取りに△3九角と打ちます。深浦九段が飛車を浮いてかわすと、折田四段は飛車を走って△6六飛と2枚替えを狙います。深浦九段は構わず4筋の歩を取り込み、2筋からの継ぎ歩攻めで後手の陣形を崩し、▲1七角と打ってぶつけます。折田四段は角交換に応じますが、深浦九段は桂を跳ねて後手の金を吊り上げ飛金両取りに▲4六角と打ちます。深浦九段は飛角交換して▲4一飛と打ち込みますが、折田四段は自陣に銀や角を投じて粘ります。両者時間に追われる中、決着局に相応しい大熱戦となりましたが、最後は折田四段が2枚飛車で先手玉を追い詰め即詰みに討ち取りました。
チーム豊島:4勝 - エントリーチーム:5勝

第一試合の結果

エントリーチームは、黒田五段と冨田四段が2勝ずつを挙げてフルセットまでつなぎ、決着局ではリーダーの折田四段が200手越えの大熱戦を制して下剋上第二章を成し遂げました。このチームは関西勢が集まり世代も近く、絶対的なエースがいるわけではありませんが、全員が1つずつ星を積み上げて勝ち上がってきました。この先、どこまでこの勢いをつなげることができるのか、非常に楽しみになってきました。
チーム豊島は、予選では不振だったリーダーの豊島九段が3連勝してチームの勝利まであと一歩のところまで牽引しました。丸山九段がこの日は勝ち星に恵まれず、予選では大活躍だった深浦九段が最後に力尽き、惜しくもここで姿を消すことになってしまいました。リーダーに活躍して欲しいという深浦九段の熱い想いと、丸山九段の朗らかな明るさが印象的な好チームだったと思います。

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