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「観る将」が観た第32期倉敷藤花戦挑戦者決定戦

9月4日に大山名人杯第32期倉敷藤花戦の準決勝、西山朋佳女流三冠と伊藤沙恵女流四段の対局がありました。もう1人の決勝進出者の室谷由紀女流三段が産休で不戦敗となるため、事実上の挑戦者決定戦となっています。

西山女流三冠は今期、鎌田女流2級、千葉女流四段、和田(は)女流1級、山口(仁)女流2級を降して勝ち上がっています。伊藤女流四段は斎田女流五段、和田(あ)女流二段、鈴木女流三段、石本女流二段を破って勝ち上がっています。


西山女流三冠が四間飛車穴熊

振り駒で後手となった西山女流三冠は四間飛車に振り、角を交換してから向かい飛車に振り直して穴熊を目指します。伊藤女流四段は▲6六角と打ち直し、後手の囲いが完成する前に3筋から仕掛けて銀交換します。西山女流三冠は△3三歩と先手の角の利きを止め、伊藤女流四段が3筋に歩を垂らして"と金"を作り、飛車取りに▲3五銀と打つと、飛車取りに△6四角と打ち返します。

伊藤女流四段の馬と西山女流三冠の竜

伊藤女流四段が▲3七歩と後手の角の利きを止め、"と金"を桂と交換してから▲3三角成と馬を作ると、西山女流三冠は3筋に歩を合わせて先手の飛車のコビンを攻めます。伊藤女流四段が▲4六銀と引いて守ってから2筋に歩を垂らすと、西山女流三冠は飛車を3筋に寄せ、△3七歩成~△3七同角成と銀を食いちぎって竜を作ります。

西山女流三冠の猛攻

伊藤女流四段は馬と角で後手の竜を追い返し、西山女流三冠が先手の玉頭から攻め掛かると、▲2一飛成と竜を作って攻め合います。西山女流三冠が端攻めを見せると、伊藤女流四段は▲7九玉と早逃げし、2枚目の馬を作ります。西山女流三冠は9筋に"と金"を作り、△2八竜~△4八竜と再度侵入して挟撃態勢を作ります。

小駒の寄せ

伊藤女流四段は▲6八玉と顔面受けしてから▲5四馬と後手陣を睨み、西山女流三冠が△7八銀から先手玉に迫ると、もう1枚の馬を▲5六馬と引き付けて守りを固めます。西山女流三冠の猛攻を凌いだ伊藤女流四段は歩頭に▲8四桂と打って香を剥がし、歩で後手玉のコビンを攻めて寄せ切りました。

まとめ

本局は西山女流三冠が穴熊を目指しましたが、伊藤女流四段は後手の囲いが完成する前に機敏に仕掛け、先に馬を作って主導権を握りました。西山女流三冠は駒損覚悟で竜を作って攻め合いに賭けましたが、伊藤女流四段は強靭な受けで逆転を許さず、最後は小駒で後手陣を崩して寄せ切りました。
福間倉敷藤花への挑戦権を獲得した伊藤女流四段は「三番勝負ではいい将棋が指せるよう、しっかり準備して臨みたい」と話しており、好勝負になることを期待したいと思います。

大山名人杯倉敷藤花戦は、倉敷市・倉敷市文化振興財団・山陽新聞社が主催しています。棋譜等は下記サイトをご確認ください。


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