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「観る将」が観た第4回ABEMAトーナメント予選Aリーグ第三試合

4月24日にABEMAトーナメント予選Aリーグ第三試合が放映されました。チーム三浦「シン・ミレニアム」対チーム稲葉「加古川観光大使」の顔合わせとなり、勝った方が予選突破となります。

■一局目 三浦九段vs久保九段
絶対負けられない両チームは、一局目からエースの投入です。先手の久保九段が三間飛車に構えると、三浦九段は右四間飛車で対抗します。三浦九段が先に仕掛けましたが、久保九段は自玉の上部に2枚の銀を投入して要塞を築きます。三浦九段は入玉を目指して上部への脱出を図りますが、久保九段は自陣に香を打って相手玉の退路を断ち寄せ切りました。

■二局目 高野五段vs船江六段
先手の高野五段は矢倉、後手の船江六段が雁木という将棋になりました。高野五段が3筋から仕掛けますが、船江六段はすかさず8-6筋から反発し、△6四角と自陣角を据えます。船江六段の攻勢を高野五段が凌ぐ展開となりましたが、高野五段が相手の歩頭に▲5五桂と打つ妙手を魅せ、王手飛車を炸裂させて豪快に決めました。

■三局目 本田五段vs稲葉八段
1勝1敗のタイとなり、チーム稲葉は必勝を期してリーダー投入です。先手の稲葉八段の誘導で角換わりの将棋となり、稲葉八段が腰掛け銀に構えたのに対し、本田五段は4筋に飛車を振って揺さぶりを掛けます。稲葉八段が攻勢を掛けますが、本田五段も9筋を破って難解な終盤戦に突入します。最後は本田五段が攻防の△5五銀を打ってからペースを掴み、鮮やかな手順で即詰みに討ち取りました。

■四局目 三浦九段vs稲葉八段
チーム稲葉が意表を突くリーダー連投で、リーダー同士の対決が実現しました。先手の三浦九段がいきなり飛先の歩を交換し、相掛かり調の将棋となりました。稲葉八段がひねり飛車の趣向を見せると、お互いに銀冠に囲って難解な中盤戦となりました。三浦九段が玉頭から圧力を掛け徐々にリードを奪うと、稲葉八段は相手の歩頭に△3六銀と打つ勝負手を放ちましたが、三浦九段は落ち着いて即詰みに討ち取りました。

■五局目 本田五段vs久保九段
リーダーの連敗で1勝3敗と苦しくなってきたチーム三浦は、エース久保九段の投入です。先手の久保九段は四間飛車に振りました。更に久保九段は飛車を左右に動かし7筋を突破しましたが、本田五段は巧みな指し回しで決め手を与えません。苦しい状況から1筋を突き破った本田五段は、竜と2枚の馬で挟撃体制を作り鮮やかに寄せ切りました。本田五段が相手のダブルエースを連破し、チーム三浦の勢いが加速してきました。

■六局目 高野五段vs稲葉八段
後がなくなったチーム稲葉は、流れを変えるべくリーダーが早くも3回目の出陣です。後手の稲葉八段は横歩取りに誘導し、飛車を中段に構えます。高野五段は▲5五歩と飛車と角の利きを遮断し、ジリジリした中盤戦となりました。高野五段は飛車を5筋に回って仕掛けますが、稲葉八段は丁寧に受け止めてから反撃に転じ、最後は即詰みに討ち取りました。

■七局目 本田五段vs久保九段
本局は五局目と同じ顔合わせとなりました。先手の久保九段は、三間飛車から向かい飛車に振り直し穴熊に囲います。本田五段は前局と同じような駒組みを進めます。先に竜を作って軽快に攻めた本田五段でしたが、相手の玉頭から強襲を仕掛けた久保九段が、穴熊の遠さを活かして一手勝ちとなりました。

■八局目 三浦九段vs船江六段
稲葉八段と久保九段が3局ずつ登場したチーム稲葉は、残り2局を「これで負けたら男じゃない」と言い残して対局に向かう船江六段に託します。後手の船江六段は得意の横歩取りに誘導し、研究していたと思われる手順を披露して角桂交換の駒得に成功します。船江六段は着実にリードを拡げ、そのまま寄せ切る圧勝となりました。チームとしても4勝4敗のタイに戻し、流れは完全にチーム稲葉に傾いてきました。

■九局目 高野五段vs船江六段
ついに今回初めてのフルセットにもつれ込み、チーム三浦はリーダーの信頼厚い高野五段が満を持して登場です。互いに二局目と似た駒組みを進め、ジリジリした中盤戦となりました。船江六段から仕掛けていきましたが、高野五段がうまくかわして反撃しやや優勢の局面になったように見えました。しかし船江六段も粘って決着局に相応しい好勝負となりました。最後は高野五段が勝負を決めに連続王手で迫りましたが、船江六段が逃げ切り劇的な勝利を掴みました。

【チーム稲葉 5勝 vs チーム三浦 4勝】
チーム三浦が三局目と四局目で相手のリーダーを連破し流れを掴んだかに見えましたが、チーム稲葉は1勝4敗と絶体絶命の状況からダブルエースが連勝して流れを取り戻し、最後は船江六段が連勝して大逆転勝利を収めました。団体戦における流れの重要性を思い知らされる白熱の好勝負だったと思います。
チーム稲葉は、4敗しても作戦会議室の明るい雰囲気は変わらず、個人個人が伸び伸びと普段以上の力を発揮したように思います。加古川観光大使という共通項を持つ3人の団結力は、やはり優勝候補の一角であることを強く印象付けました。
チーム三浦は、残り4戦で1勝すれば予選通過となる圧倒的優位な状況になりましたが、逆にそれがプレッシャーとなってしまったのかもしれません。

予選Aリーグは、チーム藤井「最年少+1」が1位、チーム稲葉「加古川観光大使」が2位で予選通過を果たしました。この両チームは、本戦でも上位進出が期待できると思います。

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