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「観る将」が観た第3期清麗戦第四局

11月9日に第3期大成建設杯清麗戦五番勝負第四局が、関西将棋会館で行われました。ここまで2勝1敗とリードしている挑戦者の加藤桃子女流三段が清麗を奪取するのか、カド番の里見香奈清麗が巻き返して決着を最終局に持ち込むのかという一局になりました。

本局は両対局者とも着物ではなく、加藤女流三段が青灰色のワンピース、里見清麗が白いスーツ姿で入室します。先手の加藤女流三段が飛先の歩を突くと、里見清麗は本シリーズ4局連続で中飛車に振り、4筋で銀が向かい合う銀対向の形になりました。里見清麗が銀2枚を四段目に上げ、守備駒は金1枚のバランス重視の陣形を敷くと、加藤女流三段は左桂を跳ねて▲8九玉と深く囲います。

37手目、加藤女流三段が5筋から仕掛けます。続いて2筋の歩を突き捨て▲6五歩と戦場を拡大し、里見清麗が考慮中に昼休となりました。各4時間の持ち時間の内、残り時間は里見清麗が2時間32分、加藤女流三段が2時間30分と拮抗しています。

昼休明け、里見清麗が△6五同歩と応じると、加藤女流三段は銀取りに▲6五同桂と跳ねます。里見清麗が銀をかわすと、加藤女流三段は更に▲4五桂と跳ねて5三の地点に角と2枚の桂を利かせます。里見清麗は攻めを催促し、銀と桂2枚の2枚替えで収めます。局面がいったん落ち着き、加藤女流三段は歩で後手陣を崩しに行きますが、里見清麗は丁寧に応じて隙を作りません。

里見清麗は△8五銀と角取りの先手で前進し、△3三角と引いて先手陣を睨みます。加藤女流三段が▲6六角とぶつけると、里見清麗は角交換に応じて△3九角と飛金両取りに打ち込み馬を作ります。加藤女流三段も▲5五角と天王山に据え、飛車を2筋に回して飛車成を狙います。加藤女流三段は93手目を考慮中に持ち時間を使い切り1分将棋に突入しました。まだ20分以上残している里見清麗は、冷静に先手の狙い筋を消していきます。

攻めあぐねた加藤女流三段は、自陣に銀を投入して粘る方針に切り替えます。里見清麗は△7三桂と跳ねて先手の金を追い返し、△4一桂と打って先手の角切りからの強襲を未然に防ぎ、馬で天王山の角と交換してから△3七角と打ち直します。加藤女流三段も敵陣に角を打って馬を作りますが、里見清麗は馬を自陣に引き付けて徹底的に安全策を貫きます。

自陣を盤石とした里見清麗は、ついに△5四香から反撃に移り小駒で先手の金銀を剥がします。加藤女流三段は飛車も守りに投入して粘りますが、里見清麗は取った飛車を馬取りに△3九飛と打ち込みます。加藤女流三段は仕方なく後手の馬とぶつけて交換しますが、里見清麗は△7八角のタダ捨てから即詰みに討ち取り、182手の激闘を制しました。

本局は里見清麗がバランス型の陣形を敷き、序盤から中盤にかけて徹底的に相手の攻撃を封じ、終盤に一気の寄せでカド番を脱しました。先日西山王将からタイトルを奪取し五冠に返り咲いたばかりで、本シリーズも防衛して五冠を維持したいという強い執念を感じさせる一局だったと思います。加藤女流三段も駒損ながら中盤まで食らい付いていきましたが、先に持ち時間を使い切った辺りから形勢に差が付いてしまいました。

決着局となる第五局は11月17日に予定されており、里見清麗は「コンディションを整えて自分の力が出せるような状態で挑みたい」、加藤女流三段は「たくさん将棋が指せると前向きにとらえて頑張りたい」と話しています。両者は11月20日に倉敷藤花戦第二局を控えていることもあり、第五局がどのような展開になるのか楽しみにしたいと思います。

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