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第1回ABEMA師弟トーナメント予選Bリーグ1回戦・第1試合

1月15日、ABEMA師弟トーナメント予選Bリーグ1回戦第1試合が放映されました。チーム森下「鬼の花村」とチーム中田「博多侍」の顔合わせとなりました。チーム森下は森下卓九段の師匠である花村元司九段の愛称をチーム名に採用し、弟子の増田康宏六段と登場です。チーム中田は、師匠の中田功八段と弟子の佐藤天彦九段の出身地からチーム名を作っています。

■一局目 増田康宏六段 〇 vs ● 佐藤天彦九段
両チームとも弟子が頼りという雰囲気で、一局目は弟子同士の対局となりました。先手の佐藤九段が矢倉を選択し、増田六段は飛先の歩を伸ばすと右桂を跳ね、玉金銀を1度も動かさないまま△6五桂と仕掛けます。佐藤九段は銀を上がって受け止めると、角を飛び出して隙を窺います。増田六段は桂を成り捨て、△9九角成と香を取って馬を作ります。佐藤九段も▲5五角と角成を目指すと、増田六段は香で飛車を吊り上げ馬で金を取ります。佐藤九段も香を飛車取りに打ちますが、増田六段は馬で桂を食いちぎり飛車で香を取ります。激しい駒の取り合いとなり、佐藤九段が▲1一角成と馬を作ると、増田六段も△8七飛成と竜を作ります。増田六段は△2五香から飛車を取り、△2七桂と挟撃態勢を作ります。お互いに時計の叩き合いとなり、佐藤九段は▲5五桂から反撃しますが届かず、増田六段が寄せ切りました。

■二局目 森下卓九段 ● vs 〇 中田功八段
両チームとも師匠が初登場です。後手の中田八段が三間飛車に振り、対抗形の将棋となりました。森下九段はいきなり4筋の歩を伸ばし、角道を通して角交換します。森下九段はすぐに飛車取りに角を打ち、中田八段は角で飛車を支えます。森下九段が角を飛車と交換した後、両者とも自陣を整備します。中田八段が△2四角と覗いて先手玉を間接的に睨み、角取りを手抜いて△4七歩成と先手陣に攻め掛かります。森下九段は角を取りますが、中田八段は△4八角と打って飛車を取り返します。中田八段が詰めろ金取りに△4九飛と打つと、森下九段は馬取りに▲3七金と寄ります。中田八段が馬を引いて銀を取る間に、森下九段も"と金"を作って金を取ります。最後は中田八段が△4五桂と跳ね、△4九飛成と一間竜の形を作って寄せ切りました。40年間勝てなかったという森下九段に勝って、中田八段が「やー」と嬉しそうに声を挙げたのが印象的でした。

■三局目 増田康宏六段 〇 vs ● 佐藤天彦九段
両チームとも弟子が登場し、一局目と同じ顔合わせになりました。先手の佐藤九段は再び矢倉を選択して急戦に備えると、増田六段は雁木に構えます。両者じっくり囲ってから、増田六段が6筋から仕掛けて桂を跳ねます。佐藤九段が銀を引いて受けると、増田六段は7筋の歩も突き捨て△7五角と出ます。佐藤九段が飛先の歩を交換して七段目に引くと、増田六段は5筋の歩も突いて戦火を拡げます。佐藤九段は桂を取りますが、増田六段は代償に△3九角成と馬を作り△5六銀と出て先手陣の金を1枚剥がします。苦しくなってきた佐藤九段は▲6四角と出て攻め合いを目指しますが、増田六段は△5七歩成と要所に"と金"を作って先手陣に迫ります。佐藤九段は1筋から端攻めし桂を絡めて突破しますが、増田六段は玉を上がってかわすと△6六"と"から寄せに入ります。佐藤九段は一瞬詰めろを掛けますが、増田六段は落ち着いて王手角取りから角を外して即詰みに討ち取りました。佐藤九段が投了前に数秒俯いていた姿に、連敗の無念さが感じられました。

■四局目 森下卓九段 ● vs 〇 中田功八段
弟子の活躍で勝利まで1勝となったチーム森下は、師匠が「弟子の指示に従います」と宣言して出陣します。後手の中田八段が再び三間飛車に振ると、森下九段は天守閣美濃に構えます。じっくりした駒組みとなり、中田八段が高美濃囲いに構えると、森下九段は銀冠への組み替えを目指します。中田八段が飛車を5筋に振り直すと、森下九段は囲いを完成する前に6筋から仕掛けます。中田八段は5筋から反発し、桂交換のあと力強く△5五飛と出ます。森下九段の残り時間が10秒を切り、4分以上残していた中田八段は1分弱の熟考の上△5七飛成と銀を食いちぎって勝負に出ます。中田八段は猛攻を仕掛けますが寄せ切れず、森下九段が▲4四飛成と竜を作ると、成銀を金と交換して△4三金と打って竜を捕獲します。中田八段は取った飛車を△6九飛と角金両取りに打ち、取った角を△4四角と打って寄せ切りました。

■五局目 増田康宏六段 ● vs 〇 佐藤天彦九段
フルセットにもつれ込み、弟子同士が三度目の激突です。再度振り駒が行われて先後が入れ替わり、後手の佐藤九段が横歩取りに誘導します。増田六段が青野流に構えると、飛先の歩を交換して五段目に引いた佐藤九段は△2五歩と打って先手の飛車を押さえ込みます。増田六段は角を交換してから▲7七桂と跳ねて後手の飛車を追い、▲2五桂と歩を払うと佐藤九段は△4五桂と跳ね違えます。増田六段は2度に渡って▲5五角と打ちますが、佐藤九段は角を合わせて受けます。増田六段は▲6四角と出て、お互いに桂を取り合ってから▲5四歩と仕掛けます。佐藤九段が手抜いて先手の飛車に働きかけると、増田六段は▲2三飛成と金を食いちぎって勝負に出ます。増田六段は5七の地点に攻め駒を集中させますが、佐藤九段も王手で△5七飛と打ち込み△5四飛成と竜を作って先手の攻めを切らせに行きます。先手の角を追い返した佐藤九段は△2一飛と回って竜との連携で攻めますが、増田六段も自陣に金を打って竜を追い返します。佐藤九段は△1三桂と金を追って△2七飛成と竜を作りますが、増田六段も▲3二銀と飛車取りに打って後手陣に攻め掛かります。お互いに時計を叩き合う大熱戦となりましたが、最後は佐藤九段が鮮やかな即詰みに討ち取りました。

【チーム中田 3勝 vs チーム森下 2勝】
チーム中田は、恒例のチーム動画で師匠の中田八段が「俺は君と優勝したい」と熱く宣言した通り、師匠同士の対局に2連勝してチームを勝利に導きました。師匠は名人経験もある弟子を厚く信頼し、連敗していた佐藤九段を「頼むよ」と最終局に送り出しました。「師匠に助けられてこのチャンスをもらった」と出陣した佐藤九段は、激闘を制して師匠の期待に応えました。中田八段はフィッシャールールの経験が少ないと思われましたが、時間に余裕をもって決断良く指しており次戦以降も期待できそうです。佐藤九段が本来の実力を発揮すれば優勝候補と言えるかもしれません。
チーム森下は弟子の増田六段が、決着後に相手チームの師弟から称えられる強さで連勝し、あと一歩というところで惜しくも涙を飲みました。師匠の森下九段はフィッシャールールとは思えない優雅な手つきで指し続け、相手が駒台から駒を落とすと自分の時間が少ないのに気遣いを見せるなど、紳士的な対局姿勢が印象的でした。結果的に最後は時間に追われて勝ち星を得ることはできませんでしたが、次戦以降の巻き返しに期待したいと思います。

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