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「観る将」が観た第4期清麗戦第三局

8月3日に第4期大成建設杯清麗戦五番勝負第三局が、名古屋市の名古屋マリオットアソシアホテルで行われました。カド番に追い込まれた加藤桃子清麗が勝って反撃の狼煙を上げるのか、挑戦者の里見香奈女流四冠が勝って前期に奪われた清麗のタイトルを奪還するのか、注目の一局となりました。

挑戦者の中飛車に清麗が仕掛け

里見女流四冠が黄緑色の着物に濃紺の袴で入室し、加藤清麗は薄桃色の着物に灰色の袴で入室します。後手の里見女流四冠が中飛車に振り、加藤清麗は飛先の歩を交換します。里見女流四冠が美濃囲いに構えると、加藤清麗も左美濃に構えます。里見女流四冠が△7三桂と跳ねると、加藤清麗は33分の考慮で▲7五歩と仕掛けます。加藤清麗は7筋の歩を取り込んでから3筋の歩も突き捨て、▲2五飛と浮きます。

挑戦者の反撃

里見女流四冠は19分熟考し、3筋の歩を突き捨ててから△6五歩と反撃します。加藤清麗は▲3五飛と回って後手の角の動きを牽制しますが、里見女流四冠は構わず△5六歩とぶつけます。加藤清麗が次の53手目を考慮中に昼休となりました。各4時間の持ち時間の内、残り時間は加藤清麗が2時間25分、里見女流四冠が2時間50分となっています。

激しい攻め合い

加藤清麗は昼休を挟む47分の長考で同歩と応じ、里見女流四冠が6筋の歩を取り込んで金に当てると▲7六金とかわします。里見女流四冠は△5六飛と走りますが、加藤清麗は銀頭に▲7五歩と打って拠点を作ります。里見女流四冠が金取りに△8五銀と出ると、加藤清麗は飛車を角と刺し違えてから金銀交換に応じます。里見女流四冠が△8五同桂と金を取った手が角に当たっていますが、加藤清麗は構わず▲7四歩と伸ばして後手玉のコビンに嫌味を付けます。

2枚竜の攻撃

一気に終盤戦に突入し、里見女流四冠が取れる角を取らずに△3八飛と打ち込むと、加藤清麗は38分の熟考で▲6八歩と我慢します。里見女流四冠が桂を取って竜を作ると、加藤清麗は桂取りに▲7六銀と打って催促します。里見女流四冠が△7七桂成と角を取ると、加藤清麗は▲6四角と王手してから成桂を取ります。里見女流四冠は△5七飛成と2枚目の竜を作り、早くも先手玉に詰めろが掛かります。

着実な寄せ

加藤清麗は玉が上がって詰めろを逃れますが、里見女流四冠は着実に先手陣の守り駒を剥がしていきます。加藤清麗は▲5三角成と王手で馬を作り、自陣に引き付けて粘ります。持ち時間を使い切り1分将棋となった加藤清麗は▲5五角と打って後手玉に詰めろを掛けますが、里見女流四冠は連続王手を掛けて先手に持ち駒を使わせることで詰めろを逃れます。里見女流四冠は金と竜を犠牲に馬を取ると、王手で△9七角と打ってそのまま即詰みに討ち取りました。

まとめ

本局は加藤清麗が積極的に仕掛けましたが、里見女流四冠は機敏に反応し主導権を握る展開となりました。守勢に立たされた加藤清麗は、辛抱を重ねて逆襲の機会を探りましたが大きなチャンスはなかったように思います。持ち時間を2時間近く残した里見女流四冠の指し手に緩みはなく、中盤に得たリードを着実に拡げての完勝となりました。
里見女流四冠はこれで3勝0敗となり、清麗を奪還して女流五冠に返り咲きました。対局後に「まだまだ実力不足が目立ちますので、安定した将棋を指せるように頑張りたいです」と謙虚に語りましたが、8月18日から始まる棋士編入試験、8月27日に開幕する白玲戦七番勝負を前に、弾みのつく勝利となりました。対局過多気味の里見女流五冠にとっては、清麗戦を第三局で決着させたことは大きな意味のあることだったように思います。
加藤清麗は、前期久し振りに奪取したタイトルを1期で奪い返される結果となりましたが、「自分の力が足りなかったのでまた立て直したいと思います」と話しており、またタイトル戦の場に登場してくることを楽しみにしたいと思います。

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