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「観る将」が観た第30期倉敷藤花戦挑戦者決定戦

9月28日に第30期倉敷藤花戦の挑戦者決定戦が行われました。女流棋士に転向し始めて倉敷藤花戦に参戦した西山朋佳女流二冠と、タイトル獲得通算2期の香川愛生女流四段の顔合わせとなっています。西山女流二冠は船戸女流三段、高浜女流1級、千葉女流四段、貞升女流二段、伊藤女流名人を降して勝ち上がっています。香川女流四段は本田女流三段、矢内女流五段、加藤(桃)清麗(当時)、山根女流二段、中澤女流二段を破って勝ち上がっています。

三間飛車対居飛車

振り駒で先手となった西山女流二冠は迷わず三間飛車に振り、居飛車も振り飛車も指しこなすオールラウンダーの香川女流四段は居飛車を選択します。西山女流二冠が美濃囲いに構えると、香川女流四段は△5三角と移動し△7三桂と跳ねて飛車先突破を狙います。西山女流二冠が飛車を6筋に振り直して後手の桂跳ねを防ぐと、香川女流四段は20分の熟考で飛車を浮き7筋の桂頭を補強します。

西山女流二冠の強襲

西山女流二冠は3分の少考で3筋の歩を突き捨て、5筋の歩を交換します。香川女流四段は銀を上がって3筋の桂頭を守りますが、西山女流二冠は▲3三角成と桂を食いちぎって▲4五桂と王手角取りに打ちます。西山女流二冠は角桂交換するとすぐ飛香両取りに▲6六角と打ち、▲1一角成と香を取って馬を作ります。

香川女流四段の反撃

香川女流四段が金を上がって飛車の横利きを馬に当てると、西山女流二冠は香を打って馬に紐を付けます。香川女流四段が桂取りに△5六角と打って自陣にも利かせると、次の58手目を西山女流二冠が考慮中に昼休となりました。各2時間の持ち時間の内、残り時間は西山女流二冠が1時間5分、香川女流四段が57分となっています。

馬と角桂の交換

昼休が明け、西山女流二冠が桂を跳ねてかわすと、お互いに歩で桂を取りにいきます。西山女流二冠が先に▲7三歩成と銀に当てますが、香川女流四段は構わず△7七歩成と飛車に当てます。西山女流二冠が飛車を浮いてかわすと、香川女流四段は銀で"と金"を取ります。西山女流二冠は馬で後手の角に紐を付けていた桂を食いちぎり、飛車で角を取り返します。

馬と"と金"の寄せ

香川女流四段は飛車取りに△7八角と打ち込み、桂と"と金"で飛車を追いますが、西山女流二冠は飛車を角と刺し違えて飛車取りに▲7二角と打ち込みます。西山女流二冠は馬を作ってから"と金"を作り、ジリジリと後手玉に迫ります。香川女流四段は玉を早逃げして粘りますが、西山女流二冠は"と金"で後手陣の金を剥がします。

玉頭攻め

香川女流四段は玉で1筋に垂らされた香を取り、馬と金を田楽刺しにして△5九香成と金を取ります。西山女流二冠は構わず後手の玉頭から攻め掛かり、歩と香で後手の玉と銀を吊り上げると、▲2六桂と打って即詰みに討ち取りました。

まとめ

本局は西山女流二冠が積極的に仕掛け、何度も大駒を交換する激しい展開となりました。少しずつ駒得を拡大した西山女流二冠は、馬と"と金"の攻めで後手玉を追い詰め、最後は一気に寄せ切る快勝となりました。
この結果、西山女流二冠は里見倉敷藤花への挑戦権を獲得しました。対局後のインタビューでは「始まってしまえばあっという間だと思うので、しっかり準備して臨みたい」と話しています。
両者によるタイトル戦は、今年度だけでマイナビ女子オープン、女流王位戦、白玲戦、女流王将戦に続く5棋戦目となります。現在の女流棋界を代表する2人による倉敷藤花戦三番勝負は11月2日に開幕する予定となっておりますので、白熱した好勝負を期待したいと思います。

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