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「観る将」が観た第47期棋王戦五番勝負第三局

3月6日、棋王戦コナミグループ杯五番勝負第三局が、新潟市の新潟グランドホテルで行われました。10連覇に王手を掛けた渡辺明棋王が一気に決着を付けるのか、カド番に追い込まれた永瀬拓矢王座が1つ返して流れを変えるのか、注目の一局となりました。

永瀬王座が対局開始より20分以上早く濃紺のスーツに濃紫色のネクタイで入室し、10数分程すると渡辺棋王が灰色の着物に薄茶色の羽織で入室します。先手の永瀬王座が角換わりに誘導し、渡辺棋王も受けて立ちました。永瀬王座が9筋の位を取り相腰掛け銀の形になると、渡辺棋王は△6五銀とぶつけます。永瀬王座が▲5五銀とかわすと渡辺棋王は△4三角と打ち7六の地点を狙います。

ここまでは前例のある将棋でしたが、永瀬王座は▲6八玉と上がって先受けする工夫を見せます。渡辺棋王が構わず△7六銀とぶつけると、銀交換の後に永瀬王座は▲4五歩と伸ばします。渡辺棋王が△4五同歩と応じると、永瀬王座が長考に沈み次の51手目を考慮中に昼休となりました。AIの評価値は永瀬王座の57%とわずかに傾いています。持ち時間各4時間の内、残り時間は渡辺棋王が2時間51分、永瀬王座が2時間38分と拮抗しています。

永瀬王座が昼休を挟む46分の考慮で▲2四歩と突き捨てると、渡辺棋王も21分の熟考で△2四同歩と応じます。永瀬王座は角取りに▲7七銀と上がりますが、渡辺棋王は手抜いて△4六歩と伸ばします。永瀬王座も角を取らずに銀取りに▲4五桂と跳ね、渡辺棋王は47分の熟考で金取りに△4七歩成と踏み込みます。永瀬王座が▲3三桂成と銀を取ってから"と金"を取ると、渡辺棋王は△8六歩と伸ばします。永瀬王座はここで角を取り角桂交換の駒得となります。渡辺棋王が飛金両取りに△3八銀と打つと、永瀬王座は「両取り逃げるべからず」で▲4四銀と後手陣に迫ります。

渡辺棋王が飛車を取ると、永瀬王座は▲4三角と打って詰めろを掛けます。AIの評価値は永瀬王座の73%と大きく傾いてきました。渡辺棋王は△2三銀と打って粘りますが、永瀬王座は▲3二角成と金と刺し違えてから▲4三銀打と攻め続けます。永瀬王座が▲3三銀成と桂を取り▲5五桂と追撃すると、渡辺棋王は△7七歩成と王手で先手玉に迫ります。渡辺棋王の王手が途切れると、勝ちを確信した永瀬王座は上着を着て、慎重に15分確認してから▲4三桂成と必至を掛けます。渡辺王将は再度△7七歩成と王手して形を作り、投了を告げました。

本局は角換わりの前例のある形から永瀬王座が工夫を見せ、お互いに一直線に攻め合う激しい将棋となりました。飛金両取りを掛けられた永瀬王座が飛車を見捨てて後手玉に迫ったのが好判断だったようで、瞬く間に勝勢を築くとそのまま寄せ切ってしまいました。対局後に永瀬王座は「まずは第四局につなげることができて良かったと思いますので、精一杯準備して頑張りたい」と次局への抱負を語りました。渡辺棋王は「今日の将棋は早めにダメにしてしまったので、次は立て直していけるようにしたい」と語っており、次局以降の熱戦に期待したいと思います。


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