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「観る将」が観た第28期倉敷藤花戦第二局

11月21日に行われた倉敷藤花戦三番勝負第二局の感想です。
倉敷藤花戦は倉敷市出身の大山康晴十五世名人の偉業をたたえて創設された棋戦で、例年第二局と第三局は倉敷市で行われます。残念ながら前夜祭は中止になったものの、前日の記者会見では女性の伊東倉敷市長が挨拶に立ち、市を挙げての取り組みをアピールするとともに両対局者へ激励の言葉を贈りました。両対局者も、厳しい状況の中で開催に向けて尽力された関係者に感謝の言葉を返しています。

第一局を制した里見倉敷藤花にとっては、六連覇に王手を掛けて臨む一局となり「いま持っている力をすべて出しきれるように、盤上に集中して頑張りたい」と語りました。中井女流六段は「せっかく挑戦者になれたので、なんとか3局指したい」と本局への意気込みを語っています。

戦型は後手の里見倉敷藤花がまたしてもゴキゲン中飛車を採用し、先手の中井女流六段は超速▲3七銀戦法で対抗します。里見倉敷藤花は△5六歩から飛先の歩を交換しますが、中井女流六段は左右の銀を四段目に送り出し▲5五歩と中央を制圧します。これを見た里見倉敷藤花は△6三銀~△7二金と中央に手厚い木村美濃に構えます。ここで中井女流六段は▲4五桂と跳ね、角を5九~3七と右に転回します。里見倉敷藤花は桂交換の後、△6四桂~△8五桂と2枚の桂で玉頭から攻め掛かります。局面を苦しいと感じていた中井女流六段は、▲9五歩からの端攻めに命運を託しましたが、里見倉敷藤花の△9八歩~△9九角が強烈なカウンターとなりました。中井女流六段は必死の粘りを見せ右辺への逃走を試みましたが、里見倉敷藤花は△2六香から挟撃体制を作り、最後は即詰みに討ち取りました。

本局も第一局と同様、中井女流六段が積極的に仕掛けていきましたが、里見倉敷藤花が相手の攻撃をうまくかわして反撃し、鋭く寄せ切ってしまった印象です。中井女流六段が序盤の工夫で指しやすい局面を築いたようにも見えましたが、里見倉敷藤花の中終盤の強さが光りました。

この結果、里見倉敷藤花が防衛を果たし6連覇(通算11期)となりました。倉敷藤花戦は三番勝負という超短期決戦ですが、6連覇中の里見倉敷藤花の番勝負成績は12勝2敗(通算23勝5敗)と圧倒的な強さを誇っています。この連覇がどこまで続くのか、来期以降も注目していきたいと思います。

一方、久しぶりのタイトル挑戦で健在ぶりを示した中井女流六段でしたが、残念ながら最年長女流タイトル獲得は果たせませんでした。対局後「これからも年齢を気にせず頑張りたい」と語っており、今後も各棋戦での活躍を期待したいと思います。

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