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「観る将」が観た第46期棋王戦五番勝負第二局

2月20日、金沢市の北國新聞会館で行われた棋王戦第二局を観た感想です。
第一局を制した糸谷八段は、先手番の本局も勝って一気に王手を掛けたいところです。渡辺棋王は対局前「第一局を落としているので第二局は正念場」と語っていた通り、本局に勝って振り出しに戻したいところだと思います。

本局は先手の糸谷八段が、棋王挑戦権獲得の原動力となった角換わりに誘導し、渡辺棋王も受けて立ちます。糸谷八段が早めに1筋の歩を突き、渡辺棋王が受けないのを見て、すぐに▲1五歩と位を取ります。これを見た渡辺棋王は早繰り銀から7-8筋で仕掛け、銀交換に成功します。左銀を交換した糸谷八段が▲6八玉と右玉に構えたのを見て、渡辺棋王は△1四歩と歩を伸ばされた1筋から逆襲します。ここまで渡辺棋王の消費時間は14分と、用意していた作戦通りであることを感じさせます。

糸谷八段は、持ち駒の銀を投入して1筋の守りを固めますが、渡辺棋王も持ち駒の銀を打ち込み、一時的には駒損になりましたが1筋の突破に成功します。更に渡辺棋王は、敵陣に打ち込んだ角を金と交換し、取った金で相手の飛車を捕獲します。苦しくなってきた糸谷八段は、飛車を取らせる間に敵陣に角を打ち込み馬を作る勝負手を放ちます。

渡辺棋王は取った飛車を△1八飛とうち、攻防に利かせます。糸谷八段も▲7四桂と飛車取りに打ち反撃のチャンスを待ちますが、渡辺棋王は△7九竜から寄せに入ります。糸谷八段も▲1四角~▲3三歩と敵玉に迫りますが、渡辺棋王はこの瞬間△7八竜と切り即詰みに討ち取りました。

対局後、渡辺棋王は「1筋を取らせて逆襲するのはプラン通り」と語りましたが、この後糸谷八段が有利になる変化はほとんどなかったように見えました。解説陣も見たことのない形の逆襲と言っていましたが、糸谷八段が得意とする形に対する周到な準備が、本局の勝敗を分けたと言って良いのではないかと思います。中終盤には糸谷八段も勝負手を繰り出しましたが、渡辺棋王は最後まで隙を見せずに対応し快勝譜となりました。

この結果、両者1勝1敗のタイになりました。次局以降も、お互いに持ち味を出し切った熱戦を期待したいと思います、

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