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「観る将」が観た第6期清麗戦五番勝負第一局

7月10日に大成建設杯第6期清麗戦五番勝負第一局が、東京の「The Okura Tokyo」で行われました。これまでの5期で通算4期戴冠している福間香奈清麗に挑むのは、第3期に戴冠している加藤桃子女流四段です。両者は今年度、女流王位戦でも五番勝負を戦い、福間女流王位が3勝0敗で防衛しています。

福間清麗は前期五番勝負で、西山女流三冠の挑戦を3勝1敗で退け、防衛しています。加藤女流四段は今期予選では再挑戦トーナメントを勝ち上がり、本戦では山根女流三段と西山女流三冠を破って挑戦権を獲得しました。

前日に行われた開幕式では、福間清麗は「明日から清麗戦が開幕しますけれども、自分の力を出しきれるように頑張って参りたいと思います」、加藤女流四段は「五番勝負をより充実したものにするために自分の納得いく指し手を一手一手、積み重ねていきたいと思っております」と挨拶しています。


福間清麗は中飛車

福間清麗が桜色地に花柄の着物と鶯茶の袴で入室し、加藤女流四段は淡い桃色の着物と鶯色のグラデーションが入った袴で入室します。振り駒で先手となった福間清麗は5筋の位を取り、加藤女流四段が△6四銀と繰り出すと、▲6六銀と支えます。加藤女流四段が玉を4筋に上がると、福間清麗はようやく飛車を5筋に振り、美濃囲いに構えます。

加藤女流四段が桂跳ねの仕掛け

加藤女流四段は20分の熟考で△6五桂と跳ね、福間清麗が▲7七桂とぶつけると、更に20分考えて8筋の歩を突き捨ててから桂交換します。加藤女流四段が7筋の歩を突き捨ててから飛車を7筋に寄せると、福間清麗は39分の長考で▲7四桂と打って銀交換を防ぎます。加藤女流四段は31分の熟考で5筋の歩をぶつけ、福間清麗が8筋の歩を伸ばすと、5筋の歩を取り込みます。

福間清麗は"と金"を捨てての飛車捌き

福間清麗は更に8筋の歩を伸ばし、加藤女流四段が飛車を5筋に回して先受けすると、8筋に"と金"を作ります。加藤女流四段は9筋の歩を突いて先手が角を9筋から活用する手を防ぎ、福間清麗が▲7二"と"と捨て、後手の飛車を呼び戻してから飛車を8筋に回すと、飛成を防ぐ適当な手段はなく5筋の歩を伸ばします。次の55手目を福間清麗が考慮中に昼休となりました。各4時間の持ち時間の内、残り時間は福間清麗が2時間41分、加藤女流四段が2時間21分となっています。

福間清麗の竜

福間清麗が昼休を挟む36分の長考で▲8一飛成と竜を作って飛車に当てると、白地に花柄のワンピースと濃紺のジャケットに着替えた加藤女流四段は再び飛車を5筋に回します。福間清麗は▲5五歩と打って後手の飛車角の利きを止め、加藤女流四段が角頭を歩で叩いて8筋に引かせてから△6五桂と打つと、竜で9筋の香を拾います。

角銀交換

加藤女流四段は△7七歩成と"と金"を作って角に当て、福間清麗が▲6五銀と根元の桂を取ると、32分の熟考で取れる角を取らずに同銀と応じます。福間清麗は角で"と金"を取り除き、加藤女流四段が再び角頭を歩で叩いてから△7七銀と打ち込むと、36分の熟考で角銀交換に応じ、飛車取りに△5四香と打ちます。

福間清麗が竜切りの強襲

加藤女流四段が銀で香を食いちぎり、5筋の歩を成り捨ててから△5四飛と走って金に当てると、福間清麗は14分の考慮で▲4一竜と金を食いちぎります。加藤女流四段が残り1時間を切って玉で取ると、福間清麗は飛頭を歩で叩いて角で取らせてから、▲6二桂成と飛び込みます。激しい戦いに突入しましたが、形勢はほぼ互角のようです。

加藤女流四段の底歩

加藤女流四段は△5一歩と補強し、24分の考慮で残り1時間を切った福間清麗が飛角両取りに▲6五金と打つと、△3七角成と王手で捨てて△5七飛成と金を取り返します。福間清麗が竜香両取りに▲6六角と打つと、加藤女流四段は21分の考慮で同竜と刺し違え、△7六角と4筋の金を狙います。後手陣にはまだ耐久力があり、形勢は加藤女流四段にわずかに傾いてきたようです。

一瞬の隙

福間清麗は▲3三桂と焦点の歩を放ち、加藤女流四段が桂で取ると、▲2二銀と放り込んで圧力を掛けます。加藤女流四段は△4九角成と金を食いちぎり、福間清麗が▲2一飛と王手すると、1分将棋に突入して香で合い駒します。福間清麗が銀で馬を取った手が詰めろとなり、形勢は福間清麗に大きく振れて逆転模様です。

懸命の抵抗

加藤女流四段は△3五角と詰めろを逃れつつ成桂に当て、福間清麗が▲5三歩と垂らすと、やむなく金で取ります。福間清麗は▲1一飛成と香を補充し、加藤女流四段が△2六角と先手玉に迫ると、攻防に▲5五角と打ちます。加藤女流四段は△4四金打と角の利きを止め、福間清麗が▲2一竜と詰めろを掛けると、更に持ち駒の金を埋めて粘ります。

挟撃の寄せ

福間清麗は▲7三角成と逆サイドからの攻めも加えて挟撃態勢を作り、加藤女流四段が△1二銀と打って竜に当てると、▲6一金と攻め駒を足して詰めろを掛けます。加藤女流四段は△5二金と引きますが、後手玉には即詰みが生じており、福間清麗が成桂で金を取って王手すると投了を告げました。

まとめ

本局は加藤女流四段が積極的な動きを見せて難解な中盤戦となり、福間清麗は竜切りの強襲に勝負を賭けました。加藤女流四段の底歩の受けが意外にしぶとく、形勢は徐々に後手に傾きかけましたが、福間清麗は一瞬の隙を突いて形勢を入れ替え、反撃を許さず寄せ切りました。
次局に向けて、福間清麗は「体調に気をつけて臨みたいと思います」、加藤女流四段は「体調を整えながら次も頑張ります」と、両者とも体調管理を口にしています。暑さで体調を崩しやすい時期ではありますが、次局以降も熱い戦いを期待したいと思います。

大成建設杯清麗戦は大成建設が主催しています。棋譜は下記サイトをご確認ください。


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