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「観る将」が観た第30期倉敷藤花戦三番勝負第二局

11月26日、第30期大山名人杯倉敷藤花戦三番勝負第二局が岡山県の倉敷市芸文館で行われました。先勝した里見香奈倉敷藤花が勝って8連覇を達成するのか、西山朋佳女流二冠が勝って決着を最終局に持ち越すのか、注目される一局となりました。

両者の対戦成績は通算で里見倉敷藤花の25勝24敗、今年度だけで12勝10敗と伯仲しています。年間の同一カードとしては23局目になりますが、これは男性棋戦を含めても2000年度の谷川浩司十七世名人と羽生善治九段、2005年度の羽生善治九段と佐藤康光九段に並ぶタイ記録だそうです。

前日に行われた歓迎会では倉敷市長や主催者の挨拶の後、里見倉敷藤花は「今回、歓迎会や久々の公開対局を開催していただけること感謝しております。明日は自分の力を精一杯出し切れるようにがんばります」、西山女流二冠は「明日は女流棋士になって以来初めての公開対局で緊張する部分もありますが、自分らしいところを出して指せればと思います」と挨拶しています。

戦型は相振り飛車から対抗形へ

先手の里見倉敷藤花が初手に5筋の歩を突き、西山女流二冠は角道を開け、両者の対戦ではお馴染みの出だしとなります。里見倉敷藤花は中飛車に振りますが、西山女流二冠が向かい飛車に振ると、飛車を2筋に振り戻して対抗形の将棋となります。

角頭攻め

角道を開けないまま玉を7筋に囲った里見倉敷藤花が3筋の歩をぶつけて後手の角頭を狙うと、西山女流二冠は飛車を浮いて受けます。里見倉敷藤花が7筋に角を引いて間接的に後手の飛車を睨むと、西山女流二冠は銀で角頭を補強してから飛車を引いてかわします。里見女流二冠が3筋の歩を取り込み、銀で取らせてから飛車を3筋に寄せると、西山女流二冠は金を上がって銀に紐を付けます。

木村美濃

里見倉敷藤花は3筋の銀頭を歩で叩いて引かせると、右金を5筋に上がって陣形を引き締めます。西山女流二冠も美濃囲いを完成させ、先手から狙われている角を4筋に引いてから木村美濃に組み替えます。里見倉敷藤花は小刻みに角を動かし4筋に移動させると、右銀を5筋に引いて陣形を立て直します。次の48手目を西山女流二冠が考慮中に昼休となりました。各2時間の持ち時間の内、残り時間は里見倉敷藤花が57分、西山女流二冠が1時間4分となっています。

鍔迫り合い

午後からは公開対局となり、会場に里見倉敷藤花が白いブラウスに淡い水色のスーツ、西山女流二冠が薄茶色のブラウスに黒のパンツ姿で登場し対局が再開されます。西山女流二冠が5筋の歩をぶつけると、里見倉敷藤花は2枚の銀を並べて受けます。西山女流二冠が3筋の歩を合わせると、里見倉敷藤花は歩交換に応じてから、自玉を8筋に寄せて深い陣形に組み直します。

戦闘再開

西山女流二冠は右桂を跳ねて玉頭戦も視野に陣形を強化すると、角を2筋に覗いてから飛車を5筋に振り直して先手の銀頭を狙います。里見倉敷藤花が角を3筋に上がって銀頭を守ると、西山女流二冠は左桂を3筋に跳ねて攻撃に厚みを加えます。里見倉敷藤花が角をぶつけて交換すると、西山女流二冠は5筋の歩を伸ばして先手陣に圧力を掛けてから、飛車を一段目に引いて先手からの角の打ち込みに備えます。

挑戦者の馬

西山女流二冠が2筋の歩を突き捨て、空いたスペースに飛車取りで角を打ち込むと、里見倉敷藤花は飛車を引いてかわします。西山女流二冠が5筋に馬を作ると、里見倉敷藤花は再び3筋の銀頭を叩いて2筋に引かせます。西山女流二冠は7筋の歩を突き捨て、馬の利きを活かして銀頭を叩いて拠点を作り、馬を天王山に移動し王手を掛けます。

挑戦者が攻勢

里見倉敷藤花が角を打って馬にぶつけると、西山女流二冠は馬を引いてかわし、6筋の歩を伸ばして角を引かせます。西山女流二冠は先手の玉頭である9筋の歩を突き捨て、馬を6筋に寄って飛車の利きを銀に当てます。持ち時間を使い切って1分将棋となった里見倉敷藤花が飛車を5筋に回して銀を守ると、西山女流二冠は2枚替えを狙って馬を4筋に飛び込みます。

倉敷藤花の反撃

里見倉敷藤花が角を飛び出して馬に当てつつ2枚替えを防ぐと、西山女流二冠は馬と角の交換に応じてから桂を飛車に当てて跳ねます。里見倉敷藤花が飛車を浮いてかわすと、西山女流二冠は先手の飛車が7筋に回るのを嫌って6筋の歩をぶつけます。里見倉敷藤花が銀にぶつけて角を打って反撃すると、西山女流二冠は6筋の歩を成り捨ててから玉頭を歩で叩き、銀取りに桂を跳ねて攻め合います。西山女流二冠も持ち時間を使い切り、1分将棋になっています。

素早い寄せ

里見倉敷藤花は手抜いて銀をぶつけますが、同時に飛車の利きを通して後手の飛車とぶつけます。西山女流二冠は飛車を取りますが、里見倉敷藤花は構わず後手陣の銀を剥がします。西山女流二冠は香を走って先手の玉頭に迫りますが、里見倉敷藤花が飛車を取り返した手が詰めろになっています。西山女流二冠は香を成って王手を掛けますが、桂で取られると攻めが続かず次の手を指さずに投了を告げました。

まとめ

本局は里見倉敷藤花が角道を開けずに後手の角頭を攻める工夫を見せましたが、西山女流二冠が丁寧に受け止め息の長い将棋となりました。角交換後に西山女流二冠が先に馬を作った辺りでは優勢になったように見えましたが、里見倉敷藤花は馬に角をぶつけて交換して反撃に転じました。自陣に火が付いた西山女流二冠は攻め合いに命運を託しましたが、里見倉敷藤花の寄せが速く、両者とも持ち時間を使い切る熱戦に終止符が打たれました。
里見倉敷藤花は2連勝で防衛を果たし、8連覇を達成しました。倉敷藤花の獲得数は通算13期となり、清水市代女流七段の12期を上回っています。
西山女流二冠は初参加の倉敷藤花戦で挑戦者に名乗りを挙げましたが、奪取は来期以降に持ち越しとなりました。二人による今年度の女流棋界の頂上決戦はこれで一段落となりますが、来年度以降も熱い戦いを魅せてくれることを期待したいと思います。

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