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ABEMAトーナメント2023 予選Bリーグ第三試合

5月20日に、ABEMAトーナメント2023の予選Bリーグ第三試合が放映されました。第一試合では実力を発揮できなかったチーム山崎「フロンティア」と、第二試合でフルセットの激闘を演じたチーム斎藤「飛慎隊」の、予選突破を懸けた戦いとなっています。
※本稿は収録当時の段位で記述させていただきます。

一局目:佐々木大地七段 vs 黒田尭之五段

両チームともポイントゲッターとして期待されるメンバーが先陣を切ります。振り駒で後手となった黒田五段が三間飛車に振り、佐々木七段は穴熊を目指します。黒田五段が石田流に組み替えると、佐々木七段は4筋の歩をぶつけて交換します。黒田五段が美濃囲いに構えて△8四角と覗いて角成を見せますが、佐々木七段は▲4六銀と上がって飛車の捕獲を狙います。黒田五段が飛車を1筋にかわすと、佐々木七段は銀を引いてから▲6五銀と前進して後手陣に圧力を掛けます。黒田五段は△3九角成と馬を作り、銀取りに△7五馬と引きますが、佐々木七段は構わず▲1六歩とぶつけ、両チームの作戦会議室から「えぇー!」という声が上がります。黒田五段が飛車の退路を作ると、佐々木七段は飛車を交換します。黒田五段が△4九飛と打ち込むと、少し苦しくなってきた佐々木七段は銀を交換してから▲7三角成と銀を食いちぎり、▲9五歩と端攻めに勝負を賭けます。黒田五段は竜で桂香を拾って先手陣の金駒を剥がしますが、佐々木七段は9筋を突破し、両者時間に追われながらの激戦となります。黒田五段は玉を中段に逃がして粘りますが、佐々木七段は▲6三飛成と香を食いちぎって寄せ切りました。
チーム山崎:1勝 - チーム斎藤:0勝

二局目:佐々木大地七段 vs 斎藤慎太郎八段

チーム山崎は自ら志願して佐々木七段が連投します。先手の斎藤八段が角換わりに誘導し、佐々木七段は早繰り銀から早速△7五歩と仕掛けます。斎藤八段が2筋を継ぎ歩攻めして押さえ込むと、佐々木七段は飛先の歩を交換して銀も交換します。佐々木七段が3筋の歩をぶつけると、斎藤八段は3分以上の長考で▲5六角と据えます。佐々木七段は1分程考えて△5四角と打ち、斎藤八段が角取りに▲6五銀と打ちますが、構わず△3六歩と取り込み△3七銀と攻め込みます。斎藤八段は飛車を引いてかわし、角銀交換後に桂交換して飛車取りに▲7四桂と打ち、▲2三歩成~▲2三同角成と馬を作って挟撃態勢を作ります。時間に余裕のある佐々木七段は丁寧に自玉の安全を確保し、落ち着いて水を口にしてから△7七飛成と金を食いちぎって即詰みに討ち取りました。
チーム山崎:2勝 - チーム斎藤:0勝

三局目:佐々木大地七段 vs 冨田誠也四段

チーム山崎は少し遠慮しながら佐々木七段が3連投します。後手の冨田四段が四間飛車に振ると、佐々木七段は穴熊を目指し、相穴熊の将棋となります。佐々木七段が▲8六角と覗いて後手の駒組みを牽制すると、冨田四段も△7三角と転回して先手の飛車を1筋に追います。冨田四段が銀で角を追うと、同じ手順の繰り返しとなり、千日手が成立しました。

先後を入れ替え、両者5分近く残しての指し直し局は、冨田四段が中飛車に振り、佐々木七段は△6四銀と繰り出して対応します。冨田四段が高美濃に囲うと、佐々木七段は△7三角と転回して先手玉を間接的に睨みます。冨田四段が銀冠への組み換えを目指すと、佐々木七段は8筋の歩を突き捨ててから△5五銀とぶつけます。冨田四段が▲6五銀とかわすと、佐々木七段は4筋の歩をぶつけて桂交換します。佐々木七段は銀取りに△5三桂と打ち、冨田四段が▲7四銀とかわして角に当てると、△4五桂と跳ねて金に当てます。冨田四段は角銀交換しますが、佐々木七段も金桂交換して先手陣を崩します。冨田四段は銀取りに▲5六歩と打ちますが、佐々木七段は銀を取らせる代わりに△4七金~△3七銀と先手玉を追い詰め、角と桂の焦点に△7七歩と垂らします。冨田四段が角で取ると、佐々木七段は△6五桂~△5七桂成と飛び込みます。佐々木七段は更に△4八成桂から清算し、△6八飛と打ち込みます。冨田四段は▲4五桂打から後手陣の銀を剥がし、▲3一銀と打ち込んで後手玉に迫ります。取ると王手竜取りがあるので、佐々木七段は△8三玉とかわしますが、冨田四段は▲1五桂と歩頭に打って寄せ切りました。
チーム山崎:2勝 - チーム斎藤:1勝

四局目:中村太地七段 vs 斎藤慎太郎八段

1つ返したチーム斎藤は、リーダーが出陣します。先手の斎藤七段が相掛かりに誘導し、中村七段は先に飛先の歩を交換します。斎藤七段が飛先の歩を交換して7筋の歩も取ると、中村七段は銀を繰り出して飛車を追います。中村七段が7筋の歩を伸ばして先手の金を上ずらせ、3筋の歩を突き捨ててから△3六歩と打って桂を捕獲すると、斎藤八段は角を交換してから▲7七桂と跳ねて銀を追います。斎藤八段が更に▲8五桂と跳ねて桂交換し、▲7九飛と転回すると、中村七段は△6五角と据えます。斎藤八段が飛銀両取りに▲7三角と打ち、金と刺し違えて竜を作り、飛角両取りに▲7五金と打って角と交換します。両者時間に追われる激戦となりましたが、中村七段は竜を追って飛車と交換しますが、斎藤八段は▲7一飛と打ち直します。中村七段も竜と馬を作って攻め合いますが、斎藤八段は角を取らせる代わりに馬を取り、▲5一角から即詰みに討ち取りました。
チーム山崎:2勝 - チーム斎藤:2勝

五局目:山崎隆之八段 vs 黒田尭之五段

チーム山崎はリーダーが満を持して登場し、チーム斎藤は後手番で用意した作戦があるという黒田五段が出陣します。黒田五段は横歩取りに誘導しますが、山崎八段は横歩を取らずに相手の狙いを外します。黒田五段が角を交換してひねり飛車を狙うと、山崎八段は1筋に桂を跳ね▲2五桂から飛車を交換します。山崎八段が▲1一角成と香を取って馬を作ると、黒田五段は3筋の歩を突き捨て△3七歩~△2七桂と攻め込みます。山崎八段は▲3五香と打って金銀を田楽刺しにしますが、黒田五段は金桂交換してから、銀桂両取りに△4九飛と打ち込みます。山崎八段は▲7七玉と早逃げし、黒田五段が△8九飛成と桂を取って先手玉に迫ると、▲7九飛と打って辛抱します。黒田五段が竜を飛車と刺し違えて△4九飛と打ち直し、△2二銀と上がって先手の馬の利きを遮断すると、山崎八段は馬で銀を食いちぎって▲8六銀と打って粘ります。黒田五段は慌てずに駒得を拡大し、先手玉を受けなしに追い込みました。
チーム山崎:2勝 - チーム斎藤:3勝

六局目:山崎隆之八段 vs 冨田誠也四段

チーム山崎は、敗れたリーダーが自分に「頑張れよ」と鞭打って連投します。先手の冨田四段が四間飛車に振り美濃囲いに構えると、山崎八段は飛先の歩を突かずに△7四歩と突きます。冨田四段は三間飛車に振り直し、山崎八段も7筋に飛車を寄って対抗します。お互いに飛車を5筋~7筋へと転回して難しい序盤戦が続きましたが、山崎八段が角道を開けつつ△4五銀とぶつけ、1筋の歩を突き捨てて△1六歩と垂らすと、冨田四段は3筋の歩を突いて自玉の退路を拡げます。山崎八段が銀を交換して△5六銀と打って金に当てると、冨田四段は金銀交換に応じて飛車を捌きます。山崎八段は金で先手の飛車を押さえ込み、△9九角成と馬を作りますが、冨田四段も△2六角と覗いて角の活用を図ります。山崎八段は金を犠牲に馬と飛車を交換し、△3三桂と跳ねて玉頭攻めを狙いますが、冨田四段は▲2六歩~▲2七銀打と受けて決め手を与えません。山崎八段が角金両取りに△6九飛と打ち込むと、冨田四段は▲5八金と打って辛抱します。山崎八段が△6五桂と跳ねて援軍を送ると、冨田四段は力強い手つきで飛桂両取りに▲8七角と打ちます。山崎八段は飛車を角と刺し違えますが、冨田四段は▲6一飛と打って反撃に転じます。山崎八段は飛車に当てて△7二角と打ち、△3六桂から先手陣を崩しますが、冨田四段も一間竜の形を作って後手玉に迫ります。どちらが勝つのかわからないギリギリの終盤戦となりましたが、最後は冨田四段が即詰みに討ち取りました。
チーム山崎:2勝 - チーム斎藤:4勝

七局目:中村太地七段 vs 黒田尭之五段

チーム斎藤は、後手番の秘策を用意しているという黒田五段が出陣します。黒田五段が再び横歩取りに誘導すると、中村七段は堂々と横歩を取り、両者浮き飛車の将棋となります。黒田五段が△4二角と引いて先手の飛車を間接的に睨んで△5五歩とぶつけると、中村七段は▲9六飛と角の利きを避け、▲7五歩~▲6五歩と横利きを通します。黒田五段が9筋の歩をぶつけると、中村七段は▲8五桂と跳ねて後手の玉頭を狙います。黒田五段が△7四飛と玉頭を補強してから歩で桂を取ると、中村七段は飛車を横に動かして突破口を探ります。中村七段が銀交換から▲9一角成と香を取って馬を作ると、黒田五段は△8二金と打ち、飛車を取らせる代わりに馬を取ります。中村七段が角金両取りに▲5四桂と打つと、黒田五段は△7五角と王手で逃れ、もう1枚の角で△7九角と王手して先手玉に迫ります。中村七段が角銀交換して王手銀取りに▲7四飛と打つと、時間に追われた黒田五段は飛角交換してから△7四銀打と自陣に手を戻します。中村七段は▲9四角と王手し、もう1枚の角で▲3五角と王手し、▲6一角成と金を取って馬を作り寄せ切りました。
チーム山崎:3勝 - チーム斎藤:4勝

八局目:中村太地七段 vs 冨田誠也四段

チーム山崎は佐々木七段の一存で中村七段が連投し、チーム斎藤はリーダーが温かく冨田四段を送り出します。先手の冨田四段が中飛車に振り美濃囲いに構えると、中村七段は△7四銀と繰り出して先手の角頭を狙います。冨田四段が▲5九角~▲4八角と転回すると、中村七段は△6五歩と突いて金の前進を阻みます。冨田四段は▲3四銀と後手の玉頭に進めますが、中村七段は歩の技を駆使して角の捌きを図ります。冨田四段が迷わず角で銀を食いちぎり、更に飛車を角と刺し違え、▲2三銀成と飛び込みます。取ると王手飛車があるので、中村七段は玉を4筋に引いてかわしますが、冨田四段は飛車取りに▲8三角と打って馬を作り、左右から後手玉を包囲します。中村七段は△2六歩から反撃に転じ△8八飛と打ちますが、冨田四段は馬を飛車と交換し、▲6一飛と打って竜を作ります。中村七段が攻防に△4五角と据えると、作戦会議室では斎藤八段が「普通は▲3六歩だよね」と受けの手を示しますが、冨田四段は強く▲3二成銀と攻めの手を選びます。中村七段が△2七歩と玉頭を叩いて1筋に追うと、冨田四段は▲4六歩と突いて角を追い、▲4五桂と打って後手玉を追い、即詰みに討ち取りました。

第三試合の結果

チーム斎藤は連敗スタートとなったものの、冨田四段が1つ返すと決着局を含めて3戦3勝の大活躍で、チームの予選突破に大きく貢献しました。黒田五段も後手番用に準備した作戦を披露し、チームの勝利を支えています。リーダーの斎藤八段は、まだまだ実力を十分発揮できていませんが、3勝したメンバーにはオーダースーツをプレゼントすると公約して士気を高めるとともに、メンバーが伸び伸びと指せるよう雰囲気づくりを意識しているようで、本戦でも勝ち上がれそうなチーム力だと思います。
チーム山崎は、佐々木七段が連投連勝と絶好のスタートを切りました。3連投3連勝はなりませんでしたが、チームとしての意地を見せたと思います。リーダーの山崎八段が2試合を通して4連敗、中村七段もまさかの負け越しに終わり、チームとして波に乗ることができませんでした。残念ながら今回は予選敗退となりましたが、次回はまた出場してリベンジを果たすよう期待したいと思います。

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