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「観る将」が観た第12期女流王座戦第二局

郡山での対局予定が延期となったため、第一局から1か月以上の間隔を空けて、12月6日に第12期リコー杯女流王座戦五番勝負第二局が岐阜市の「十八楼」で行われました。第一局に勝った里見香奈女流王座が一気に防衛に王手を掛けるのか、加藤桃子女流三段が勝ってタイスコアに戻すのか、注目される一局となっています。

前日には前夜祭が開催され、里見女流王座は「自分の力を出しきれるように精一杯頑張ります」、加藤女流三段は「いつものように伸び伸び指していきたいと思います」と挨拶しています。

お互いに趣向の駒組み

加藤女流三段がグレーのワンピースにベージュ色のジャケットで入室し、里見女流王座は黒いニットに白のスーツ姿で入室します。先手の加藤女流三段が初手▲4八銀と趣向を見せますが、里見女流王座は構わず中飛車に振ります。加藤女流三段が飛先の歩を伸ばしますが、里見女流王座は手抜いて玉の囲いを優先します。

挑戦者が歩得

加藤女流三段が角道を開けないまま飛先の歩を交換すると、里見女流王座は3筋の位を取ります。加藤女流三段が3筋の歩をぶつけて交換すると、里見女流王座も5筋の歩を取り込み△5六歩と打ち直して銀を引かせます。里見女流王座は美濃囲いを完成させ、加藤女流三段が金と銀を繰り出して5筋の歩を取る間に、平然と1筋の歩を伸ばして位を取ります。

女流王座の浮き飛車

里見女流王座が飛車を浮くと、加藤女流三段は銀を前進して飛車に当てます。里見女流王座が飛車を1筋に寄せると、加藤女流三段は9筋に角を覗いて角成を狙います。里見女流王座が21分の熟考で銀取りに△3三桂と跳ねたところで昼休となりました。各3時間の持ち時間の内、残り時間は里見女流王座が1時間51分、加藤女流三段が2時間29分となっています。

女流王座が連続の熟考

昼休が明けてすぐ加藤女流三段が銀を3筋に引くと、里見女流王座は更に19分考え6筋の歩を突いて角成を防ぎます。加藤女流三段が▲3五銀と前進して後手の飛車や桂に圧力を掛けると、里見女流王座は26分の熟考で飛車を5筋に戻します。加藤女流三段は▲3四歩と桂取りに打ちますが、里見女流王座は構わず先手の角頭を狙って9筋の歩をぶつけます。

挑戦者が桂得

加藤女流三段は歩で桂を取ってから角を8筋にかわし、里見女流王座が9筋の歩を取り込むと、▲9五歩と打って香の利きを遮断します。早くも残り1時間を切った里見女流王座が△4二角と引くと、加藤女流三段は7筋の歩を突いて角の引き場所を作ります。

角交換の駆け引き

里見女流王座は6筋の歩を突いて角をぶつけますが、加藤女流三段は7筋に空けたスペースに角を引いてかわしつつ1筋の香を狙います。里見女流王座が千日手も視野に△3三角と戻してぶつけると、加藤女流三段は香で9筋の歩を取って端からの反撃を狙います。

挑戦者の長考

里見女流王座が9筋に歩を垂らすと、2時間以上残している加藤女流三段は32分の長考で▲9四桂と王手します。里見女流王座が9筋に玉を寄ってかわすと、加藤女流三段は飛車を5筋に回してぶつけます。里見女流王座は角を交換してから歩で飛交換を拒否すると、加藤女流三段は41分の長考で▲7九金と寄って玉の退路を拡げます。

金銀両取り

里見女流王座が6筋の歩を突き捨ててから9筋に"と金"を作ると、加藤女流三段は▲8八金と上がって守ります。里見女流王座が△9七歩と垂らして2枚目の"と金"作りを目指すと、加藤女流三段は金で取ります。里見女流王座が金銀両取りに△5三角と打つと、加藤女流三段は23分の熟考で▲7五角と打って受けます。

残り時間の切迫

両者とも残り時間が10分強となり、里見女流王座が角で銀を取って駒損を回復すると、加藤女流三段は飛車を3筋に回して角に当てます。里見女流王座も飛車を3筋に回して角を支えると、加藤女流三段は▲5四歩と垂らします。里見女流王座は7筋の歩を突いて角を追い、突き捨ててから△7一金と寄って守ります。

大駒の押さえ込み

加藤女流三段が▲8五桂と跳ねて後手玉に攻め掛かると、里見女流王座は△8四歩と突いて催促します。加藤女流三段は角取りに金を上がり、歩で飛車を1筋に追いやり、更に4筋の歩を突いて角も押さえ込みます。

挑戦者の踏み込み

加藤女流三段が▲5三角成と馬を作って金に当てると、里見女流王座は△6二銀と持ち駒を投じて粘ります。加藤女流三段は1分将棋に突入し、▲6二同角と銀を食いちぎり、▲7一銀と詰めろ金取りに打ち込みます。里見女流王座は歩で桂を取って詰めろを逃れますが、加藤女流王座は王手を続けて後手玉を吊り上げてから銀で金を取って詰めろを掛けます。

女流王座の抵抗

里見女流王座は角を引いて詰めろを逃れますが、加藤女流三段は5筋の歩を成って角の利きを止めます。里見女流王座は角で"と金"を食いちぎり、王手飛車で△5六角と打って飛車を取りますが、後手玉には即詰みが生じており、加藤女流三段が▲5一角と王手すると投了を告げました。

まとめ

本局は序盤からお互いに工夫を見せ、加藤女流三段が歩得から桂得となりわずかにリードを奪いました。里見女流王座は端攻めから"と金"を作って攻め込みましたが、加藤女流三段は端攻めを逆用して後手玉を追い詰めました。里見女流王座は歩で先手陣を切り崩して駒損を回復しましたが、後手の大駒を押さえ込んだ加藤女流三段が馬を切って後手玉に迫り、最後は即詰みに討ち取りました。
これで両者1勝1敗のタイスコアとなり、勝負の行方はまったくわからなくなりました。第三局以降も、お互いに力を出し尽くした好局を期待したいと思います。

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