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「観る将」が観た第6期清麗戦挑戦者決定戦

5月31日に第6期大成建設杯清麗戦の挑戦者決定戦が行われました。前期に続き2期連続の挑戦を狙う西山朋佳女流三冠と、第3期以来2度目の清麗戴冠を目指す加藤桃子女流四段という、前期と同じ顔合わせとなっています。西山女流三冠は予選トーナメントで優勝し、本戦で鈴木女流三段を降しました。加藤女流四段は再挑戦トーナメントを勝ち上がり、本戦で山根女流三段を破っています。

加藤女流四段が積極的な仕掛け

振り駒で後手となった西山女流三冠は三間飛車に振り、加藤女流四段が4筋の歩を突くと、角を交換してから向かい飛車に振り直します。西山女流三冠が美濃囲いから木村美濃への組み換えを目指すと、左美濃に組んだ加藤女流四段は7筋の歩を伸ばします。加藤女流四段は6筋の歩を交換して▲7六銀引と金銀3枚を縦に並べ、西山女流三冠が5筋の歩を伸ばすと、飛車取りに▲3一角と打ち込みます。

西山女流三冠が苦心の受け

西山女流三冠は飛車を3筋にかわし、加藤女流四段が角で銀を食いちぎってから2筋の歩を交換して飛車を走ると、△3三角と打って追い返します。西山女流三冠が更にもう1枚の角を△2四角打と重ねると、加藤女流四段は2筋の歩を成り捨ててから3筋の歩をぶつけます。次の58手目を西山女流三冠が考慮中に昼休となりました。形勢は先手がわずかに指し易いようで、各3時間の持ち時間の内、残り時間は西山女流三冠が1時間48分、加藤女流四段が2時間13分となっています。

身動きできない角

昼休が明け、西山女流三冠は5筋の歩をぶつけますが、加藤女流四段は3筋の歩を取り込んで角を引かせ、角取りに▲3五銀と打ちます。角を動かすと飛車を素抜かれるので、西山女流三冠は△5二金と引いて陣形を整えますが、加藤女流四段はじっと5筋でぶつかった歩を取ります。身動きが取れない西山女流三冠は△2六歩と垂らして飛車を吊り上げてから4筋の歩をぶつけ、加藤女流四段が6筋の歩をぶつけると、△6二角と覗きます。

加藤女流四段が駒得

加藤女流四段が飛車を角と刺し違えてから銀で飛車を取ると、西山女流三冠は金銀桂取りに△2八飛と打ちます。加藤女流四段は6筋の歩を取り込んで後手の陣形を乱してから、銀に紐を付けつつ金取りに▲2二飛と打ち込み、西山女流三冠が5筋に底歩を打って金を守ると、▲6七金とかわします。駒割りは先手の銀得となり、形勢は堅陣を築いた先手に傾いてきたようです。

西山女流三冠の勝負手

西山女流三冠は△2九飛成と桂を取って竜を作り、加藤女流四段が6筋の銀頭を歩で叩くと、飛車取りに△4四角と飛び出して先手陣を睨みます。加藤女流四段が▲3三歩成と"と金"を作って飛車を守ると、西山女流三冠は△5三銀とかわしてから△7七角成と銀を食いちぎり、金取りに△6九銀と放つ勝負手で食い下がります。

粘りを許さない寄せ

加藤女流四段が▲4三"と"と捨てて守り駒の金を遠ざけてから7筋の歩をぶつけると、西山女流三冠は銀取りに△8四桂と打ち、更に△6六歩と銀頭を叩いて攻め合います。加藤女流四段は詰めろ金取りに▲6一角と打ち、西山女流三冠が△4二金と引いて逃れると、▲7二角成と金を食いちぎってから6筋の歩を伸ばして詰めろを続けます。後手陣は受けが難しく、先手は堅陣が健在なので、西山女流三冠は潔く投了を告げました。

まとめ

本局は加藤女流四段が角を切って飛車先突破を図りましたが、西山女流三冠は2枚の角を守りに投じて阻止しました。西山女流三冠は角を挟んで飛車が向かい合う悪形を解消すべく、もう1枚の角をぶつけて駒を取り合いましたが、駒得となった加藤女流四段は小駒で後手陣を崩し、自陣の堅さを活かして攻め合い勝ちとなりました。
福間清麗への挑戦権を獲得した加藤女流四段は、対局後「挑戦するからには取りにいきたいですし、自信を持って指したいと思います」と力強く話しました。感想戦後の囲み取材では、女流王位戦で福間女流王位にストレートで敗退したことを聞かれ「負けてしまったことも前向きに捉えて進んでいけそうに思います」と答えており、五番勝負が熱戦になることを期待したいと思います。

大成建設杯清麗戦は大成建設が主催しています。棋譜は下記サイトをご確認ください。


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