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「観る将」が観た第28期倉敷藤花戦第一局

11月5日に行われた倉敷藤花戦三番勝負第一局の感想です。六連覇を目指す里見倉敷藤花に、女流タイトル挑戦の史上最年長記録となった中井女流六段が挑むシリーズとなりました。

振り駒で先手となった里見倉敷藤花は、初手▲5六歩から迷わず中飛車で美濃囲いに構えます。中井女流六段は居飛車の高美濃囲いで対抗し、飛車を7筋に寄せてから△7五歩と開戦しました。里見倉敷藤花も研究の範囲か、ほとんど時間を使わずに飛車をぶつけて来ましたが、中井女流六段は強く飛車交換に応じます。中井女流六段は更に3筋から攻めますが、里見倉敷藤花は5六にいた銀を手順に8七に引き寄せ守りを固めます。

中盤戦となりお互いに敵陣に飛車を打ち込みましたが、里見倉敷藤花が自ら囲いを崩す▲5八金で相手の飛車を封じ込めると、中井女流六段は取られそうだった桂を6五まで跳ね△7七歩と援軍を送ります。桂交換の後△3六桂と王手を掛け、金を入手すれば一手詰めの形になりましたが、ここで里見倉敷藤花の▲8八金が飛車の生け捕りを狙った好手だったようで、形勢は一気に傾きました。中井女流六段は飛車を取られる間に1筋から反撃し激しい攻防を繰り広げましたが、正確に対処した里見倉敷藤花が最後は即詰みに討ち取りました。

本局は、後手の中井女流六段が積極的に攻め込む姿勢を見せましたが、里見倉敷藤花の相手の飛車を捕獲する構想が勝った印象です。終盤、あと一歩のところまで追い込んだ中井女流六段の攻めも迫力がありましたが、落ち着いて凌ぎきった里見倉敷藤花の受けも見事なものでした。

対局後「受けに回る展開だったので神経を使う将棋でした。次は先後も決まっているのでしっかり準備したい」と語った里見倉敷藤花は、防衛に王手を掛けました。「久しぶりなので、終盤までに時間を使いすぎました。次はいつもと変わらず挑みたい」と語った中井女流六段にも、次局は先手番での巻き返しに期待したいと思います。


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