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「観る将」が観た第1期白玲戦七番勝負第三局

10月2日、白玲戦七番勝負第三局が鹿児島県指宿市の指宿白水館で行われました。ここまで2勝している西山朋佳女流三冠が一気に初代白玲に王手を掛けるのか、渡部愛女流三段が1つ返して流れを変えるのか注目が集まりました。前日の開幕式での決意表明では、西山女流三冠が「感謝の気持ちで一手一手を指し進めていきたい」、渡部女流三段は「自分らしい将棋が指せるように頑張りたい」と話しています。

先に渡部女流三段が紫地に白や薄紫の花をあしらった華やかな着物で入室し、3分程すると西山女流三冠が薄紫の落ち着いた雰囲気の着物で入室します。立会人の谷川九段が対局開始を告げると、先手の西山女流三冠は初手▲5六歩と第一局と同じ中飛車を採用します。西山女流三冠が美濃囲いに構えると、渡部女流三段は右銀も玉側に寄せて穴熊に囲います。

渡部女流三段が飛車を四段目に浮くと、西山女流三冠も飛車を六段目に浮きます。渡部女流三段が△2四角~△4五歩と仕掛け、西山女流三冠は強く▲4五同桂と取ります。渡部女流三段が△4五同銀と桂を取り、銀桂交換の駒損ながら△3九角成と馬を作ったところで昼休となりました。残り時間は西山女流三冠が3時間2分、渡部女流三段が2時間27分と30分程差が付きました。形勢はほぼ互角のようです。

昼休明け、西山女流三冠が▲5四歩と突いて角道を開けると、渡部女流三段は取れる桂を取らずに△2四馬と引いて自陣を固めます。西山女流三冠は7筋の飛先の歩を伸ばして"と金"を作りますが、渡部女流三段は構わずを歩を補充し先手の銀頭に△4六歩と打ちます。西山女流三冠が▲5六銀と逃げると、渡部女流三段は飛銀両取りに△6四桂と打ち、お互いに飛車を取り合う激しい中盤戦となりました。駒割りは銀桂交換の差が残っており、形勢は少し先手に傾いてきたようです。

お互いに敵陣に飛車を打ち合い、渡部女流三段が馬で先手の金と角を取る間に、西山女流三冠は竜で後手陣の金2枚を取る一直線の攻め合いとなりました。先手の美濃の堅陣はまだしっかり残っていますが、後手の穴熊は風前の灯火となり、形勢ははっきり西山女流三冠に傾きました。渡部女流三段は駒を補充して自陣に投入し懸命に粘りましたが、西山女流三冠の攻撃が切れることはなさそうです。最後に渡部女流三段は美濃囲いを崩して形を作りましたが、西山女流三冠が即詰みに討ち取りました。

本局は渡部女流三段が後手番ながら積極的に仕掛け、西山女流三冠も強く応じて激しい戦いとなりました。渡部女流三段としては、駒損して作った馬が思ったほど働かなかったのが誤算だったのかもしれません。少し苦しくなった渡部女流三段が勝負を掛けて踏み込みましたが、西山女流三冠は恐れず攻め合い自玉の不詰めを読み切って寄せ切りました。

この結果、西山女流三冠は初代白玲の座まであと1勝となりました。早くもカド番に追い込まれた渡部女流三段が、次局は先手番で一矢報いることができるのか楽しみにしたいと思います。

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